日本ではまず国づくりのために仏教が導入されたため、国家の体制の安定や天皇の安寧を祈ると言う役割が求められました。そこですぐ効く、よく効く、密教のパワーが期待を集めたのです。最澄は806年に比叡山延暦寺で天台宗を開き、、空海は816年、高野山金剛峰寺で真言宗を開きました。日本における二つの密教の拠点が誕生しました。民衆の間では、ブッダ入滅から2000年経つと、仏法が正しく行われなくなり、世の終わりが近づくという末法思想が流行しました。日本では1052年が末法元年とされました。
そんな日本中が不安に満ちた世相を反映し、仏教に大きな地殻変動が起こりました。鎌倉仏教と呼ばれるグループの登場です。その源となったのは、社会不安も高まっていたこともあり、民衆の救済に目を向けることになった最澄が比叡山に開いた天台宗でした。
日本の仏教の歴史の中で、鎌倉仏教が革新的だったのは、それまで国家や貴族のものだった仏教を、庶民のものにしたことです。死者を浄土へと送り出す葬儀を進んで引き受けるようになったのも、救いを求める庶民の気持ちに応えようという仏教側からのアプローチの一環でした。今でこそ葬式仏教と揶揄されていますが、そもそも、誰もやりたがらなかった葬式を引き受けてくれたのです。世の中が最も切実に求めた仏教の姿だったのです。葬式仏教は当初、仏教の堕落ではなかったはずです。
死者をきちんと弔ってもらいたいという庶民の欲求に応え、鎌倉仏教の僧侶たちは葬儀に携わるようになりました。しかし、この動きがすぐに現在の葬式仏教と結びついたわけではありません。当時は、寺院が檀家の葬祭供養を執り行う檀家制度がありませんでした。どのお寺を選んでもよかったのです。お寺と信者の関係が変化したのは江戸時代のこと。幕府は日本のすべての家がいずれかのお寺に属するよう義務付けました。必ずしも幕府が信仰熱心だったからというわけではありません。江戸幕府はキリスト教を禁じていました。外国と結んだ大名の力が強くなったり、一神教を信じる信者同士が結束したりすることを警戒したからです。つまり体制の安定を維持するのが目的です。
檀家制度は、キリスト教徒ではないことを証明するための仕組みで、日本特有のものです。どの家庭もお寺に属し、仏教徒であると言う社会にすれば、少なくとも表立ってはキリスト教徒は存在できなくなります。檀家制度によって、家とお寺の関係が固定されました。この関係は代々続き、途中で他のお寺に鞍替えすることは困難です。檀家制度に先立って、仏教界内部でも本寺・末寺制度が確立されました。これは各宗派の本山を頂点とするピラミッド型の組織を作り、すべての寺院を管理できる仕組みです。今の日本が都道府県・市町村を通じて国民全員の戸籍や住民登録を管理しているような仕組みを仏教界にやらせたわけです。お寺にとってはありがたいことでした。常に檀家を確保できるのですから、一定の葬儀や法事のお布施が永久に保証されることになります。
僧侶の妻帯・世襲は日本だけ
リンポチェに対するインタビュー「これまでに僧侶を辞めたいと思ったことはありませんでしたか?」
「一般には、結婚して家族ができ、子供ができればきっと幸せになれるだろうと希望を抱いて結婚します。最初の何日か、あるいは何ヶ月かは非常に楽しい時期が続きます。それが何年かすると、夫婦の間にはいろいろな問題が生じます。周りの人たちを見ているとよくわかります。夫婦間の問題は次第に大きくなり、嫉妬心やら疑惑やらと言った心配事が絶え間なく生じます。夫婦喧嘩のもとになり、ついには別れてしまったりします。こうしたことが周りでたくさん起きているのを見て、自分が歩んできた道は間違っていなかったと信じられるようになりました。
> ハハハ、なかなか絶望的な結婚観だな。
池上彰と考える、仏教って何ですか? 2/2~日本で
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