P94 現実の構成要素の中に線形的性質や均質性を見出したことが、表音文字の新秩序の下でギリシャ人が行った「発見」であり
また彼らの感覚生活における変化であった。ギリシャ人たちはこうした視覚による認識という新しい知覚形式を芸術に表現したのだった。ローマ人たちは線形成と均質とを市民生活、および軍事活動の分野にまで押し広げた。そこから生まれたのがアーチ建築に見られる自分の視点を中心にしたアーチ型の世界、囲われた空間、もしくは視覚的な空間だった。ローマ人たちはギリシャ人の発見に何かを加えたというわけではなかった。彼らは非部族化と視覚化という同じ体験をしていたのであって、線形成を帝国という形で、均質性を市民や彫像や本の大量生産という形で拡大したのであった。仮にローマ人が今日の世界を訪れたとすれば、おそらくアメリカ合衆国をいちばん居心地よく思うであろうし、それに対しギリシャ人なら西欧社会にある「後進地域」でまだ口語文化の残る場所、アイルランドや南北戦争以前の米国南部のような場所を好んだことであろう。

デジデリウス・エラスムス,ウィリアム・アイヴィンズ「版画と視覚型コミュニケーション」、ピエトロ・アレティーノ最初のルポタージュ屋、最初のジャーナリスト。

活版印刷、人類初の大量生産。写本文化にはない著者を生み出した。

ナショナリズムと印刷、印刷の発見の影響は、16~17世紀の野蛮な宗教戦争の中に明らかに現れていた。権力をコミュニケーション産業へ使用することによって、各民族語の成立、ナショナリズムの勃興、革命、そして20世紀における新型の野蛮な暴力の行使が促進された。印刷技術が作業と生産の方法に応用されるまでナショナリズムは、その十全な幅広い発展を見ることはなかったのである。