小説なのだが、株主を軽んじている日本の経営陣の典型な部分を取り出してみた。
「議長交代だ!動議だから先だ!」 男は相手の反応を待たず一気にたたみかけた。
「交代の必要等はまったくないと考えております。しかしながら株主様から決を採るようにとのご発言がございましたので、議事進行に関する動議かと思われます。したがいまして、さっそく決を採りたく存じます」 議長役の蒔山の言葉にはさすがに少し苛立たしげな調子が混じっている。
「議長交代の動議に賛成します。私が議長をします。私が議長をすることに反対の方はいらっしゃいませんね。私は自分の株のほか、江戸銀行その他5社、総計1500万株の株式にかかる議決権について委任されております」
前列の席を占めている社員株主がいっせいに各田の方を見た。しかし、誰も声を出さない。ひな壇に並んだ20人ほどの取締役や監査役も押し黙ったままだ。
議長を交代いたしました。私から動議として株主のための経費節減と、現在の取締役の任務違背に鑑みまして今回は選任の数を4名とすることをご提案申し上げます。」