大手のエアラインで、エアバスを使っていないのはJAL(日航)とBA(ブリティッシュ・エアウェイズ)だけである」(その後、1998年、BAはエアバス機を大量発注した。日本とヨーロッパの間の深い断絶を意識した。我々は、ことに飛行機に関してはアメリカのほうばかり見ている。日航はなぜエアバスを買わないのであろうか。軍事に関しては日米安保条約がある。しかし民間機についてまで、日本はなぜアメリカのほうばかり見ているのであろうか。
グラマンのF14の父から「日本はなぜアメリカの戦闘機を買うのだ?戦闘機は仮想敵国を考えて最適に設計するもので、A国の戦闘機がB国の戦闘機になることはあり得ない、というわけである。「我々は地理的条件を考え、さらにソ連のクォーターバックがどういうボールを投げるか良く考えた上で戦闘機を作っている。その戦闘機が日本の戦闘機に適するわけが無い。日本と条件が近いのはイスラエルである。日本は外国から買うならイスラエルの戦闘機を買うべきだ。少なくともそれをよく研究すべきだ


エアバス・インダストリーは1970年、ヨーロッパの力を結集して設立した。乗客数数百~三百の旅客機の開発を目指してスタートする。当時のアメリカの三発機、ロッキードL1011やボーイング727の対抗機を開発するためであった。300乗りを目指したのでA300と名付けた。エアバス社の特徴の新技術の導入を続けていることである。「大型双発機」、「ツー・メン・クルー」、「フライ・バイ・ワイヤー」、「アルファ・フロア」、「アルファ・マックス・プロテクション」、すべてエアバスが言い出し、世界に先駆けて完成させた技術である。エアバスの主契約者は、欧州四カ国がかかわる。フランスのアエロスパシアル、ドイツのダイムラー・ベンツ・エアロスペース・エアバス、イギリスのブリティッシュ・エアロスペース・エアバス、スペインのカーサの四社である。本部で働く人間は焼く2700名、関連会社の人間を総計すると15000名になる。
コンピューター中心は、コンコルドから
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フランスの、あるいはヨーロッパの次のヒットは、いや大ホームランは超音速旅客機コンコルドだと思う。英仏は共同して、世界初の超音速ジェット旅客機を狙った。三角翼機は低速で飛ぶ時仰角が著しく大きくなる。離着陸時、操縦者の司会を確保するため、彼らは機首を折り曲げるという破天荒なアイディアを使った。ちなみにコンコルドの末尾はdeになっていて、dではない。これは英仏の力関係における仏の優位を示すものなのだそうである。コンコルドは騒音がひどいとか、燃費が悪いとか、色々批判される。しかし世界に先駆けて超音速旅客機を実用化したという実績は、これも燦然と光り輝くものである。
フォークランド紛争の頃、エグゾセというフランスのミサイルが話題になった。当時、三菱重工製の地対艦誘導ミサイルはエグゾセを抜いていたと思う。またFSX(支援戦闘機F2の開発段階の機体)の初期、日本の複合材は世界のトップレベルにいたのではないか。複合材はいわば手作りの世界である。こういうところは日本が非常に得意の分野だと思う。FSXの開発時、私の理解するところでは、アメリカは日本にFSXを作らせたくなかった。これが本音ではなかったかと思う。当時それで色々難題を吹きかけたのだと私は考えている。その中で、アメリカ側に立って考えると、日本にFSXを作らせないための切り札は、フライバイワイヤー(FBW)のソースコードではなかったか。「ソースコードを提供しない」。これで日本はアメリカの言うことに従うと考えたのではなかったか。幸い三菱重工はT2CCVというプロジェクトですでにFBWの経験を持っていた。ソースコードが提供されなくても三菱はFBWが作れたのである。これが日本側の強みになったと私は理解する。しかし残念ながらおいた日本のリーダーたちは、そういうことを理解していない。
三菱重工はカナダのボンバルディア社と協業でグローバル・エクスプレスという19人乗りのビジネスジェット機の開発を行っている。期待の大きさはB737クラス、値段は一機40億円程度らしい。三菱はこの新機種の主翼と中部胴体を担当している。
「なぜ全部を三菱がしないのか。なぜボンバルディア社の位置に三菱が入れ替わることができないのか。」 担当者は次のように答えた。「販売とプロサポの力が無い。」 プロサポとはプロダクト・サポート、技術上の支援、部品供給上の支援、訓練上の支援である。国力が小さくても飛行機は作れる。日本は中小型輸送機を作る能力は十分にあると思う。逆にボーイングの飛行機は世界を覆って飛んでいる。必要などこにでも電光石火、部品を届けられる。だからこそ世界の7割の旅客機がボーイング製になる。しかし航空機を作るにはあまり知られていない制約がある。製造者責任、いわゆるプロダクトライアビリティである。日本にはまだこれに対応する能力が無い。米国で飛行機が落ちれば、乗客の数だけ訴訟が起きるといわれる。日本にはまだその備えが無い。言い換えれば優秀な弁護士を多数抱えるほどには、日本の力では売れないということである。
日本はなぜ下請けに甘んじるか
通産省で航空機工業審議会があった。次期小型輸送機(YSX)の話題の時、私はあえて発言した。「三菱重工でボンバルディアの仕事をしている人々は活気があり張り切っている。ボーイングの仕事では後部胴体だけだが、ボンバルディアでは中部胴体と主翼の全てを分担している。だから彼らは意気軒高だ。しかし素朴な疑問がある。日本とカナダのGNPを比べれば日本のほうが一桁大きい。ボンバルディアは三菱の一部門くらいの規模ではないか。航空機製造で両社の立場は逆転しても良いと思う。そううならないのはなぜか。」 予想されたことだが、大半の委員は次のように考えている。「我が国は機体を作る能力も実力もある。しかし作っても売れる見込みが無い。それを押してつくる危険を企業は冒せない。日本は狭い。つくった飛行機を飛ばす滑走路もほとんどない。それに比べカナダは広い。飛行場も多く、飛行機がたくさん使われている。我々は販売が弱い。カナダは設計で弱い点がある。お互い相補う形で協力が成立している。エアライン関係者が「エアラインとしては、ボーイングかエアバスを買うしかない。日本性の飛行機を買う約束はできない。日本はこの際、飛行機を作るという考えを改めても良いのではないか。」 仮に私が経営の責任を負わされたら、実績のない日本製の飛行機を買うなどと言えるはずが無い。我々の車の購入と同じである。実績の無い会社の新車を発注するはずが無い。そして日本人が買わない飛行機を、外国人が買うはずが無い。
我々はこの種の議論を30年以上繰り返してきた。これほどの立ち遅れは、一朝一夕になるものではない。そこには何か、長期にわたる原因があって然るべきである。滑走路の数や販売力の不足などとは違う、本質的な原因が潜んでいるように思う。それは飛行機の宿命にかかわることではないか。直接に言えば、日本が戦後憲法で、戦争を放棄したことに遠く起因するのではないか。その意味では、日本の航空機が発展しなかったのは日本にとって幸運だったのかもしれない。残念ながら航空機は戦争の手段の一つとして発展してきた。それは飛行の歴史を見れば明らかである。ボーイングは大型機製造で世界を制している。それは第二次大戦にB17をフライング・フォートレス、そしてB29スーパーフォートレスを作ったことと無縁ではない。戦後ボーイングは6発のジェット機B47ストラトジェット、八発のB52ストラトフォートレスを世に出した。これら戦略爆撃機開発の系譜の上にジェット旅客機B707がある。そしてこれがB747、B777へと発展していく。ついでにもう一つ付け加える。戦後日本の航空界が活況を呈したのは、朝鮮戦争とベトナム戦争のときだけである。欧米とも武器の輸出は重要な産業であった。米ソ冷戦中は、それらの武器が世界各地の代理戦争に使用された。旅客機の飛躍的発展は、この開発競争の成果と決して無縁ではない
次の推進力は何か
エアバス・インダストリーは米国の産業と違い、軍事分野からの技術移管という恩恵に浴したことはありません。我々の主要パートナーの一つ、アエロスパシアルはハイテク軍用機の経験すらありません。当初からヨーロッパ・コンソーシアム(国際資本連合)はパートナー会社の民間部門の、その時々の専門技術の上に築かれてきました。それはこの分野の数々の画期的出来事になっており、その中には世界初の民間大型ジェット旅客機や世界唯一の超音速旅客機があります。A300Bシリーズの発進以来、エアバスインダストリーはパートナー会社の研究開発を、常に継続刷新する政策を取り続けてきました。これは最も効率のよい大型定期旅客機の製造を目的としています。エアバス・インダストリーは今日の民間航空宇宙を先導し刷新する勢力として、既に確立しています。エアバス・インダストリーはこれからも民間航空機の開発に対する軌範を示し続けます。
飛行の歴史は、戦争とともにあるのではなく、人間の歴史が戦争とともにあるのである。全く関係ないように思える金融ですら、例えば中央銀行の設立ですら、戦費調達がきっかけなのである。エアバスに限らずだが、ヨーロッパの国際協力も歴史あるよなー。歴史=戦争だが、ローマ帝国にしてもユーロ統一通貨構想にしても。
【軍需産業】
2013.06.13 わが闘争 下 国家社会主義運動 5/7~ドイツ国内の潜在的課題
2012.01.30|武器輸出3原則を緩和
2011.06.23: 米ロッキード:F35、防衛省要望の納期に自信
2010.11.02: 米国、サウジに600億ドルの兵器売却へ
2010.02.23: Air Show 戦闘機の祭典
2010.02.18: ロシアの軍需産業 ~軍事国家の下の軍需産業 
2010.02.16: 台湾への武器売却、やめなければ関与した米企業に制裁=中国 
2010.02.05: ロシアの軍需産業 -軍事大国はどこへ行くか- 
2009.03.27: 私の株式営業 ~Fiat Moneyの裏打ち