なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?

痛いタイトルだな~ww 私が本を買う時は大きく分けて2つの心情があり、1つは「おっ、それちょっと興味あるな」という単純な好奇心でこれがほとんどだが、もう1つは「おっ、どんなバカなことが書いてあるのか知りたい」という娯楽だ。諸君らがスポーツ新聞や週刊誌を買う気持ちと同じなのだが、この本は東スポの表紙なのに中身が「孔子の論語」だったというオチであるw

「田中さんのマッキンゼーでの経験を書きませんか?」 今の僕の立場は靴の通販サイト「ロコンド」を運営する株式会社ジェイドの代表取締役。何故、今、ロコンドのことではなくマッキンゼーのことを書く必要があるのか。取引先だけではなく社員や株主からも、そして現マッキンゼー社員からもこのような疑問を呈されるのではないかと懸念した。また単に売れそうだからという理由で本を出版するのは気が引けた。
 なお本書は『なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?』と刺激的な題名になっているが、内容はあくまで僕の個人的な見解に基づいていること、また僕はパートナー(役員)になる前にマッキンゼーを卒業したため、パートナーが実際にいくら給与をもらっているかは知らないことだけは最後に注意しておきたい。

Byakuyakou-ep07-4329.jpg
この 「はじめに」 を読まないと田中さんという人を誤解してしまうくらい、タイトルと内容はまったく関係ない。出版社に「マッキンゼーでの経験を書きませんか?」と言われて、書いたらタイトルがこんなことになっていた驚かれたのではないだろうか? この本の内容に合うタイトルは
「僕がマッキンゼーでアソシエイトとして働いて得たこと」
だが、100冊も売れそうも無いタイトルだw しかし、あまり弁護の余地が無いのは、例えば

P81 .「常にバリューを出すように」。黙って聞いているだけ、勉強しているだけの時間なんて許されない。
P83. 僕たちは常に「イシューを説く」ために分析をするのであって、その目的が不明確なままやる分析はバリュー(価値)無いんだよ。
P105. 「ファクト->意味合い->打ち手」の論理的なステップを踏むのが、マッキンゼーでは常々、求められるのである。

とあるのだが、最初に出版社が話を持ちかけてきた時点で、出版社の目的を不明確なままにせず、黙って聞いてるだけでなく、質問して明確にし、売れるためのタイトルを聞き出し、その上でお得意の論理的ステップとやらで筆を取るべきだったのでは? 本なんてタイトルだけで売れ行きが左右されるものなのだから、このタイトルは完璧で出版社に罪は無い。「タイトルは出版社が後で勝手に書いた」というのは、筆者として名前を出す以上厳しいよな。
ちなみに「なぜマッキンゼーを辞めるのか?」という理由については、P199(全215ページ中)に初めて登場する

2010年1月、僕が抜けていたこの2年半、幾つかの方針が変わっていた。特に複数のパートナーから言われたのは「グローバルに蓄積されている知見や知識を積極的にレバレッジ(活用)するように」ということ。個人の問題解決能力に依存していてはプロジェクトの成果にバラツキが出ることや、従来のアプローチでは「短期決戦型」プロジェクトに対応できないことがあった。

これ普通、1章か2章に出てくる内容だよなw
で、「はじめに」にも書いてあるのだが、田中さんはパートナーになる前に辞めている。2007年~2009年に留学しているようなので、一番給料が良かった景気のピークを逃している。本当に1億円もらっていたのか? という疑念が湧くよねw っつーかもらってないねw だってタイトルが「なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?」であって、「私が年俸1億円でも会社を辞めた理由」とはなってないから嘘はついてないw
本の中で「パートナー、パートナー」と連呼しているのに、会社とか社員という言葉も同時に出てきて、この人は会社法も知らないのではないか? と疑問を感じながら読んでいたのだが、それは私がマッキンゼーという”会社”を知らなかっただけで、仕組が141ページに解説されている。

社員とは売上や利益の目標ではなく、ミッションのみを共有する-これは「経営陣=株主=会社の所有者」が成立しているマッキンゼーだから可能であって、一般的な企業ではこうはいかない。※マッキンゼーが株式会社であるが、すべての株式はマッキンゼーの現経営者(パートナー)によって保有されている。また、パートナーはマッキンゼーを辞める時、保有している株式を会社に、時価ではなく安価な簿価で売却しなければならない。これもマービン・バウアー氏の教えによるものである。

ただ、この説明もやはり正確性に欠け、マッキンゼーはパートナーシップで、マッキンゼー・ジャパンが株式会社で…と説明するのが普通なのではないだろうか? マービン・バウアー氏、賢い収益構造考えたなぁ。
もうこのくらいでいいか…とも思うような内容の本なのだが、最後に、

P.27 マッキンゼーのコンサルタントは会社の売上や利益を気にする必要は無いし、そもそも売上や利益がいくらなのか知らされていない。彼らが気にするべきことは、プロジェクトの中で自分がどれだけバリュー(価値)を生み出し、どれだけのインパクトを生み出したのか、これだけである。

インパクトってなんですか? アソシエイトであった田中さんはそう考えていたのかもしれないけど、株主であるパートナーにとって、大事なのは純利益と配当以外何かあるのでしょうか?

P143 すべての物事を費用対価値で計る癖は、他のコンサルティング・ファームと比較してもマッキンゼーが群を抜いているかもしれない。

うーん、ですよねー、すべての物事を費用対効果で計り、パートナーは、株主価値の最大化を図っているじゃないんですかね? 株主価値の最大化だけならまだ健全だが、非上場会社で時価が無い故に、株主間での奪い合い、古株のパートナーは資本政策と配当政策に謀略をめぐらせていることだろう。
ということでなかなか面白い本でしたよ~www

なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか? なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?
田中 裕輔

東洋経済新報社 2012-06-15
売り上げランキング : 65633

Amazonで詳しく見る by G-Tools

【嫌味系関連記事】
2014.01.29 税金の論理 1/4 ~税は取られるものではなく納めるもの
2013.11.12 バンファイパヤナーク観測計画 1/11 ~前哨戦
2013.07.31 プロが書いたブログを斬る、証券業界人は今日は読んで笑って
2013.04.05 父の威厳 数学者の意地
2012.12.03 ユーゴ紛争はなぜ長期化したか 3/3 ~国連の失態
2012.07.17 お料理シリーズ おいしいハムの作り方
2012.01.20|世界の話はしていない!国内格差が問題なんだ!と抵抗する方へ
2011.11.17: 姑獲鳥(うぶめ)の夏 1/2 ~出産
2011.10.05: 外資ファンド利回り20%超のからくり
2011.07.08: 株主総会に出たことある人いますか?
2011.03.09: 自分が意地悪だなーと自己嫌悪に陥る瞬間
2011.01.05: 最強ヘッジファンド LTCMの興亡 ~天才たちの傲慢
2010.11.16: 藤沢数希様の弁護をさせていただきます
2010.07.23: 数学を使わないオプション解説 GammaとVegaは何が違うの?
2010.02.02: 市場は「数学に頼り過ぎ」、数式に「常識」持ち込め