富くじの期待値が40-50%であることは一般に知られている。
「期待値が40-50%のものを買うとは、民衆は愚かである。」などという知識人のコメントをよく聞く。
今回、私はあえて民衆の側に立ってコメントを始めていこう。
知識人に問おう。
なぜ、期待値だけで、ものを判断するのかね?
期待値だけで判断する=Risk Neutral Measureなわけであるが、Real Measureの下、
Risk Neutral Valuationが常に適切であると君の大好きな教科書に書いてあったかね?
投資家にとって、失うものが小額で限定的の時、
2008.08.01: 「Gambler心得」でも述べているようにRisk(分散)には価値がある
まだ、わからんかな?
では、俺とギャンブルをしよう。
俺は1円を賭ける。
0.00000005%の確率で俺に10億円を渡してくれ。残りの
99.99999995%は0円でいいぞ。
富くじと同じ期待値50銭のギャンブルだが、このギャンブルをする俺が愚かであるというのなら、
ぜひこの賭けを受けて欲しい

これをRisk Loverと呼ぶ。教科書に書いてあったろ?
Riskの価値がわかったところで、富くじにおけるRiskを実際に見てみることとしよう。
http://www.takarakuji.mizuhobank.co.jp/topics/index.html
より期待値と分散を計算してみた。
tomikujivar.JPG
300円券で、期待値142円、47%のギャンブルなわけであるが、分散は直感的にわかりにくいので
その平方根をとった標準偏差80,845円が指標としてわかりやすいであろう。
ここで忘れてはならないのが、上記は、あくまでも1枚買ったときの標準偏差。
7億本全部買えば、2100億円が分散0で確実に99,393,000,000円になって返ってくるという素晴らしい愛国精神だ。
2本買うと、標準偏差は約1.4分の1になる。買えば買うほど、分散0に近づいていくことが想像できよう。
1σ80,845円という分散に対して158円のRisk Premiumを払うのが適切かどうかを判断するのは個人の主観による。
ただ、貴君が分散を下げたいと思うのであれば、複数枚購入をすることで分散は0まで下げることが可能だ。
私の価値基準、すなわち極度のRisk Lover Valuationでは、158円のRisk Premiumであれば1σ80,845円では
不十分で、さらに分散を下げることになる前後賞狙いの3枚買いや共同購入を理解することはできない
ただし、以下のような分散を提供してくれるとそのPremiumが安く見えてくる。
tomikujivar2.JPG
比較のために計算すると1σ=3,756,702円だ。
ま、俺が1枚だけ買ってあげるけど、これは確実に日本で流行らないね。
気の毒だから10枚買ってやるよ。10枚でも、まだ分散として安いな。
さて、最後に、本来の胴元サイドの視点でモノを言い、富くじの議論をしめようと思う。
胴元からすれば、収益は期待値と売上総額で決まり、買い手の分散は関係ない
前後賞というトラップを作り、「3枚セットで買えば総額3億円です」と言って、売上を増やそうというこざかしい
努力をしているのをテーブルから感じ取ることができよう。
一等賞金2-3億円は、2008.09.24: 「俺の欲しいもの」 で触れたように、
一般に欲しいものと言ったときにそれが買えるレベルで設定されているのもまた小憎らしい。
1000億円当たりますと言われても、それを想像したり、使える庶民は居ないということを見透かした設定だ。
7等は、買ったけどいつも0円だと精神的に空しくなり、インチキなのではないかという猜疑心が生まれるので、
10本1本は戻し、払戻金は存在することの証明と次回への期待につなげようという意図がある。
収益には関係ないこの分散の設定こそが、胴元のセンスであり、日本なら日本の国民性の象徴・縮図であり、
国民性・顧客層に合わせたLocalizeノウハウなのである。