行き詰っている店主が必ず口にすること

悩みとして必ず出てくるトップ3は決まっている。「食べログ」「ドタキャン」「人材確保」だ。

なぜ食べログが「悩みの種」になってしまうのだろうかというと、「あることないこと」とは言わないまでも、重箱の隅をつつくような小さな問題を論い、低い点をつける人がいるからだ。

ホテルのレビューも同じだ…。俺が泊まるような安いホテルに対して、古い、汚い、朝食がまずい、などと書いている奴が多いので、レビューは見ないことにしている。

若者に辞められないために、一つ考えられるのは給料を上げることだ。そんな財源はない?ないなら作るしかない。彼らは十分な給料、ボーナス、福利厚生を与えるために、価格を上げるのだ。「安い値段で料理を出して、お客さんに喜んでもらいたい」と言うけれど、誰かが犠牲になってまで安い料理を出すのは不健全じゃないか?

「お客さんが来ない」と頭を悩ませているお店に多いのが、「いいものを誰もが食べられる値段で」という価格帯だ。値付けの問題というよりも、料理と価格への思い入れが強すぎて失敗している。出したいものは上を見ていて、価格は下を見ている。これは必ずしわ寄せが出るパターンだ。

しわ寄せはデフレの原因として日本を全体を覆っている。飲食店だけの問題ではない。金融政策以上に、このデフレマインドが強烈に効いているというのが私の意見だ。見かけ上の値上げに過剰反応する国民性なんだ。お値段据え置きで量を減らす。わざわざパッケージを作り直すコストを考えれば値上げが効率が良いのだが、消費者が過剰反応しすぎるので、できない。

きちんとした経営のお店にとってはクレジットカードの控えによって入金管理できるのは、手数料以上にいいところがある。入金が間違えようがなく管理され、自動的にリスト化される。忙しい営業が終わった後にこまごまと計算機を叩く必要なく、だ。またドタキャンの問題解決にもつながるけれど、顧客管理ができる。カード番号から得られる情報は多く、キャンセルが多くお客さんのチェックも可能なはずだ。オンライン予約と連動させていけばキャンセルフィーを請求することもできる。

「現金のみ」で怪しい小遣いを手に入れるのもいいけれど、まったくスマートじゃない。クレジットカード払いを積極的にすることは、お客さんの利便性だけではなく、お店の利便性にも必ずつながる。原始的なところだと、アルバイトがお釣りをちょろまかすなんて言うことも一切心配しなくてよいのだ。

規制の緩さが日本のレストランを育てた

日本は様々な規制が厳しいといわれている。しかし、飲食業に関しては、世界レベルで見ると実はとてもゆるい国だ。パリやロンドンで新しいお店を出そうと思ったら、まず場所の確保が難しい。建築基準が厳しくて、高層ビルがそうそう建たないから場所の空きがないことが大きい。高層ビルがバンバンできてお店を大量に誘致する東京は、状況がまったく違う。また、欧米では酒販ライセンスが非常に難しい。アメリカなら州によって異なるが、エリアや時間帯によって細かく規制されている。お店ができあがっているのに「酒販ライセンス待ち」になったり、結局取れずにお酒を出すことができないお店も多いのだ。衛生面では日本が厳しいと思いきや、そんなことはない。たまたま生レバーやユッケに関しては規制が設けられているけれど、基本的に食品衛生責任者の講習を一人が受ければ良いという形になっている。シンガポールだったら、ウェイターになるのでも同等のテストをパスしなければならないそうだ。日本では考えられないがニューヨークでは寿司を素手で握ったお店が州の衛生法に抵触したという理由で罰せられた。

そういった事情を知る人が訳知り顔で「日本ももっと規制を強化して悪徳業者を一掃しよう」なんていうツイートや発言をしているのを見聞きするけれど、大間違いだ。規制がゆるくて、「誰でもお店を出せる状況」だからこそ、日本の飲食業界は多種多様に発展し、こんなに面白いんじゃないか。

バンコクが安く楽しいのは規制が緩いから、とは思っていたけど、確かに東京もパリよりは規制が緩そうだ。漫画の発展も、「漫画なんか書いているヤツは遊びだから、彼等の労働を守ってやる必要がない」という差別意識が、規制のない自由な競争を促し、世界に対する競争力を持っている面もあろう。労働者を過剰に守る労働基準法は日本のガンだと思っているが、漫画の世界にはそんなもんはねぇ。

現代のコミュニケーションツールを使って産地と直接「つながる」

何よりも大きいの仕入れ。「毎日築地に行く」なんて自慢にもなりはしない。現在のコミュニケーションツールを使えば、産地直送でいくらでも魚や野菜を買えるのだから。直接取引になるのでコストが抑えられるのは当然。流通もよくなっていて、あっという間に新鮮なものが必要な量だけ届けられる。築地のヒエラルキーは厳しく、いいものや貴重な素材は、当たり前のことだが長い付き合いの料理人に渡される。そのヒエラルキーもすっ飛ばせるのが産直との一から作るつながりなのだ。

小さな店なら使う量も知れているだろうから、少ししか取れない貴重なものを送ってくれたり、走りの素材、ときには「他の人は使わないけど、実はおいしいんだよ」と、チャレンジアイテムも喜んで送ってくれる。これは、大規模経営では不可能なやり取りだ。わからないことがあったら「試してみたいけど、どうやって食べるとうまい?」と聞けば、きっと新しい料理のヒントをくれる。

日本はそもそもロジスティクスに強い国だ。インターネットを駆使し、コミュニケーションツールを持つ世代には、前時代の料理人や生産者には真似できない広い世界が広がっている。

私でも石巻でやれることだ。ビジネス目的ではないが、直接生産者とのコンタクトはできる。

職人にしか作れないものは作るな

職人技、職人仕事というとても耳障りが良いのだけれど、実際にビジネスになると決して歓迎すべき言葉ではない。この考え方で成功したのが「牛角」。肉は切り方でおいしくもまずくもなるが、それまで焼肉業界でも「職人」が肉を切り出して、その方法は公表することなく高級外食として君臨していた。「牛角」はそのような肉の切り方を完全マニュアル化、アルバイトでも肉が切れるようになり、こうすることでコストを大幅に削減することができた。これは焼肉業界にとって革命的な出来事だったと思う。

2017/04/21 抵抗勢力、イノベーションを拒む人々 
2017/01/27 三田氏を斬るシーズン3 5/9~トレーディング業務でのAI活用

で既に同じことを述べている。

なんでお店が儲からないのかを僕が解決する なんでお店が儲からないのかを僕が解決する
堀江 貴文

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