ジャカ1「昔のお客さんが来てる。引退してるから遊びでジャカルタに。」
行かなくていいのか?
ジャカ1「私のお客さんじゃない。女の子、結婚して店辞めた。今も女の子付けないで一人で飲んでる。お客さんかわいそう、心痛い。」
傷ついた、傷心という意味で多用される東南アジア・日本語、心痛い。何かそういう言葉が現地語であるのだろう。タイでもインドネシアでも聞かれる心痛い。
なかなか硬派で渋いお客さんだねぇ。ジャカ1が結婚したら、俺はどうかな?
ジャカ1「プレイボーイには関係ないでしょ?」
プレイボーイではないのだが、悲しんでいる暇は無いな。次を見つけなければならないが、ジャカ1・・・、お前ほどの女を見つけるのに時間がかかる。結婚でも彼氏でも好きにしてくれや。
ジャカ1「結婚? 彼氏すら居ないのに。彼氏は6年前に死んだ。それ以来居ない。」
ジャカ1「酒飲まない、タバコも吸わない。おいしいもの、例えば肉をたくさん食べるとかも、週に一度で良い、という真面目な人だった。私が夜の仕事をするのも嫌がったので辞めた。だから暇だったから、日本語と英語学校に通った。日本料理も習った。」
敬虔なモスリム彼氏=インドネシア人彼氏だと思っていたら、日本人だったのか・・・
ジャカ1「休日は二人でテレビを見ていた。当時はまだ日本語がよくわからず、テレビを見ながらあれは何? どういう意味? と繰り返し質問した。ただコメディーは難しく、なんで笑っているのか最後までわからなかった。それからシリトリもした。意味は何か? インドネシア語で言うと何に当たるか? と言いながらな。将来は日本に行くことも考えていた。
彼氏は生きていれば、そう・・・多分今のエキゾと同じくらいの年だ・・・。」
涙は見えないが、ジャカ1が泣いているのがわかる。
しかし、聞いていて楽しい男女関係だ。基本が0から始まっているから、一つの言葉を覚えただけでコミュニケーションの幅が広がっていくという加点法の喜びがある。毎日が、もっと言えば、単にテレビを見ているだけのその瞬間瞬間が、二人にとって前進となる、まさにグロース、建設的な関係だ。
ジャカ1「日本人同士なら、言語と文化の壁が無いから、もっと簡単にわかりあえる。」
二人の関係が日々成長していたのがわかる。ただ成長も長い時間となると難しい。おそらく短い交際期間だろう?
ジャカ1「1年半だ。」
そうだろうな。その期間なら共に成長することもできるであろう。しかし、5年、10年ともなると、成長の速度や方向性にズレが生じ始める。同じ日本語を話していた二人であっても、長い期間経つと、全く会話が通じなくなることもある。それは避けられない。なぜならば二人は違う人間だからだ。違う人間であることを認めた上で、如何にして距離を取るか。近づけば近づくほど喧嘩になることは目に見えているからだ。
ジャカ1の少女のような恋愛観に驚いた。0から始まり全てがプラスになる加点法。インドネシア・マーケット慣性系らしい成長を期待させる前向きな恋愛観だ。さぞかし楽しい恋愛だろう。一方、私の意見は、同居・子供が居て当然の有から始まる絶望的な結婚観だ。一緒に居るという関係を維持するために、マイナスを無くす、そのために距離が必要という減点法的思考法だ。一般的な大人ならば、ジャカ1の楽しい恋愛観よりは、私の考えに同意してくれると思う。しかし、30歳を過ぎたジャカ1の恋愛観を幼稚と片付けてはならない。性に開放的とはいえないイスラムの影響もあるだろう。もう一つ付け加えたいのは、インドネシアの経済発展もこの異様に前向きな少女のような恋愛観の形成に影響している。
バブル経済、急速な経済発展の下では、なんら経済活動をしていない”女の子”まで強気になる。1980年代の日本、ウォーターフロント・ジュリアナで扇子を持って舞う女の子が湧いて出てきただろう? 2006年中国だって、カラオケで働いている女の子までブイブイの強気マインドなのを私は見た。金利は10%、自動車販売台数年間100万台突破、最低賃金は30%Up、
増収・増益・増産、民の渇望が満たされていく急速な経済発展の下では、「明日はかならず今日より良くなる」という夢が生まれる。
一方の日本はどうだ? 預金金利はほとんど0%、賃金はほとんど上がらず、デフレ脱却が政策目標になる究極の安定状態。時間が過ぎるだけで何かが良くなることはない。安心して日本円を持ち、安心して貯金しておける幸せな状態だが、民に夢は無い。この対比で見るとインドネシアの経済発展が引き起こす希望に満ちた明日への期待が、恋愛観まで変えてしまうのだと思えてくるのである。
ジャカ1「本を読むのが好きな人だった。」
ジャカ1の彼氏というくらいだから頭の良い人だったのだろうね? 何の本を読んでいた?
ジャカ1「宗教。彼は元は仏教だったが、インドネシアに来てからキリスト教に改宗した。」
奇遇だな。私も宗教の本を読んでいるよ。この本。旧約聖書の創世記だがな・・・。
しかし・・・あまりにも絶望的な壁があるな。国籍が違い、言語も違い、宗教まで違う。結婚することすら一苦労な壁を考えると、日本人同士の感覚のズレなど、誤差にも等しいレベルだったかもしれないと反省した。ただ・・・
「ぼくは今とても恐ろしい想像をしている!」
答えなくなかったらかまわんが、彼氏は何故死んだのだ?
ジャカ1「内緒。それはもう”Closed”なことだ。」
むぅ・・・。俺が聞いたのは病名とか事故の原因ではない。他殺なのか?という意味と、殺した人間がお前自身もしくはお前の知人なのか?という質問だ。ジャカ1の車に乗って、レストランに出かけているが、彼氏と行ったレストランもあるだろう。それは構わないが最後の結末が俺の死をもって終わるではかなわない。ジャカ1はインドネシア人離れした高身長165cm以上あるので、人里離れたところで降ろされ、後ろから棒で殴られたら再起不能間違いなし。
いかんなぁ。また反省だ。インドネシアに対する不理解が無用な恐怖心と不安を産むのだ。民がヘッジファンドだ!デリバティブだ!HFTだ!と言って、無駄に怯えているのと同じなのだ。
【昔の思い出】
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2012.10.02 目が逢う瞬間 近代派歌謡曲の音節と歌詞について
2012.02.10|東電OL殺人事件 2/2 ~容疑者と現場
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