アル=カイーダ関連組織の「フランチャイズ化」
アル=カイーダ中枢は、パキスタンとアフガニスタンの国境地帯に潜伏し、両国の政府と駐留軍に対するターリバーンの武装蜂起に時折関与する以外には活動を制約された。グローバルな活動では、イデオロギー的な宣伝や精神的な支援、いわば「口先介入」に限定せざるを得なくなった。しかし、世界各地でアル=カイーダへの支持や忠誠を誓う集団・組織が自生的に現れてきて分権型で非集権的なネットワークが形成されていった。「イラクのアル=カイーダ」「アラビア半島のアル=カイーダ(AQAP)」「イスラーム・マグリブのアル=カイーダ(AQIM)」といった、地域名を冠した関連組織が次々に出現し、相互に緩やかなネットワークを形成した。また、ソマリアの「アッシャバーブ」やナイジェリア北部の「ボコ・ハラム」といった、直接アル=カイーダの名を冠していなくても、密接に関係を結ぶようになった組織もある。
各組織はそれぞれの国や地域の紛争・対立構図の中で、テロなど人目を惹く作戦行動を自律的に行ったうえで、ビン・ラーディン(その死後はザワーヒリー)に忠誠を誓い、アル=カイーダの一部として事後に認められていく。これらの組織の中には、指導者の一部がかつてアフガニスタンでジハードを戦い、アル=カイーダの指導層と直接的な関係を有する場合がある。このような組織のグローバルな広がりは、「フランチャイズ化」と表現されることもある。明確な組織や指揮命令系統によってつながるのではなく、理念やモデルを共有することによって協調・同調し、シンボルやロゴマークなどを流用することによって広がる緩やかなネットワークを表現するために、卓抜な表現と言えるだろう。アル=カイーダは、名乗りを上げた諸組織を支持し、アル=カイーダの一部として承認することで「お墨付き」を与える立場となった。アル=カイーダの中枢・本体は、いわば「フランチャイズ」の支部を認証する権限を持つ「本部」の機能を持つようになった。アル=カイーダという店名や商標の「暖簾分け」を許可あるいは拒否する権限を持つ「本店」「本舗」のような立場になったともいえよう