第6章 シンガサーリ王国時代(13世紀)
1222年のガントゥルの戦いによるカディリ政権の滅亡は新王朝がジャワの支配権を新しい首都において引き継いだこと以上の意味があり、単なる政権の交代とは性格を異にする歴史的転換期の始まりを示唆する事件であった。新王朝によって「ジャンガラおよびカディリ」の両王国が決定的に統一的に統一されたとしても、そうした形式上の事実が新しいジャワの王国の国力の良い大きな展開を可能ならしめえたとはいえない。この「統一」なるものは実質上というより、外見的虚構とすべきである。強力なヒンドゥー文化を基盤とし、古来の中部ジャワの伝統への憧憬を示していた王国と王家は消えさった。これに代わって、新しい、単独、排他的な「ジャワ王国」が、社会の最下層の農民出の「成り上がり者」を始祖とする王家の元に出現した。1222年はジャワの歴史において、政治上よりもむしろ文化上の観点から、極めて重要な里程標とされよう。というのは既に進行中だった文化面におけるジャワ化の過程が特にこの年の事件以後急激に促進され、深化しているからである。