グローバリゼーションを4つの局面に分ける。
【フェーズ1:人類が地球上に広く拡散する(紀元前20万~約1万年】食料を人のいるところに移動させるより、人を食料のある所に移動させるほうが簡単だったため、生産と消費は空間的に結合していた。
【フェーズ2:グローバル経済がローカル化する(紀元前1万年~紀元1820年】農業革命が始まって食料の生産が人のいるところで行われるようになった。都市が勃興し、古代文明が生まれた。集積地の間で貿易が行われるようになったが、国内の値段は主に地域の需要と供給の状況で決まり、国際的な需給環境は関係しなかった。
【フェーズ3:ローカル経済がグローバル化する(1820~1990年頃】蒸気革命と産業革命は人類の環境全般、特に距離との関係が完全に変わった。輸送が発達すると遠く離れたところで作られたものを消費することが経済的に見合うようになった。その結果、生産パターンがシフトする。それぞれの国が「いちばん得意なことをして、それ以外のことは輸入する」ようになると国際貿易の量が飛躍的に増えた。生産は国際的に分散していたにもかかわらず、先進国の向上にミクロの集積を築いた。過去に例を見ない所得格差へとつながっていく。
【フェーズ4:工場がグローバル化する(1990年~現在】ICT革命と第二のアンバンドリング(グローバル・バリューチェーン革命)は、グローバルな知識の分布に偏りを固定化させていた制約を小さくした。北が脱工業化する一方で南の一部での国で工業化が進んだ。

考古学的な根拠が示すように前回の最温暖期にある一つの集団がアフリカを出た。およそ125,000年前のことだ。この集団はエジプトルートを通って、肥沃な三日月地帯に入った。
ヴィンセント・マコーレイがミトコンドリアDNAから得た証拠を使って、非アフリカ系の人類はすべて、55,000~85,000年ほど前、別の気温上昇期に紅海ルートでアフリカを出た小さな集団と関係していることを証明した。
40,000年前に人類がアフリカ、アジア、オーストラリアに継続して存在していたと考えられる。北ヨーロッパは35,000年前に事だった。15,000年前にアメリカ、12,000年前にパトゴニアに到達していた。

ホモサピエンス登場後の気候変動(今日との気温差、摂氏)
一番高い所で+5、寒いところで-10だが、今以上の水準は、13万年前~約11.5万年前と13000年前というわずかな期間しかない。
出所:J.Jouzel et al.,”Orbital and Millennial Antarctic Climate Variability over the Past 800,000 Years,” Science 317, no. 5839(2007):793-797. 南極ドームC氷床コア記録による。

アジアの勃興(紀元前10000~紀元前200年) 大勢の人が物理的に集中したことで同じ発明から受けられる人が増えて、イノベーションの見返りが大きくなった。
第二段階:ユーラシアの統合(紀元前200年~紀元1350年) シルクロード。
第三段階:ヨーロッパの勃興(1350~1820年) パックス・モンゴリカの下で貿易が盛んになったが、同時に意図しない効果ももたらした。黒死病(腺ペスト)のグローバリゼーションである。1350年以降の大流行はすさまじく社会を一変させることになった。黒死病はシルクロードを介して東から西へ広がり、1347年にヨーロッパに到達した。わずか3年でヨーロッパの全人口の1/4~1/2が黒死病で命を落とした。人口が激減したヨーロッパ社会は進歩したが、イスラム世界は逆に後退したのである。西ヨーロッパ諸国は封建領主の支配のもとで勢力が均衡し停滞していたが、イスラム文明は都市を中心に反映していたからだとされる。黒死病の打撃は都市部のほうが大きかった。スティーブン・ブロードベリーは「大いなる分岐を検証する」で、黒死病のもたらすインパクトがヨーロッパとイスラム世界で異なるものとなったのは、農業の種類、女性の初婚年齢、労働供給の柔軟性、国家組織の性質によるものととしている。

分水嶺となった二つ目の出来事は15世紀に訪れた。イスラム世界の細分化、明王朝による政策的な鎖国体制、コンスタンティノープルの陥落(オスマン帝国が拡大してヨーロッパとの貿易ルートが断たれた)によって、シルクロードが遮断されたのだ。鄭和のアフリカ航海など、中国の前進がヨーロッパに伝わらなくなった。

クルーグマン=ヴェナブルズ 距離が持つ2つの側面。モノを移動させる容易さ、「貿易の自由度」。アイデアを移動させる容易さ、「知識のスピルオーバーの自由度」、貿易が自由化されると産業は一つの地域に集積するようになる。たとえば国内輸送がしやすくなると経済活動は都市部に集積する傾向がある。知識のスピルオーバーの自由化をすると、産業は分散していく。

グローバル・バリューチェーンが構築されていると、売り上げと規模の問題が決める。オフショア施設をつくる多国籍企業はすでにグローバルな競争力を持っているので、グローバル・バリューチェーンのなかにいる企業にとって、需要と市場規模は重要な要因でなくなる。発展途上国が国際サプライチェーンに加わると、他国の産業基盤にタダ乗りできるようになる。そのため、すべての工程で競争力を身につけなくても、一つの工程だけで競争力を得られるようになる。

世界経済 大いなる収斂 ITがもたらす新次元のグローバリゼーション

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