タイのチェンマイを出国してからシンガポール、香港、広州、香港、羅胡、香港、羅胡(繰り返し・・・w)と1週間で4ヶ国、国境越えを2日に1回している感じだ。パスポートのスタンプ(出入国記録)が、アジア一国一愛人構想の稼働状況を物語っている。人民元売却計画ステージ2、本格稼動である。
いきなりつまづいたw 紅磡(ホンハム)駅からKCRで移動していたら落馬洲(Lok Ma Chau)に着いてしまった。確かにKCRは上水(Sheung Shui)から行き先は分岐して羅胡と落馬洲に分かれているが、今まで意識することないほどに羅胡行きが多かったため、落馬洲直行は無いかと思っていたのだが、直行あります。上水まで戻って羅胡に。さらに羅胡のイミグレで65歳以上専用レーンに並んでしまい、また並び直し。
気を取り直して、1時間だけマッサいこ。70RMBだし。私が取引している銀行から通りを隔てたところにマッサがあるんです。羅胡駅の周りにはあまり信号がありません。車の運転手と絶妙の間合いを読みながら横断します。都会なのに信号が無い原始的な環境は、古きよきアジアを感じ、台車を引きながら器用に道路を横断する中国の人民がコミカルでアジア的です。
私が取引している銀行の支店はとても小さくブースが3つ、稼動は2名の銀行員で回しています。外資系銀行なので英語が通じるのが非常に楽で、私の担当は化粧をほとんどしていない若い真面目な中国の娘さん風の銀行員ですw 一日引出限度額50,000RMBを大きく上回る引き落としを宣言予約した私は、彼女に覚えられており、「こちらどうぞ」みたいなジェスチャーもあり、引き落としは実にスムーズです。中国元の最高紙幣が100元(現在約1700円相当)のため、札束1つが17万円の価値しかありません。なのでさらに札束が10個まとまった単位があり、私はそれを札竿と呼ぶことにする。札竿一つでわずかに170万円。大変でしょw
中国人は札竿10個をトランクに入れて香港に逃げてきたりするのですが、中国のイミグレは怖そうなので、私はそのリスクを取らず、小さな鞄に入る程度の数の札竿を鞄に突っ込みます。法的に許されている中国元の持出金額は20,000元です。広東省は中国の中でも中央(北京)に対して独立性が強く、昔から交易が盛んだったことから関税に寛容です(厳しく取り締まると貿易が減るという省益を優先し、管理が緩い傾向にあります)。というわけで日本の税関の方が厳しいのですが、なにせ中国なので共産党と国家権力は絶大ですから、「持ち出しは20,000元までだよ。ダメだよーこんなに持ち出ししちゃ。君は友達だから逮捕しないけど、超過分はここに置いていきなさい。」と2-3人の入国管理官に囲まれて警棒片手に言われたら、逆らえないという怖さがありますw
皆さんは、送金とか株取引とかやっていると思いますが、円やドルのようなFree Float通貨の場合、その金額の札束や札竿を実際に手にしたり見たりすることは通常ありませんよね? 私もそうなので、実際に目にするお金は、タイ・インドネシア・フィリピンなどでブイブイ1ヶ月遊ぶ時の遊び代程度が普段見る大きなお金ですが、それでも札束一つにもならないか、札束1~2個程度です。札束1個程度でもそれを持って東南アジア・エマージングを歩くのはあまり気分の良いものではありません。深圳の羅胡は十分に都会なのですが、香港から来ると、街行く人の顔や服が貧しそうな人が多く、チベットの民族(インド系っぽい顔をした人たち)が胡桃や杏子、レーズンを道端で売っているという牧歌的な風景もあります。レストランも中国ドメばかりで、マクドナルド・KFC・スターバックスなどの巨大米国チェーンは見えるものの、日本食の看板や日本語はほとんど見受けられません。つまり何が言いたいかというと、札束以上の量の現金、札竿を持って歩くには極めて不向きな風景と環境なのですよw 先進国ではあまり見ることが無い札竿並みの現金が登場するのもアジア・エマージングの怪しく魅力的な部分ではあります。
ユーロマネー、通貨のEURではなく海外にある通貨を自国内にある通貨と区別した呼び方です。私はユーロマネーは通貨としてのEURと混同しやすいのでユーロマネー=オフショア、自国内通貨=オンショアと呼ぶことにしています。一般に持ち出し制限が無い先進国通貨(JPY、USD、EURなど)は、インターネットによる銀行送金で事実上無制限に送金することができます。例えば1億円をアメリカに送金したとしても、10個の日本円の札竿がアメリカに空輸されるわけではなく、コルレスバンク上の勘定が書き換わるだけ(名義・所在変更)のことです。札竿という現物を伴わない=コンピューター上の数値というのがオフショアマネーの特徴です。
しかし、時折G7カレンシーでも、それゆえの”歪”のような現象が起こります。北朝鮮・イラン・シリアなどの国家のドル資金の凍結が何度も繰り返されているわけですが、このような措置は、札竿という現物を伴う現金には当然ながら無効です。オフショア・ドルの場合は、Fedwireに登録されているイラン政府持ち分と思われる口座の数値を動かせなくするだけで、凍結が有効になるのです。あるいは、スイスフランがマイナス金利というのもオフショアスイスフランだから取れる措置なのです。オンショアマネーに対してマイナス金利を課す事も原理的には可能ですが、それを断行すれば民はたちどころに銀行から札竿を引き落とし、マイナスの金利がつかない現金保有をしはじめます。これは銀行という社会インフラの消滅になり、オンショアマネーに対してマイナス金利を課すのは、金融システムの崩壊を招くのでできないのです。
エマージング・アジア通貨に話を移します。タイバーツはオフショア・バーツが存在するアジアの通貨ですが(アジア通貨では珍しいんですけどねw)それでも、資本規制はやはりオフショア・バーツのみに適応され、オフショア・バーツとオンショア・バーツで2つの為替レートが存在していたようなこともあります。
また、香港ドル・シンガポールドル・タイバーツ以外のアジア通貨には持出規制があり、原則的に通貨をオフショアに送金することはできません。つまりユーロマネー=オフショア・マネーが存在しない通貨です。現金を空輸すればこの持出規制に対抗することができますが、オフショアマネーが存在しない通貨は、NDF(ノンデリバラブルフォワード)が最も大きなオフショアマネーレートを支配する市場であり、NDFが示唆するインプライド・オフショア金利とオンショア金利に激しい差が存在します。
忘れてはならない重要事項は、持出規制が無い先進国通貨であっても、オンショア・オフショアスプレッドが存在することです。先ほど説明したドルの資金凍結やスイスフランのマイナス金利は象徴的なG7カレンシーのオンショア・オフショアスプレッドですが、LIBORとTIBORのスプレッドは日本円にも存在し、G7カレンシーでクオートされているクロスカレンシー・スワップのベーシスもまた同様であり、また銀行などの社債で円建て債券の金利とドル建て債券の金利が日米のSWAP金利差だけでは説明付かないのも全てこの基本原理、札竿を伴うオンショア現物取引なのか、コンピュータの数値をいじるオフショア取引なのかが要因です。金利スワップ・デスクのトレーダーであっても、ベーシスの存在理由を明快に説明できない人が多いのです。試しに聞いてみてくださいw しかし、エマージング市場・エマージング通貨の原始的な状態を一度見れば、G7カレンシーでもさらに一歩深く理解することが自然にできるのです。
俺がアジアで遊んでばかりいるだと? ベーシススワップを平均回帰期待だけで何も考えずにやっているそこのスワップトレーダーに告ぐ。お前こそアジア・エマージング通貨を一度見るべきなのだよ。その上で、ベーシス・スワップをバリュエーションしてみなw
私が今やっていること、すなわち人民元売却計画ステージ2は、オンショアRMB->オフショアRMB->HKD->オフショアUSDという経路で変化を遂げ、紙幣・札竿の現物を伴う通貨の輸出が、預金封鎖を行っている中国政府の政策に対する方策であり、かつまたオンショア・オフショア・アービトラージなのです。話についてこれるか? 遊びじゃねーんだぞw
【G7 金利・国債系】
2013.08.13 オプションなんて勉強するものじゃないです。まずは債券いっときまひょ
2013.01.29 金融政策の話 2/2 ~預金と規制
2012.07.04|ウォールストリートの歴史 5/8 ~第一次世界大戦
2012.02.27|告白 元大和銀行NY支店2/2 ~トレーディング
2011.10.31: 日本国債CDSが急落
2011.10.03: 日本国債5年CDS 1.3% vs 日本国債5年モノ0.35%
2011.09.09: スイスフランの介入劇
2011.07.07: モルガンS、米インフレ期待めぐるトレーディングで損失
2011.04.18: 米国債券投資戦略のすべて3/3 ~パススルー証券
2010.02.04: 日本最大の投信「グロソブ」4兆円割れ
2009.12.01: 金利系投資からの撤退
2009.08.05: 金利をSalesに教える
2009.06.17: 暗算でやる金利計算@街頭インタビュー
2009.01.15: 株投資家から見たインフレ連動債TIPS
2008.12.25: さようならUS Strips
2007.12.17: 債券市場参加者の世界観 ~ 儲け=売値ー買値では無い
2007.12.12: 債券税制 ~これを知った上で買えるか?毎月分配
いつも楽しく読ませていただいています。
一族様のブログは毎日のように拝見しているのですが、初めてコメントさせていただきます。デリバ関連の記事は全て2度以上目を通しているのですが、まだ理解が追いついてない部分多数ですw
「札竿を伴うオンショア現物取引なのか、コンピュータの数値をいじるオフショア取引なのかが要因」
非常に奥が深い言葉ですね。クロスカレンシースワップにおけるドル円のベーシスの存在理由は邦銀のドル需要と外銀の円需要のバランスと理解していましたが、そのような側面もあるのですね。大変勉強になります。
ちなみに本稿と若干話が逸れるのですが、クロスカレンシースワップでアモチ付きの取り扱いがないのはなぜなのでしょうか?プライシングする際に何か問題が起こるのか、或いはただ単に一般的ではないからなのかがよく理解できていません。
SFさま、初の投稿ありがとうございます。
ベーシススワップの存在理由は、色々な説明があって良いので、SFさまがおっしゃっていることが一般的な説明だとは思います。
> アモチ付きの取り扱いがない
というのがどういう意味なのか、わからないのですが、業者間でクオートされないという意味ですか?
クロスカレンシーに限らず、アモチのスワップは、クオートされていないと思うのですが、今は一般的なのですか?
説明不足でしたすみません。
業者間の話ではなく、業者対顧客での話です。
例えば顧客が業者に対してアモチ付きの金利スワップをしたいといった場合、普通は対応してくれると思いますが、アモチ付きのクロスカレンシースワップは対応できないとの話を聞いたことがありまして。
対顧客は、各社、大人のご事情がおありでしょうから、一般的な話ではないですよね。ニーズが無いから標準化されていないだけだとは思いますが、セールスのヘッドにでも確認したら、もっとも確実な理由の説明を得られるのではないでしょうか。