09年の石炭生産量は21億2300万トン、中国が群を抜いた第1位の石炭生産国である。石炭生産基地は主に内陸部(山西省、陝西省、内モンゴル自治区西部など)に分布し、その生産量が圧倒的に多い。山西省の08年の生産量は6億5600万トンで、中国の生産量のほぼ24%を担う。内モンゴル自治区は4億7000万トン。石炭産業体制・組織は、主に神華集団、山西焦炭集団、大同炭鉱集団、中煤能源集団公司などの国有主要・大型石炭生産企業と地方政府系の炭鉱企業および農村部の郷鎮(田舎町)炭鉱企業(中古型炭鉱)から成り立っている。炭鉱の経営・生産形態は、前述の組織のように、中央政府に組織する国有主要炭鉱、地方政府系炭鉱、農村部の郷鎮炭鉱の3者に区分することができる。
近年、田舎町炭鉱ではかなり生産量が拡大してきたが、この背景には国内石炭需給の逼迫に加え、不動産業界のように成金、超過利潤の儲かる分野ということで、炭鉱ビジネスに従事する人が多くなったという事情がある。山西省など石炭産地には、数多くの「煤老板」(炭鉱のボス)が現れている。中国では、長い間、炭鉱とくに田舎町の中小炭鉱が、安全を軽視、利益ばかりを追求する傾向があり、事故が多発している。中国政府は90年代半ばから郷鎮炭鉱の縮小を決定し、2000年の石炭生産量は約10億トンまで落ち込み、郷鎮炭鉱の生産量は90年以降で最も低下し、2億6400万トンとなった。だが経済の高度成長を伴う旺盛な国内の石炭需要・消費を満たすため、02年からは再び田舎町の中小郷鎮炭鉱数が増すとともに生産量も増加し、09年の石炭生産量は21億2300万トンとなっている。


china_m.jpg
中国の石炭資源(生産量・埋蔵量)の優位性が高く、豊かな石炭資源に恵まれており、総体的には石炭生産能力は、国内需要をまかなうのに十分なものであるといえる。しかし、その生産地域(内陸部)と消費地域(沿海部)との間に数千キロの距離があり、両者を結ぶ輸送インフラ(鉄道)の整備が遅れている。また石油とは異なる固体燃料の輸送の宿命というべきか、鉄道輸送が中国における石炭国内供給のボトルネックになっているのだ。そのため、内陸北部に位置する主要石炭生産地域では生産能力が同地域の石炭需要を十分に満たし、かつ消費地域に対する供給能力があるにもかかわらず、華南に位置する消費地域の石炭需給が逼迫するという状況が生まれている。この状況に対処するため、華南地域などの電力会社を始めとする石炭ユーザーは、2000年以来、近距離ソースでかつFOB(本船積み渡し)価格が安価なベトナム、インドネシアなどから輸入するようになった。09年までの10年間で平均2200万トンが輸入された。
電力の需給
中国では、電力産業に競争メカニズムを導入、市場競争を促進するため、「電力に関する改革方案」(2002年)に基づき、国家電力公司を発電5社、送電2社、補助企業4社に分割している。発電5社は、華能・大唐・華電・国電・電力投資集団公司である。送電事業は、華南・西南5省(広東・広西・貴州・雲南・海南)を管轄する南方電網公司と、その他の地域を管轄する国家電網公司に二分され、国家電網公司の下には東北・西北・華東・華中の5電網公司が設置されている。電力産業発展に関する基本方針は
・エネルギー効率の向上、石炭消費量原単位335g/kWh、所内率4.5%、送電ロス7%に低減する。
・生態環境の保護 1kWh当たりの二酸化硫黄排出量を2.7kgに、煤塵排出量を1.2gに抑える。
・電力網建設の強化(西電東送ネットワークの構築を加速させる)
・秩序ある水力発電の開発と小型火力発電所の閉鎖
・原子力発電の積極的開発 1000万kW
・再生可能エネルギー発電の奨励 1次エネルギー供給量に占める再生エネルギーの割合を10%)
・天然ガス発電の開発 3600万kW
こうした電力政策の実施・促進に当たっては、いくつかの課題が挙げられ、第1に小型発電所の閉鎖に伴う社会的雇用問題及び地域社会発展の安定化問題。第2は現行の電気料金制度では省エネ・インセンティブが働きにくいし、電力の安定供給にも問題がある。第3は、風力資源のある地域は送電網の整備が遅れている。最後にはガス供給逼迫・価格の問題などがガス発電開発を阻害している。中国で03年前後に頻発し始めた電力供給逼迫、停電は、世界に注目された。広東省、浙江省などの日系企業は生産ラインが一時ストップし、現地事業に支障をきたしていた。電力供給不足の祭壇の要因として、急速な経済の高度成長による莫大な電力需要に電力供給が追いつけなかったことが挙げられている。
中国では、石炭火力発電所が発電設備送容量の8割を占めている。また、全国の出炭量の2/3は発電用として消費されている。6000kW以上の発電所の年平均稼働時間は4677時間であり(稼働率53.4%)である。09年1~3月全国電力使用量は7809億kWh、前年同期比4%の減少となった。産業別では第1次産業の1~3月の電力使用量は174億kWh、第2次産業は5590億kWh、第3次産業は921億kWh、民生用は1124億kWh。
中国の発電量の電源構成から見ると、火力発電量が圧倒的に大きく、全体の7割を占めている。また火力発電において石炭火力は90%のシェアを占めている。すでに述べたように中国における環境汚染の深刻化は、主に石炭を始めとする火力発電のCO2、SO2などの排出により、もたらされた。国際的に比較すると、kWhあたりCO2排出量が多い国は、石炭火力比率の高いインドと中国で、日本の2倍にもなっている。中国政府によると08年の発電によるSO2排出量は1060万トンの6割近く、全体のアンモニア窒素排出量(132万トン)の6割以上、全体の煤塵排出量(604万トン)の4割以上を占めている。
石炭価格と電力価格
07年に、50年以上続き、計画経済の最後の名残ともいわれるその「石炭訂貨会」が廃止され、政府の石炭価格への関与が無くなった。石炭価格が需給に応じて弾力的に動くようになったことで石炭産業の発展が促進されるだろう。一方、政府は、電力産業の電力価格が、国民経済・生活に直接関連すると考えて依然としてそれをコントロールしている。中国の電気料金は、発電所から電力網への併入卸電気料金(on-grid価格)とユーザーへの小売電気料金2つからなり、いずれも中央政府許可制である。卸電気料金と小売電気料金は、政府による規制料金。主要な発電用燃料である石炭の価格は、中国でも市場価格で変動しているが、従来は、その変動が電気料金に転嫁できない制度になっていた。そのため政府は電気料金を石炭の価格変動に応じて改定できるよう、「炭電価格連動性」を導入したが03年以降電気料金が6回改定されているにもかかわらず、この制度が適用されたのは、05年7月と06年6月のわずか2回しかなかった。09年夏以降、石炭価格が上昇し、発電がいシャン経営に悪影響を与えている。石炭と電力の価格の二重構造は、電力企業の発展を制約し、投資・生産・供給において、電力企業へのインセンティブがまったく与えられていないのである。
太陽光発電
中国は、広域の国土面積を有し、太陽光資源が豊富である。太陽エネルギーの日射量は120~280W/㎡あり、国土の2/3は年間日照時間が2200時間以上、その日照による太陽エネルギー総量は年間5000兆ジュールに相当している。07年の時点において中国の太陽光発電設備の生産能力は1180MW、生産量は約370MWで世界の第3位となっている。太陽光発電の導入は1990年代半ばの7000kWから2010年に30万kW、2020年までに180万kWに引き上げる計画である。07年に中国の太陽電池生産量はドイツと日本を抜いて世界の第1位となっており、さらに09年の生産量は増大し続け、4000MWに達している。太陽エネルギーは急成長しているものの、太陽エネルギー市場はまだ完全に形成されていない。世界の太陽エネルギー発電容量は2000万kW以上であるのに対し、中国の太陽発電容量はわずか30万kW。その主な原因は高いコストにある。太陽光発電の価格は3~4元/kWhとなっているのだ。
水力発電
中国は水力資源がとても豊富だ。全国における水力資源を技術的に開発可能とする潜在的発電設備容量は5億4200万kW、年間発電量は2億4700kWhとなり、経済的に開発可能とする発電設備容量は4億kW、その年間発電量は1億7500kWhとなる見込みである。だが、水力資源はほとんど四川、チベット、雲南など西南地域に分布しており、小水力資源は全国30の省において1600の県に及んでいる。中国にとって、それを全面的に開発利用するには莫大なコストがかかる。それを以下に効率よく開発するのかが大きな課題なのだ。近年、政府は特に5万kW以下の小水力発電の開発に積極的に取り組んでいる。ただし、周辺住民はその発電所立地のための土地収用をめぐり、建設側・地方政府と対立している。08年時点での水力発電の設備容量は、1億7000万kWで中国の発電設備容量全体の22%に達している。
【エネルギー資源獲得競争】
2014.10.22 中国のエネルギー事情 4/6~広がる海外での探鉱・開発
2014.03.13 人民元・ドル・円 5/5~ドル帝国とエネルギー
2014.01.23 ソ連解体後 6/6~大国ロシアの弱点
2012.10.29|ジャカルタに行ってきました 7/9~ネシアの自動車産業
2011.04.06: 石油戦略と暗殺の政治学
2010.06.01: インド対パキスタン ~インドの核開発
2009.12.04: アジア情勢を読む地図2
2009.06.26: プーチンのロシア2
2009.01.29: 意外に重要、イランという国
2008.04.29: 世界の食糧自給率