第3章 マタラーム時代(10世紀)
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統一ジャワ王国の出現
ウァナギリ銅板文書903年、クドゥ銅板907年、においてバリトゥン王が彼に先立って中部ジャワを統治していた一連の諸王に呼びかけを行い、彼らを神たる過去の王として崇め、彼のクラトン守護を祈願しているのが注目される。このことから見て、王称の変更とバリトゥンの中部ジャワの一連の諸王に続く登位には関連があり、これはおそらく入婚によるものと考えられる。とすると、バリトゥンは元来東ジャワの王であり、この地で最初王位につき、その後間もなく中部ジャワとも特殊の関係を持つようになり、結局、サンジャヤの後継者たちに名を連ねることになったが、これには新規の王称をもってした、と言うことになろう。

高い女性の地位
927年の銅板文書は、国王ではなくガルンのラカラヤーンという高位の職にある人物にとって布告された司法判決を掲げる文書であるが、この判決を再審の許されない最終判決としているのも、法制史上注目に値する。ガルンに所在する僧院の領地とされていたグントゥルに居住する被告が彼の死去した妻の債務の支払いを請求された。その判決文は原告が当日裁判所に出頭しなかったので、その訴訟は却下されるが、原告が出頭していたとしても、夫が妻の債務を知らずかつまたその婚姻によって子供が生まれていないことから、妻の債務は夫の負担とはならず、この訴えは取り上げられないと述べている。妻が全く自己の責任において、こうした債務負担の行為を為しえたことが注目される。ジャワの古代社会における妻(女性)の地位の高さ、独立性が改めて認識されよう。
東ジャワ期への移行
シュリーヴィジャヤに関する前期のアラビア人の記録などから、この王国の国内情勢には変化がなく、商業国家として繁栄を続けていたものと推測される一方、ジャワにおいて文化の中心地としての中部ジャワが消え去るという大事件が発生している。この事態に関して直接の資料は全く見出せないが、その真相を探る場合、東ジャワが共同国家としての連帯を武力によって断絶したとこの国家の半分を無力化し、その状態を維持したとするような政治上の構想の想定すべきでないことをまず念頭に置くべきであろう。政治上の優位の転移には、後のジャワの歴史、例えばカディリ期からシンガサーリ期への移行の場合にうかがえるが如く、極めて緩慢な文化上の優位の転移が伴っている。中部ジャワの存在を示すもの全てが兵火によって破壊されたとする考え方には、意識的な破壊の痕跡がどこにも認められず、すべてのモニュメントが自然力の作用のみをうかがわせる状態において発見されている事実が符合しない。これらの記念物の古い石材を功利的な近代的用途に向けたずっと後代の人間の手以外の人間の手はモニュメントの破壊に加えられていないのである。
ジャワのシュリーヴィジャヤ侵攻
この情報は相手側、シュリーヴィジャヤの使節の動静に関する記録によっても確認される。即ち988年中国に来訪したシュリーヴィジャヤの使節は、990年首都を去ったが南中国(広東)に到達した時、彼等の本国がジャワの侵攻を受けていることを知り、出発を1年延期した。この使節の一行は992年春、船出してチャンパーまでは到達したがこの地で好ましい情報が得られないので、再び中国に引き返し、彼の本国を中国皇帝の指導の下に置くための勅令養成している。しかしこの勅令が下され、中国側が事実仲裁の役割を買って出たかどうか記録されてない。
マタラーム王国の滅亡
ダルマヴァンシャ政権の週末は悲劇的であった。カルカッタ文書のサンスクリット語文は、国王の娘の婚儀後間もなく「インドラの国」の首都として喜びに満ちていた地は、灰塵に覆われるに至った。1006年のジャワ王国の滅亡に言及し「ウラウァリ(Wurawari)王(ハジhaji)がルアラーム(Luaram)から出ると、このときジャワ島全体は1つの海の如く見え、多数の貴人が死去したが、最初に国王陛下(シュリー・マハーラージャ)が平安に死去され、1007年のチャイトラの月にウウァンタン(Wwantan)の聖所に葬られた」と記している。この大異変をなんと理解すべきかが問題である。クラトンの炎上と国王の死は確かなようである。王をこの事件に登場させていることから見て、人災説が取りたくなる。1006年の大異変によってムダンの王は世を去り、これとともに「マタラーム王国」は分裂し、その存在を絶つに至るのである。

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