金権選挙を支えるPAC 米国政治はPACに牛耳られている
政治家の悩みは選挙に金がかかり過ぎることである。だから政治献金はロビイングの有力な武器になる。そこで調べたら、1990年選挙で一番政治献金額が増加した政治活動委員会(PAC)は、保険業界であった。前年比94万ドル増の450万ドルもの大金を議員たちに配ったことになる。なぜか。保険業界は80億ドルの負担増の税金問題を抱え、軽減措置を求めるロビイングの必要に迫られていたからだ。実際税制を担当する下院歳入委員会所属の13議員にそれぞれ5万ドル以上の献金を行っている。
そもそもPACは連邦議会選挙や大統領選挙運動を取り締まる「連邦選挙キャンペーン法(EECA)」にもとづく産物である。1971年に制定された連邦選挙キャンペーン法は、企業や労働組合による選挙キャンペーン用の寄付集め組織の、結成・運営を許可した。ただし、政府と契約関係にある企業とか団体にはPAC設立を禁止した。1974年になって法律改正が実施された。企業のPAC結成許可条件を緩和したのである。しかし、ウォーターゲート事件の結果、政治浄化の潮流が表面化して、政治献金のルール自体には厳格な規制が要求された。たとえば、PACによる寄付は、寄付の総額に制限を設けられていないが、予備選・本選挙通して1人当たり5000ドルが上限と決められている。政党に対しては15,000ドルが上限と規定された。
米議会にはユダヤ系議員が下院で25名、上院で5名存在している。とくにニューヨークに住むユダヤ系米人はイスラエルの人口より多く、ニューヨーク州選出下院議員3名の約4人に1人がユダヤ人である。さらにユダヤ系で無くても親イスラエル議員も多数活躍している。先程のAIPACのリーブスは言う。「ユダヤ系米人は650万人でも、親イスラエルのキリスト教シオニスト派は数千万人にのぼり、巨大な票田を有するのだ。彼らこそ選挙区ごとに組織した草の根ロビイングの実働部隊、支持母体なのである。だから、一般議員は、親イスラエル候補と対決する選挙が恐い。」 日本人は、ユダヤ人のみをイスラエル・ロビーの先兵ととらえてきたが、とんだ間違いであった。彼の指摘からキリスト教シンパがその数倍も存在するという、パワーの源泉を見逃していたことに気付いた。
アラブ側はサウジロビーが最も活発なのだが、アラブロビーと一口と言ってもピンからキリまであり、ワシントンを舞台にイスラエル・ロビーと一進一退をくり返して来た。その天王山が1978年のF15新鋭ジェット戦闘機購入問題であった。サウジアラビアが西側向けの石油安定供給を続ける見返りに要望した。F15の輸出を米政府が許可しようとした際、それを察知したイスラエル・ロビーが議会で反対キャンペーンをはったのである。武器輸出は議会の承認を必要とするから、上院がいつも攻防の戦場と化す。1981年のAWACS(早期警戒管制機)購入についても泥仕合の様相を呈した。サウジ・ロビーはフレッド・ダットン元ケネディ大統領補佐官、イスラエル・ロビーにより落選の憂き目にあったフルブライト元上院外交委員長、ワシントン最大手のPR会社で強力なレーガン人脈を売り物とするグレイ・アンド・カンパニー、さらにホルトン元バージニア州知事など、豪華メンバーで組織された。
彼らは石油を武器に、対レーガン政権、議会攻略に猛進した。切り込み隊長役ロビイストであるクロフォード・クックには契約時10万ドル、2ヶ月間のロビー報酬として65,000ドルがサウジアラビア政府から支払われた。加えてサウジアラビア王族のサルタン、ファイサル、ゴサイビ三王子らをワシントンに派遣して、王室ロビー外交までも展開したのだ。王子たちは欧米の一流大学で教育を受けており、ワシントンではホテルにカンヅメになり、グライ・アンド・カンパニー社コンサルタントから手取り足取りのロビイング・テクニックを教授された。アメリカン・ビジネスメンズ・グループ・オブ・リヤドに参加した米大企業も、ロビイングに協力した。このグループは、サウジアラビアとビジネスを行っている米大企業で構成され、石油のアラムコ社や大手建設エンジニアリング会社のべクテル社も有力メンバーに含まれる。当時のレーガン政権では、大統領おひざ元のサンフランシスコに本社を構えるべクテル社経営陣だったワインバーガー副社長が国防長官、シュルツ社長が国務長官にそれぞれ天上っている。
> 結局いつも行きつく、アメリカのタブー。未公開会社形式の軍産複合体。サウジアラムコとべクテル出ましたね。
反共イデオロギーを看板にアメリカ政界に浸透したチャイナ・ロビーは宋一族が中心となって活動した。宋一族は孫文や蒋介石、さらに中国銀行頭取などと血縁を結び華麗な閨閥を形成する。彼らの目標は北京の中京政府の国際的承認の阻止、ならびにアメリカからの軍事援助の確保である。1960年代終わり頃から、ベトナム戦争、米対中ソ関係の視点から、中国の重要性は看過すべきでないと言った世論が形成され始める。米国民の支持も、国連での中国代表権支持の潮流に呼応して、台湾擁護から中国の国際社会復帰にシフトしていった。
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