外交関係
外交関係は中世ヨーロッパに成立し、1648年のウェストファリア講和会議以降一般化したが慣習法によって規律されてきた。今日では1961年にウィーン外交関係条約が採択され、日本を含む181カ国が批准している。
外交使節の種類は次の2つに分類される。第1は、特別外交使節であり、特定の任務のために臨時に接受国に派遣される。特別外交使節には、国王や大統領などの国家元首、首相などの行政府の長、外務大臣など、中央の政府機関に属する者が任命される場合もある。第2は常駐外交使節であり、接受国に常置される。外交使節団は外交官の身分を持つ、大使などの長と外交職員のほか、事務職員と技術職員、薬務職員から構成される。
国際法上、特権免除とは派遣国の外国使節や領事、さらにはその公館などに対して、接受国の管轄権の行使が排除され、通常の外国人とは異なる特別な待遇が付与される、ということである。外交使節の特権免除の主要な内容は
(1)身体と名誉の不可侵。外交官は抑留や拘禁できない。
(2)公館の不可侵。警察官などの官吏は外交使節団長の同意がない限り、公館に立ち入れない。逃れてきた外国人に対して、領域的庇護権は認められているものの、公館内に保護して接受国の引渡し請求を拒否する権利である外交的庇護権については確立していない。
(3)公文書の不可侵。
(4)裁判権からの免除。1964年に東京で、日本人大学生がマレーシア大使館の外交官の運転する乗用車にひかれて死亡したが、この外交官は日本の裁判権から免除されマレーシアに帰国してしまった(アヤトリ事件)
(5)課税からの免除。
(6)通信の自由。
(7)旅行の自由。1995年にザンビアの在日大使が無申告で大量の高級ブランドの腕時計やハンドバッグなどを日本国内に持ち込もうとして関税法違反に問われた。また覚せい剤をはじめ、公文書や公的使用以外の物品を入れるなど、外交封印袋の濫用も多発している。接受国はアグレマンの取り消し、ペルソナ・ノン・グラータの通告などの措置を取ることができる。
領海
1973年に第3次国連海洋法会議を開催した。この会議は各国の利害が対立し難航したが、1982年に領海の幅は12カイリとし、その他に接続水域(基線から24カイリ)、排他的経済水域(基線から200カイリ)などを規定した「海洋法に関する国際連合条約」の採択にこぎつけた。
第1次世界大戦後、パリで結ばれた国際航空条約は「締約国は各国がその領域上の空間において完全且つ排他的な主権を有することを承認する」と規定した。領域国の同意なしに領空に入ればたとえ民間旅客機であったとしても、領空侵犯として国際法上の不法行為を構成し、撃墜されることもある。1983年アンカレッジからソウルに向っていた大韓航空機がソ連の領空を侵犯し、サハリン上空でソ連空軍機に撃墜され、世界中の人々に衝撃を与えた事件や、1994年12月在韓米軍のヘリコプターが軍事境界線を越え、朝鮮民主主義人民共和国の領空を侵犯し撃墜された事件などがある。
主権が制限された領域
国家の領土の中には、主権が制限されている地域がある。租借地、共有地、共同統治等がある。租借地とは、国家が条約により他国の領域の一部を借りるとした地域である。租借国は租借地の統治権は有するが、租借地の最終的な処分権は租貸国に残されている。租借地は第2次世界大戦前まで中国に数多く設けられていたが、現在ではアメリカがキューバから租借し、海洋基地などを設けているグアンタナモなどごく少数の例があるのみである。共有とは。1855年の日露和親条約で日本とロシアが共同で領有することとし、1875年の千島・樺太交換条約によって共同で領有することを解消した樺太がこれにあたる。共同統治とはイギリスとフランスが1980年まで支配していたニューヘブリデス諸島(現在はバヌアツ共和国)、アメリカとイギリスが1979年まで統治していたフェニックス諸島(キリバス共和国)がこれにあたる。
国際機構が特定領域の統治にあたるか、あるいは統治が予定されていたことがある。第1次世界大戦後に、ドイツが主権を放棄し国際連盟の保護下に置かれていたダンチッヒ自由市がその例である。第2次世界大戦後ではザールやトリエステが国際機構による統治を予定していたがいずれも実現されなかった。最近では、内戦などにより統治機構が破綻した国家を国連が暫定的に統治する事例が増加している。これは国連が安全保障理事会決議による平和維持活動の一環として行う場合が多い。カンボジアやコソボ、東ティモールなどの事例がある。
宇宙条約
国家がすべての責任を負うことになった。ロケットの打ち上げに失敗し、他国領域にロケット等が落下し損害を与えた場合でも、打ち上げが民間会社による場合であっても、打ち上げ国が損害賠償責任を負うことと規定している。当事国に宇宙飛行士が事故、遭難または緊急着陸に遭った場合には可能な援助を与え飛行士を安全かつ迅速に返還する義務を締約国に課した。
南極大陸
「極を頂点とし、2本の子午線とそれを結ぶ線で仕切られる局地セクター(扇形)が当然に一定の国家に帰属する」と主張するセクター理論に基づき、第2次世界大戦前から、イギリス、ニュージーランド、オーストラリア、フランス、ノルウェー、チリ、アルゼンチンなどが、領有の意思宣言していた。しかし、南極の自然条件は厳しく当時の技術では継続して生活するなど実効的な支配が不可能であった。そこで1957年の国際地球観測年を契機として領有権を主張している7カ国にアメリカ、ソ連、日本、南アフリカ、ベルギーを加えた12カ国で1959年に南極条約を締結した。1961年に効力を発生し有効期間を30年とした。30年が経過した後は、締約国の要請により会議を開催できることになっているが、開催しないまま存続している。
資源問題
最近、中国は、東シナ海における天然資源の調査活動等を活発に行っている。また、日本が領有権を主張している沖ノ鳥島が日本の領土であることは認めるが、「島」ではなく「岩」であり、排他的経済水域および大陸棚を主張することはできない、と主張している。両国が批准している国連海洋法条約は、「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時であっても水面上にあるものを言う」と規定する。日本は1989年に約285億円をかけて、同島が水没しないように工事を行った。したがって、海水による侵食は防ぐことができ、今でも高潮時にも水面上に小さな岩が出ている。第3項は「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域及び大陸棚を有しない」と規定している。確かに沖ノ鳥島は海綿状に、直径1メートルほどの岩が2つ出ているだけである。この沖ノ鳥島だけで、日本の国土面積以上の40万平方キロメートルの排他的経済水域を日本は主張している。
国際機構の予算
加盟国が支払う分担金によって賄われている。国連では2004年現在、アメリカが最大の分担金支払い国で22%、日本は19.468%、世界第2位の分担金支払い国である。今日、国連の通常予算は年間15億8000万ドルであるが、これ東京都の予算のわずか3%程度にすぎない。また加盟国が分担金を滞納するため、国連は常に財政難に見舞われている。
地球環境と国際法
1997年にロシア船籍のタンカー、ナホトカ号が島根県沖の日本海で沈没、大量の重油が日本海沿岸に漂着し、北陸地方を中心に漁業や観光業が大きな被害を受けるという事件が発生した。この事故に関し、ロシア政府は事故を起こしたタンカーが旧式であったことは認めたが政府による安全検査に不備は無かったとして責任を否定し、発生した損害に対しては日本、ロシアがともに加盟している国際油濁補償基金からの補償金支払いのみが行われた。しかもロシアが国際油濁補償基金への分担金を制限していたために、被害額全額補償されないまま支払いは終了した。
【非エネルギー資源獲得競争】
2013.11.21 インドネシア古代史 6/9~ジャワ語の歴史書パララトン
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2012.08.17|タリバン 2/2 ~麻薬と密輸
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2011.11.16|コカインの次は金-コロンビアのゲリラ
2010.12.02: 田中角栄 人を動かすスピーチ術
2010.07.30: 闇権力の執行人 ~外交の重要性
2011.09.26: ダイヤモンドの話2/5 ~持つべき者
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2010.03.02: テロ・マネー ~血に染まったダイヤモンド
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