今まで数行の短編小説をご紹介してまいりましたが、今回は数ページの短編小説を書いてみました
(実は、2年ほど前に完成していたが、発表の機会も修正もなく・・・無駄に温めてました)。
読者の皆様のお好みに合うかどうかわかりませんが、ご一読いただければ幸いでございます。
SFというほどのロマンはないのですが、国家とはどうあるべきか、そして国家を形成する民はどうある
べきかを問うた小説に仕立てたつもりです。

201X年、その経済大国は、積み重なる国債金利負担にあえいでいた。
この金利を背負っていくのは、未来の人、すなわち現在の子供である。
ゆえに、優秀な人々によって未来が構成されなければ国家存亡の危機にあるというプロパガンダのもと
「諸悪の根源は、一夫一婦制にある。優秀な遺伝子を持つ人が多数の畑に種をまけるよう
多夫多妻制を導入する。」という優性の法則を重視した国家戦略がぶちあげられた。
一夫多妻制が原案だったが、男女平等の精神のもと、実際に国会を通ったのは多夫多妻制であった。
ところが、1年後の重婚申請件数は惨憺たる結果で、1億人を超える人口を持ちながら、
わずか200件、総人数1000人足らずであった。
ほとんどの申請者は、愛人という日陰の存在として、昔から存在していた人であり、優性の法則に
則った国家戦略とは程遠いものであった

後日談として、発達しなかった理由は以下のように分析されている。
その国は、自由主義・自由競争経済と言いながら、激しい累進課税を国民に強い、富の局在化が
ほとんど存在しない世界で稀に見る真・共産主義国家であったため、経済的に一人で多数の妻の
面倒を見られる男が少なかったことが原因とされている。
しかし、財源を減らすことができなかった政府筋は、後の世に言う「不可避の悪法」である
「夫婦間の交配を禁じ、種子バンク経由受胎の子供にのみ、納税者番号を与え、納税者番号を持たない
人間は、ありとあらゆる社会活動から締め出す」という強行政策を可決させた。
社会活動として封じられたのは、健康保険・義務教育・パスポート・企業就職・銀行口座開設などであった。
その国は島国で、かつ、遠くの大国にしっぽを振り、近隣諸国に差別的な態度を取っていたため、船による
密出国は成功したとしても受入側の密入国がかなり難しくパスポート封じは有効な策となった。
続く・・・
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