原題でもいくつかの地域で母系制社会が残っている。中国の少数民族モソ人の社会では、男性はカネや権力より、ルックスや才能で選ばれるそうだ。子育てが、母親とその親族で行われるから、父親は子育ての能力より、遺伝的な資質で選ばれるのだろう。このような性淘汰が行われるので、モソ人はみなびっくりするような美形揃いだという。モソ人の社会では遺伝子の論理による、子どもの虐待などということは決して起こらないし、女性におかしな社会規範(浮気防止の貞操観念)が押し付けられることもないのだ。このように素晴らしい母系制社会が、なぜ現代では少数派になってしまったのだろうか。理由はもちろん戦争である。戦争で武器を持って戦うのは男だ。父系制社会では、集団の中の男はリーダーである父親の血縁者で固められている。父親と子供やその兄弟たちは血を分けた存在であり、命を懸けて自分たちの集団のために戦うのだ。相手の集団の男たちを皆殺しにしたら、新しい女が手に入る。それは遺伝子の論理からも正しいことで、戦うモチベーションが非常に高い。一方で、母系制社会では、武器を持って戦う男は、その辺をフラフラしているヒモ亭主だ。男にとっては、集団の他の男との血縁関係も明らかではない。子供は自分の子供かもしれないし、僧ではないかもしれない。こうした母系制社会の男が命を懸けて、集団のために戦うことは無い。どちらが勝つのかは火を見るより明らかだ。こうした部族同士の殺し合いが絶えなかった人間の歴史では、どう考えても母系制社会は滅ぼされるか、父系制社会にシフトする必要に迫られるのだ。だから現代でも母系制社会が残っているのは、山岳地帯や熱帯雨林の中など、主流派の人類に見つからなかった辺境の地の少数民族ばかりになっているのだ。

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