20世紀に見られた経済格差の縮小は、多くの先進国で導入された著しい累進課税などの政策によって例外的に回避された現象でしかなかった、とピケティは指摘した。「経済成長に伴って経済格差は縮小する」と論じてノーベル経済学賞を受賞したサイモン・クズネッツ(1901~1985)に対する対抗理論を提示したとして、ピケティの議論は学術的評価を受けた。

20世紀はなぜ例外だったのだろうか。第一に二度の世界大戦が「総力戦」を交戦主要国に課した結果、資金調達と大衆動員の必要性に迫られた各国政府は、富裕層への課税をためらわず、社会保障を含めた社会資本の整備に邁進した。これは自由主義の原則に従った資本主義だけでは危機対応ができないという認識に基づいた、大きな政治的修正であったと言える。第二に世界大戦は19世紀資本主義によって蓄積した英米を中心とする富裕国層に対して、新興国が自らを持たざる国と表現しながら試みた挑戦としての性格を持っていた。資本主義の陥穽が生み出した世界恐慌が、世界大戦の構造的要因となったことが広く認識された。第3に19世紀以来、組織化された共産主義運動が世界各国において現実の力となっていた。先進国政府はあからさまに富裕層だけを優遇する政策は取れず、共産主義運動に対抗するためにも市場に対する国家介入をためらわず、資本主義が生み出す階級的な社会格差の是正に努めた。

「銃・病原菌・鉄ー13000年にわたる人類史の謎」ジャレド・ダイアモンドによれば、アフリカに文明が発達しなかったのは南北に大陸が伸びていたことが大きな要因であるという。なぜならユーラシア大陸では、同じ気候の下にあることなる文明圏の間で農業技術などの伝播が容易に進められ、相互影響の結果としての技術革新が次々と生まれることになったのに対して、アフリカ大陸は全く逆の条件下にあったからである。

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