マキアヴェッリが、いかに若輩当時とはいえ、女を交渉相手にもったという一事は、マキアヴェッリの研究家でさえ、いたく刺激する出来事のようである。15年の官僚生活中に彼が書いた報告書にすべてには目を通さない学者も、この際の報告書は目を皿のようにして読むらしく、やっぱりヤラレタ、いや、それほどはヤラレテイナイなどと論じた研究論文を読むたびに、女である私はおかしくてたまらない
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だが、これも、しわくちゃのネーさん相手であったらこうも議論に熱が入らないであろうと思い、女は女でも、カテリーナ・スフォルツァであったからだと納得することにしている。マキアヴェッリの会った当時は36歳になっていたが、まさに満開の花の美しさに輝いていた。顔が美人であるだけでなく、姿かたちもしなやかで崩れない。10人以上の子を生んだにしては驚くばかりの魅力の持ち主だ。

> 塩野先生も、グローバルに展開される男の「あの女とやった?やってない?」議論を嘲笑しておられるw

反乱側の家臣たちが、彼女の子供達を人質に取る。子供を人質にとれば、伯爵夫人も意のままになると思ったのだろう。しかし、並の女ならばそこで屈するところだが、カテリーナは屈しなかった。城塞に逃げ込んでしまい、出てこなければ子供達を殺すと脅した反乱者たちに対し、城壁の上に現れた彼女は、やおらスカートをぱあっとめくり、叫んだのである。全イタリアの年代記作者が、筆を惜しまなかったエピソードだ。「なんたる馬鹿者よ。子供ぐらい、これで後いくらだって産めるのを知らないのか!」 カテリーナ・スフォルツァ、25歳当時の事件である。
マキアヴェッリの妻
マキアヴェッリはマリエッタを愛して結婚したのではなかった。彼は彼女を尊敬していた。またその立派な資質を認め、自分に対して献身的に仕えてくるのを嬉しく思ってもいた。彼女はつつましい夫婦ぶりを示した。これは彼のような対して家産を持たぬ男にとっては、すこぶる重要なことなのだが、実際彼女は1銭たりとも無駄遣いはしなかった。それにやがて彼女は子供達の母になるだろう。それも立派な母親になることだろう。マキアヴェッリがマリエッタを、寛恕と愛情とをこめて尊敬すべき条件は、それこそすべて整っていたと言ってよい。けれどもそれだからと言って、自分が彼女に対して貞節でなければならぬとは、彼にはどうしても考えられぬのだ。アウレリアの美しさは、彼に固唾を呑むような思いをさせたのだが、彼を感動させたのはその美しさばかりではなかったようだ。彼はこのように激しく、しかも一見して直ちに自分の感官をゆさぶってくるような女性には、これまだ一人として出会ったことが無かった。彼は女にかけては、相当に造詣が深く、しかも自分の欲望を満たそうとして、やりそこなうようなことはめったになかった。彼は自分の容姿について錯覚をいだいてはおらぬ。自分よりは男振りの良い男がたくさんいることも、財力や地位からいってもずっと有利な男が多いことも、十分わきまえている。だが彼は自分が女心をひきつける力をもっていることを、確信していたのである。彼は女たちを楽しませることができた。どうしたら嬉しがることができるかというコツを知っていた。どんな女でも自分と打ち解けさせてしまう術を心得ていた。だが何よりも彼の決め手は彼が女を熱望することであった。女達は彼が熱望しているのを、はっきりと意識するにつれて、女達も燃え上がってしまうのである。「女というものは自分の体のあらゆる神経に男の欲望を感じ取ったなら、もうそれに抵抗できるものじゃないのだよ。その女が、他の男にべったりほれ込んでいる場合だけは別だがね」 いつだったか彼は、ビアジオに向ってこう言ったことがある-
> 聡明な男が、女について語ったことを、聡明な女が訳す。良い表現ですね。
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マキアヴェッリは、一生、名流夫人の知的サロンには無縁であった。マキアヴェッリにそれに近づく気持ちがなかったのか、それとも名流夫人のほうが彼を招ばなかったのか、おそらく、その両方であったろう。ミケランジェロは、ヴィットリア・コロンナのサロンの常連であり、この教養高い貴婦人を精神上を恋人として崇めたが、マキアヴェッリには、そのような存在は1人としていなかった。彼にとって女は、女であったのである。パンがパンであるのに似て。このマキアヴェッリの女友達は恋人は、近くの未亡人であったり、世界で最も古い職業の女であったりして、いずれも無名の女達だった。名を上げるに値するのは、歌姫バルバラだけである。マキアヴェッリという芸術家は、女神によってインスピレーションを呼び起こされるタイプではなかったのである。マキアヴェッリの創作欲を刺激したのは、常に男の神であった。いや、男の神々であった。

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