第3節 何もしなくても…投資信託
為替スワップによるプレミアムって何だ?
毎月分配型の次のヒット商品は、通貨選択型です。新興国通貨のブームに乗った通貨選択型投資信託がヒットしました。しかし、これには非常に難解な説明がついていて・・・、目論見書には、収益源泉(リスク)を以下の3つに分けた説明が載っています。
・ハイイールド債への投資
・米ドルから選択した新興国通貨との為替スワップによるプレミアムもしくはディスカウント
・選択した新興国通貨の価格変動リスク
この説明で、為替スワップによるプレミアムを理解できている購入者がいるのでしょうか?さらに恐ろしいことに販売したセールスも理解していたのでしょうか? 投資家全員は無理として、もし、セールス全員が理解しているとしたら、これは衝撃的です。若い頃は勉強したもんだよ~と自慢していたおっさんセールスが読んでいたのは、実は『四季報』ではなく、ハイデガーの『存在と時間』だった、くらいの衝撃的事実です。…それくらい、ありえないということです。

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これ、セールス部門ではなくて、トレーディング・フロアでも『存在と時間』と言って、「あー、あれ俺も読んだねぇ」なんて反応するトレーダーは1人も居ないだろうねっていう三田さん流の嫌味ね。わかる? 学歴は一応、名が知れた大学ばかりなんだけど、大して勉強して無い奴ばっかりだからねぇ。芸術とかも理解できない下賤の者が多いな。
僕? 存在と時間? 読んでませんw

第4章 ファイナンスの世界
第2節 ファイナンスでアービトラージ
公募需要を満たす空売りの買い戻し需要
エクイティファイナンスの発表に絡んで、大量の空売りをした人たちは、空売りの買い戻しニーズから公募に大量に申し込みをしていたのでした。プレスリリースから値決め日まで2週間くらい間が空いていて、発行価格は値決め日の終値からディスカウントした価格で決定されます。ディスカウント幅は3%前後で決まります。インサイダートレーダーでなくとも発行価格より上で空売りのチャンスが十分あるわけですから、空売りした株数分の公募株がドンピシャ手に入ればビューティフルなトレードになります。
インサイダー取引がきっかけとなり、ファイナンスの発表後から値決め日にかけて空売りをした投資家は、そのファイナンス銘柄の買い付けの申し込みができなくなりました(金融商品取引法施行令第26条の6)。この規制は別称、レギュレーションMと呼ばれています。

これの施行は2011年12月から。それまではこれを頼り(収益源)にやってたヘッジファンドも多かった。発表後からやる、みんなでやると収益性が薄くなるので、さらに収益性を高めるために、エクイティファイナンスの発表前から、その情報を知りつつ、空売る。これは完全にインサイダー取引ね。さらにアフター・レギュレーションMは、インサイダーを持って、事前に売っておかないと、公募に申し込めない。こうしてバイサイドは、違法取引に手を染めていくのです。証券会社も悪い奴でねぇ、その情報と貸し株セットで営業するわけ。絶対決まるじゃん。だから2012年に最大手証券のインサイダー問題があったでしょう? 情報の根っこをつかんで、どこに渡したか白状させて、時間差でシンガポールのバイサイドが検挙されるという流れになるんだな。

第3節 グリーンシューオプションって何?
私は恥ずかしながら最近まで言葉しか知りませんでした。

これ三田さんの出身がわかるわけ。トレーディング部隊オンリーの経験だってのがわかる。なぜか? 引受部門が持っているオプションで、トレーディング部門がガンマトレードするものでは無いからね。そりゃ関係ないし、三田さんが興味も無いのは当然だ。俺はね…、グリーンシューオプションをバニラとしてブックするという不毛な行為やってたよw

公募増資の時に、もし、人気・需要殺到の場合には、販売する株数を増やして対応するという選択肢(オプション)を幹事証券に持たせる仕組みがグリーンシューオプションです。
数字を挙げて説明します。500万株の引受で50万株のグリーンシューオプションがついているとします。幹事団が50万株まで追加販売できます。ただ50万株については、発行企業から引受をしてはいません、つまり発行されていません。手許には無いはずの50万株をなぜ販売できるかというと、いわゆる幹事団による空売りです。返済方法が2通りあります。シンジケートカバー取引により市場で株を買い付けて返済する。あるいは募集期間中に安定操作取引で市場買い付けしている分も返済に充てられます。募集期間が終了してから引受価格よりも株価が下がっている場合、シンジケートカバー取引で市上達すれば良い。逆に株価が上昇している場合は、グリーンシューオプションを行使して、引受価格を払って50万株受取る
グリーンシューオプションで稼いだモルガンスタンレー
フェイスブックのIPOではモルガンスタンレーが耽読主幹事になりました。引受比率が38.5%だったそうです。募集株数は4.21億株で、グリーンシューオプションはその15%分の6300万株ありました。結果は、発行価格38$でグリーンシューオプション分も含めた4.84億株を完売しました。引き受けて数量は販売額の1.1%で金額ベースでは1.76億ドル。モルガンスタンレーの取り分は6800万ドルと言われています。上場日5月18日の株価はかろうじて発行価格を上回って取引を終了しました。しかし、翌週からは株価が大幅に発行価格を下回ってしまいました。モルガンスタンレーを含めた引受会社はシンジケートカバー取引を行い、市場で安くフェイスブック株を買い付けることができました。これでグリーンシューオプションを行使しないで追加販売分の6300万株を調達できたのです。しかも、グリーンシューオプションを行使した場合の買い付け(引受価格である37.58$)よりも大幅に安く買えたのです。結果、この取引で1億ドル儲けたといわれています。

はー、ようやく、少しだけ、いちやもんをつけられそうだ。もう4章だよw 
グリーンシューではなく、「フェイスブックのオーバーアロットメントで稼いだモルガンスタンレー」が正しい言葉遣い。オーバーアロットメントというのは追加販売、上記の例で言うところの50万株、フェイスブックで言うところの6300万株、追加で幹事が売るということ。追加で売ってしまって、空売り状態で株価が上がってしまった場合、グリーンシューを行使してショートカバーをするためのもの。実際、三田さんの文章でもグリーンシューを行使してないとなっているわけだから、グリーンシューで儲けたわけではないのね。
ついてこれるか? なんか三田さん以外、俺が何を言ってるのか通じてない気がして不安なんだが・・・。

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