イタリアの行政当局はなぜか、製品の30%だけでもイタリア国内で作られていれば「イタリア製」と認めているらしい。それで、日本でも知られているブランドのいくつかは、70%を中国で生産した製品を輸入し、残りの30%にあたる部分だけをイタリア国内で作って「メイド・イン・イタリー」と釘打って売り出している。しかもその30%ですらも、イタリアに居る中国人が作っていると暴き出す。低賃金で働くイタリアに住む中国人となれば不法入国者であるのはもはや説明の要も無い事実だが、この番組も片言ながらもイタリア語で答える一人を除く全員の、偽造のパスポートを次々と映していく。そしてこの人々が製造終了後のバッグに貼り付けているブランドの名札が、プラダでありドルチェ&ガッバーナであるのにもカメラは容赦しない。
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番組はこの後で、イタリアに住むイタリア人の下請け職人達への取材に移っていく。イタリアの職人の技能への評価はすこぶる高いが、高級ブランドもデザインと材料をすべて提供した上で、製造はこの人々に委託するのが一般的だ。おかかえのお針子たちに作らせていたのは昔の話で、オートクチュールよりもプレタポルテ・クラスの品に主力が移った今では、優秀な下請け職人を確保できるか否かが最高級ブランドの死命を制するほどになっている。だがやはり彼らの工賃は不法入国者であろうとなかろうと、イタリアに住む中国人には太刀打ちできない。中国人を使った場合の一個あたりの工賃が30ユーロであったのに対し、イタリアの職人となると、安いものでもその3倍、並の品でも5倍はもらわないと、きちんとした仕事はできないと言っていた。となればプラダやドルチェ&ガッバーナの製品、画面に映っていたのは布地のバッグだったのでそれと同じものの価格は、他のブランドの品の少なくとも1/3でなければならないではないか。私もこの番組のレポーター女史と同じように、中国人が製造しているからダメ、と言っているのではない。