92年4月にはフィリピンで安値に臓器移植を受けられると、患者3人に斡旋を持ちかけ、5000万円を集めた横浜氏の病院事務長が姿を暗まし、神奈川県警が詐欺師容疑で捜査している。さらに「バブルの崩壊で事業に失敗した面々が、一攫千金を狙って臓器売買に乗り出したケースが多く、詐欺まがいの事業内容やいいかげんな手術で感染症や拒絶反応を起こして生命を失った例もあった」のである。99年には商工ローン最大手「日栄」の社員が融資先や、その連帯保証人に対し「腎臓や目玉を売って金を作れ」と脅迫まがいの発言をして話題になったが、威圧や無理強いをして借金のカタに腎臓や角膜を提供させる暴力団系臓器ブローカーも登場した。
フィリピンの生体腎移植の最大の特徴は、ドナーの多くがマニラ市の南約25kmにあるニュー・ビリビッド刑務所に収容されている受刑者である点だろう。この刑務所は「モンテンルパ刑務所」とも呼ばれ、第二次大戦後は旧日本陸軍の山下奉文大将をはじめ、数多くの日本人が戦犯として収容されていたことでも知られており、処刑上の跡地には日本式の霊園も設けられている。500ヘクタール以上もある広大な敷地を持つ刑務所内には病院や学校、工場などが併設され、約8000人の男性受刑者が収容されている。
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ドナー志望の受刑者は自ら、刑務所内の病院に完備してある臓器提供死亡者名簿に記載して登録。レシピエントが法務大臣に腎臓提供の要望書を申請し、その承認を受けると、刑務所内の病院が臓器提供死亡登録者のうちレシピエントと同じ血液型の受刑者から血液を採取し、患者が入院している病院に送って組織適合検査を行う。両者が検査に合格すれば刑務所内の病院長がコーディネーター役を務め、患者本人か家族がドナーとなる受刑者を訪問し、謝礼金額など腎臓提供の条件について交渉する。双方が合意に達すると予め病院側が「ドナーは人道的理由から、喜んでレシピエントに腎臓を提供する。レシピエントは喜んで、ドナー及び家族に金○○ペソを支払うなどと印刷しておいた契約書や手術承諾書などに署名して、契約が成立。刑務所長は「刑務所外での治療が必要」として、法務大臣の承認を得たうえで受刑者をフィリピン国立腎臓センター、またはレシピエントが入院している病院に移す外出許可を出し、そこで臓器の摘出・移植手術が行われるシステム-というからまさに「国家的な事業」と言えよう。受刑者がドナーを志望する動機のほとんどが減刑と家族を養うためのカネである。刑務所関係者の説明によると、重罪の囚人は減刑や恩赦、罪の軽い囚人は5万ペソ(25万円)前後の報酬、または保釈プラス1万ペソ(5万円)前後の報酬と引き換えになるケースが多いという。
もっとも、この受刑者ドナーは最近、日本人の患者には人気が無いようである。受刑者の臓器が傷んでいたり、エイズなどに汚染されているケースが増えてきたうえ、新たに中国など有力市場が出てきたことも影響しているという。2000年5月、元プロレスラーのジャンボ鶴田(当時49歳)がマニラ首都圏の国立腎臓移植研究所で肝臓移植中に大量出血して死亡したことを覚えているだろうか。
子供の臓器売買と言えば、インドを抜きにして語ることはできまい。インドは古くから公然と臓器売買が行われ、腎臓の供給量は一時は全世界の7割以上を占めるなど「世界最大の臓器市場」として知られていた。現地の新聞を読むと、ムンバイ、チェンナイ、デリー、カルカッタの4大都市を中心にインド各地で臓器売買が盛んに行われ、肝臓5万個や角膜1万個をはじめ皮膚、血液、骨などあらゆる人体の部品が売られているとか、私は1平方インチ300ルピーで皮膚を売った!といった派手な見出しのついた記事が紙面をにぎわしていた。また同じ紙面上に「肝臓求む。乞連絡」と書かれた多数の広告が堂々と掲載されているのが目につく。
お互い十分に深い愛情を抱いているのだが。結婚を意識するどころか、まだ肉体関係にも至っていない。それというのも智恵美の心の中に性交渉や妊娠、出産に対する不信感が芽生え躊躇してしまったからである。「それもこれもあのバイトが悪い。いくら学費や生活費を稼ぐためとはいえ、あんなことやらなきゃ良かったと後悔している」
そのアルバイトとはエッグ・ドナー(卵子提供者)であった。大学院に進みたくても外国人の場合は学費が高くて、半期で5000ドル(60万円)余りに上る。それまでのアルバイトの給与や両親からのわずかな仕送りを必死に貯めた金額ではとても足りず、進学を断念せざるを得ない状態に追い込まれた。「『あなたは毎月一回排卵しているでしょう。そうやって捨てている卵子を不妊カップルに提供してくれれば1回につき4000ドル前後の報酬を支払うわ。採卵する時少し痛いかもしれないけど、危険なことは無いし、日本人留学生でも大勢やっている人がいるから』というのよね。それで大して働かないのに月に4000ドルももらえる良いバイトがあるなんて、と喜んじゃって…」「男女3人の面接官が待ち構えていて、申請した動機から出身地、学歴、大学での専攻科目や成績、本人や家族の健康状態、薬の服用歴に至るまで徹底的に質問を浴びせられた。警察の尋問みたいだったし、日本にいる両親の性格や仕事、恋人の有無とかセックスの頻度まで聞いてくるから、よっぽど途中で席を立って帰ろうかって思ったの」
彼女は月に1回の排卵時にクリニックを訪ねて採卵すればいいだろう、と安易に考えていた。しかし、実際は厳しい健康管理を要求され、頻繁に健康チェックを受けさせられた上、”仕事”中の性交渉を禁じられていた。また、受胎調整ピルをはじめ数種類の薬を定期的に飲むように指示されたり、排卵誘発剤を注射されるなど、さまざまな”治療”を受けた。卵子バンクに登録してから1ヵ月半後最初の排卵日を迎えた。「体がデカくて、おっかない顔をした米国人医師が鋭く尖った針を手に現われたのを見て、思わずゾーッとしちゃったのね。しかも、その医師が『私は何百回も採卵を経験しているベテラン中のベテランですが、万が一、この針を間違って刺してしまうことがあるかもしれません』とか、『卵子の提供技術はスタートしたばかりであり、きちんとした理論や成果はいまだ確立しておりません。将来ドナーに何らかの悪影響が出ないとは言い切れません』なんてことを言い出したんで『おいおい、ちょっと待てよ。そんな話は聞いてないわよ』ってパニクっちゃって…」これは医師による最終段階のインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)であったのだが、智恵美はこの時、初めて事態の大きさを痛感して不安になり、診察室内で泣きだしたのだ。
心臓移植を受けた患者は生後12日、体重2.2キロの女児で名前は「ベビー・フェイ」。実名は両親の希望で伏せられ、病院側がマスコミに公表した名前である。誕生時から心臓に異常があり、心臓の左心室が半分しかないため、血液をうまく体内に送りだすことができないという難病で同じ障害を持つ乳児の大半が生後2週間以内に死亡している。生後6日目に同センターに送られてきたフェイもほとんど死亡していたが、心臓以外の臓器が正常だったことから病院側は心臓移植すれば助かると判断。ロマリンダ大学で飼育されていた6頭のヒヒのうち、生後6カ月の1頭から心臓を移植することを決めたのだ。フェイの手術時点で霊長類からの心臓移植は既に4回実施されていた。64年に米国のミシシッピー大学でチンパンジーの心臓が移植されたのを皮切りに、69年にフランスでチンパンジーからの心臓移植、77年には心臓移植の権威として知られる南アフリカの医学博士、クリスチャン・バーナードがヒヒとチンパンジーから心臓移植を実施した。ただ、これらの手術はどのケースとも患者が成人であり、サル類の心臓が患者の血流を受け容れるには小さすぎたため、一人が3日半生存したほかは1日以内で死亡していた。フェイの手術は見事成功したが結局20日後に死亡した。
ヒトのES細胞に関するライセンスを取得したジェロン社。99年12月になって2つの衝撃的な事実が発覚した。1点目はジェロン社が密かに、人間の胎児のクローン実験を行っていたという事実がある。2点目は米国マサチューセッツ州ウースターにある別のベンチャー企業『アドバンスド・セル・セラピューティック』社が、人間と牛を掛け合わせた動物の胎児を作る実験を進めていたことだ。ジェロン社はクローン実験の事実を認めた上で、「胎児クローンの目的は胎児のES細胞を取り出すことであり、そこからパーキンソン病や糖尿病といった遺伝病の治療法を探りだすための実験だった。決して、クローン胎児を新しい人間として誕生させる考えは無かった」と弁明した。
クローン胚の移植に成功したケースを見ても、その9割は流産し、残る1割もほとんどの胎児が大きくなりすぎたり、血管や肺機能の異常などが発生し、誕生直後に死亡する。ドリー(クローン羊)は277回も失敗した末たった1回成功したに過ぎない。しかもクローン動物の97%に奇形が見られ、これらの失敗の原因はいまだに判明しておらず、異常を発見しても克服する方法が無いのが現状だ。アンティノリは動物実験の成功を強調しているが、あの異常に高い成功率は不可解でとても信じられない。現段階では人間のクローン化など、まさに殺人行為に等しい」

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