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2013.03.14 欧州系バーゼル3対策、名前が変だよCoco Bonds
で細かく書いたが、自己資本比率に応じて資本に転化される債券。Contingent Conversion、略してCocoなのだが、実態はCapital Trigger Mandatory Conversion条項を持つ債券で、自己資本規制対策なわけだから債券というよりエクイティなのだが、年率何%という債券的なキャッシュフローを持っているため、債券扱いで、債券プレイヤーに取引されている。劣後債、永久債、転換社債、優先株は、永久債型、転換社債型(コールオプション付)、MSCB型(ストライク変動)、株式転換型(プットオプション売り型)からCocos(自己資本比率トリガー)まで様々な商品が時代とともに生まれ、
仏ソシエテ:2回目のTier1証券発行を計画
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MXKJ3Q6KLVSL01.html
などのように、ソシエテ・ジェネラル、バークレイズ、クレディ・スイス、BBVAなど欧州金融機関トップバンクが次々とTier1証券・Cocosを発行している。金利を何%というので比較される債券のような扱いだが、自己資本規制対策なので、資本性の強い商品であり、株式に転換される可能性がある債券というメザニン性=デリバティブ性が非常に魅力的である。エキゾチック・デリバティブの復活は望めないが、自己資本規制がある限り、金融機関債市場(と言いたくない自己資本だから種類株と優先株と主張したい)は不滅であり、なんかそっち関係のお仕事、ありましたら、私もやりたいんで、立候補しますw よろしく~♪


グローバル投資という観点で見ると、債券投資は意外に面白い。私は以前から繰り返し述べていることであるが、グローバルに株式市場に携わる立場の場合、カバレッジの範囲が広くなるゆえ、結果的に各市場の時価総額トップ企業を扱うことになろう。世界の株式市場の主たるトップ企業は、資源・金融・インフラ(通信・電力など)の3つで、ほとんどが占められている。この3大産業は、国家のインフラとも言える基幹産業ゆえに、独創的な商品やビジネスモデルというよりは、国家・経済の発展とともに成長するというマクロ的な要素が非常に強い。株式投資の根幹たるミクロ経済、個別企業を評価する要素は弱くなり、インデックス投資と保有理由が違いない場合が多くなり、株式投資従来の爆発的なリターンという魅力に薄い。もっとも東京電力や米国保険会社のAIGのように基幹産業であるにもかかわらず劇的な下落を演じてくれることももちろんあるのだが。
例外的にアメリカと日本の2つだけが、これに値せず、個性豊かな産業・セクターが株式市場で存在感がある。日本なら自動車産業を中心として、キャノン、ファナック、ユニクロなど、米国はさらに魅力的で、アップル、マイクロソフト、グーグル、ジョンソンアンドジョンソン、P&G、コカコーラ、ディズニーなど新興IT系企業からオールドエコノミーに至るまで実に個性的な世界のブランド企業を排出している。米国・日本以外の国家、エマージングだけでなく、イギリス・大陸ヨーロッパ、また世界の工場と呼ばれている中国でさえ、3つの基幹産業以外の産業はほとんど育っておらず、驚くほどに没個性的である。中国の時価総額ランキング、悲しいくらいに製造業は無いぞ。資源・銀行・保険・通信と顔を並べているはずだ。それ以外の企業であるバイドゥーや上海汽車が出てくるまで、ランキングページをロールダウンしなければならないほどだ。イギリスであっても同様で製薬会社が多少入り込んでいる程度である。韓国や台湾は製造業が育っているが、その他エマージング市場はトコトンまでに産業がないのは実際にランキングを見てみれば分かる。つまり、株を扱うのなら、日本市場は、外国人でも扱いやすい国際優良銘柄に多様な産業が溢れるかなり魅力的な市場と言えよう。
債券市場について話を移すと、日本国債は市場規模こそ大きいものの、参加者は限定的で、いわゆるJGB村の住人になることになる。さらに、年限は豊富にあるが、商品性が多彩とは言えず、例えば、物価連動国債、変動利付債、地方債、政府関連機関債となると、一気に市場・流動性が落ちてしまい、知的好奇心をそそられないのが日本国債市場であるw 個性豊かであるはずの社債市場に至っては、銀行ローン・間接金融主体なので、市場規模・流動性・商品性ともに寂しい限りの市場である。こういうことだとプライシングやバリュエーションなどのトレーディング機能の地位は低く、誰が持ってるか、誰が売買しているか、というセールス・ドリブンで価格決定される要素が強く、トレーディングとしての面白みや旨みがエクイティに比べて遥かに低くなる。
繰り返し述べていることではあるが、そこへ行くと転換社債は金利・クレジット・株・ボラティリティという全要素を含んだハイブリッド商品であり、かつ流動性がなかったりするとまさにプライシング・バリュエーションの世界となり、非常に面白い”デリバティブ”であることは間違いない。当ブログ読者はオプションや先物だけをデリバティブと見なす傾向が強いが、転換社債こそがデリバティブの芸術であることを忘れてはならない。転換社債はボラティリティやデリバティブ性が非常に強い債券であるが、欧州金融機関債も金融期間の自己資本規制の都合上面白い。この前、香港人にも説教したことであるが、一般事業会社の場合は、単なる資金調達コストの低減のためにボラティリティとエクイティを売るという事情なので、多彩な債券・優先株はそれほど必要としない。一方、金融機関は、時代よって変動する”自己資本規制”なるものに縛られているため、自己資本の充実のため、実に様々な方法でそれを満たそうと発行してくるのである。
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