生活から推測するフランスの法と規制

私はそもそもフランスの法を積極的に学ぶ気はない。一方、ボトムアップ方式、普通に生活していく中で、どのような法律になっているのか? 規制があるのかを推測してから、調べ始めるのは、どこの国でもやっていることだ。税制や規制による制限が、市場を歪める。それは株式市場だけでなく、日常生活や消費活動でも起こっている。それを発見し、自分に都合よく利用することだ。また、様々な国を見ていると、その平均は大きな母集団から計算されたより精度の高い平均(世界標準)となる。世界標準たる平均から外れているものが異常値で、その中に規制による歪みがある場合がある。

例えば、私が買っているもの、世界標準で考えて不当に割安なワインやハムやルーブル美術館は、おそらく政府の補助金が入っている。ヨーロッパを代表する大都市にもかかわらずパリ市内に高速道路・立体交差がない。その状態でも渋滞が発生しないのはなぜか? なんらかの車に対する交通規制、パリ市内に入るための制限があるはずだ。と考えるようになる。

農産物支援、芸術支援、交通規制は歪みだが、アマゾンプライムがAmazon Primeより安いのは価値観の差であって歪みではない。私が知らないだけで日本がアマゾンに極端に優位な法制度となっているなら別だ。Amazonの国家間節税政策に対して、日本は特に牽制せず有利だから、というのならそれは歪みとなる。うーん、ちょっと例が不適切だが…。

パリでプラプラ街を歩きながら生活する中で見つけた歪みを紹介していこう。

八百屋、肉屋、酒屋などの零細店舗が存在する。

日本・香港・シンガポール・タイなどでは零細店舗は、ローカルの巨大チェーンスーパーに飲み込まれてほとんどが姿を消した。程度の差はあれ、地方都市だけではなく東京でも起きていて、八百屋や肉屋に限らず、個人商店は20~30年で見れば、どこであっても激減しているはず。街の電気屋さんはヤマダ電機、古本屋やブックオフ、タバコ屋は酒屋同様にコンビニ、地方都市のシャッター通りはイオンへと変貌した。昔ながらの市(イチ)・複合店舗、香港なら外市、シンガポールならウェットマーケット、パリならMarcheという形は存在するが、いわゆる街の八百屋ではない。

ホテルから歩いて1分以内、これは偶然にしても徒歩圏5分以内に八百屋、肉屋、酒屋が複数店舗ある。一方、パン屋、携帯ショップ、雑貨屋、スタンド(新聞や飲み物を売るキオスクKiosque)などは、香港やシンガポールでも見受けられる。昔のパリは日曜になるとほとんど全ての店が閉じてしまい、何もできなかったそうだ。今は、巨大チェーンスーパーがあるので特に困らないが、パン屋は法律で「日曜でも営業しなければならない」。

ということは…、パン屋は日本で言うタバコ屋と酒屋と同じ。免許制を取っているかどうかは知らないが、政府に届け出が必要ということになる。その制限の分だけなんらかの税制優遇もありそうだ。さらに想像を拡大させ、消えた零細店舗である、八百屋や肉屋がパリの至る所に存在する、のはなぜか。これもパン屋と同様、なんらかの税制優遇や法的保護を受けていなければ、チェーンに飲み込まれて消えていくのが、市場原理と時代の変化の当然の帰結だ。

パリ在住で外食を経営している友人に聞いたところ、零細の八百屋を保護をしているのではなく大手チェーンをいじめる規制をしている、ということだ。零細の八百屋が存在する社会的意義はほとんどないであろうから、この規制はヨーロッパがアメリカより大きく成長率が劣る要因で、経済的に良い規制だと思わない。

2018年初頭、日本滞在時に、日本ではキャベツ、レタス、白菜などの葉物野菜が例年の4倍ほどに跳ね上がっていたことを思い出した。香港やシンガポールにおいて、これほど激しい野菜の価格変動を見たことがない。日本よりはるかに少ない人口で、食糧自給率などゼロに近いような環境でも、ほとんど価格変動しないのである。これは輸入、市場規模が大きいのだ。対して日本の葉物野菜は国産、しかも業者などの取り分を除いた余りを一般消費者市場に回しているので、1億人以上の人口を有しながらも市場規模を異様に小さくしているためだ。フランスでは業者用と一般消費者で価格差はほとんどなく、価格変動もそれほど激しくない。

八百屋と肉屋の存在は、フランスは農業国と言われるが、食肉や穀物を大量輸出しているアメリカに対して、フランスの保護政策は、地産地消・国内消費にフォーカスを当てている結果であろう(その意味では日本に近い)。最終消費、販売を重視する戦略には同意できる。日本も農林水産省と農協を中心に、生産制限・買取・販売価格統制はしているものの、販売保護はしていないだろう。需給変動を変銃的に一般消費者に押し付けた野菜の激しい価格変動やコメの先物がいつまでも盛り上がらないのが、販売を軽視している証拠だ。最後の販売によるエグジットを確保しない生産の保護が、赤字・売れないコメが倉庫に積み上がるような事態を引き起こしている原因であろう。

実はコメの先物化は日本だけでなく、グローバルにもあまり成功していない。詳しくは、この本に書かれている。ちなみに著者はフランス人なので、アメリカ中心の農業事情ではない視点が面白い。

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水揚げ港による魚のブランディング戦略でも、同じことを感じていて、最終消費と販売はあまり意識してないように思える。魚の場合、鮮度を保つのが難しいため、地産地消を国内のさらに小さな地域で主張もできて、東京に輸送するまでの時間とコストの分だけ、この漁港では、安く良い品が手に入る、とアピールするのがエグジットを意識した「漁港のブランディング」だと思う。

2018/05/24 何が価値か?呼び名にもこだわり

で既に詳しく述べたことだが、これについてホリエモンが同じことを言っている。

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小さな店なら使う量も知れているだろうから、少ししか獲れない貴重なものを送ってくれたり、走りの素材、ときには「ほかの人は使わないけど、実はおいしいんだよ」と、チャレンジアイテムもよろこんで送ってくれる。これは、大規模経営では不可能なやり取りだ。直接のやり取りがヒントを生むコスト以上にうれしいのが、生産者と直接コミュニケーションを取れることだろう。激戦の築地で仲買と仲よくなるよりも、産地と直接LINEやメッセンジャーでやり取りする。電話ももちろんありだが、漁師さんが「こんなのあるよ」と、魚の写真を送ってきてくれることもあるだろうから、LINEなどのほうが早いしわかりやすい。わからないことがあったら、「試してみたいけど、どうやって食べるとうまい?」と聞けば、きっと新しい料理のヒントをくれる

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日本はそもそもロジスティクスに強い国だ。インターネットを駆使し、コミュニケーションツールを持つ世代には、前時代の料理人や生産者には真似できない広い世界が広がっている。

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ここで思うことはカギを握っているのが、生産と販売の間にある中間業者、農協や市場の仲買人であることだ。一方、超優良企業の損益計算書では、その中間を一切省いて高収益を上げている。企業会計では販売=売上が逆に入り口になる。エグジットは純利益や株主資本で、上場や売却という意味ではなく、株主利益や時価総額を増やすことがエグジット。日本企業の場合は、顧客サービス、従業員、銀行のご機嫌を伺う経営は垣間見えるが、相変わらず株主は軽視されたままだ。

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