何度聞いても面白い映画解説 町山智浩

映画じゃなくて漫画なんだが。

町山智浩が漫画『ザ・ワールド・イズ・マイン』を語る

この解説はなかなか神がかっていて面白い。ワールドイズマインとスカーフェイスは少なくとも見た上で聞くとなお良いだろう。

ワールド・イズ・マイン 新井英樹

という一つの漫画を語る際に、

スカーフェイス 監督:ブライアン・デ・パルマ、主演:アルパチーノ

映画中のWorld is yoursが漫画タイトルになっているほどの重要作だが、他にも

ナチュラルボーンキラーズ オリバー・ストーン
時計仕掛けのオレンジ スタンリー・キューブリック
インビジブル ポール・バーホーベン
国家 正義について プラトン
2001年宇宙の旅 スタンリー・キューブリック モノリスに触れることで、人は、人を殺すサルに。
タクシー・ドライバー 監督:マーティン・スコセッシ 主演:ロバート・デニーロ
19歳の地図 中上健次
檸檬 梶井基次郎
復讐するは我にあり 監督:今村昌平 小説:佐木隆三
世界の中心で愛を叫んだ獣 ハーラン・エリスン
脇役の名前、三隅俊也みすみとしや、映画監督の三隅研次と伊藤俊也の合体なのでは?
ペットセメタリー
シャイニング 小説として紹介しているが、スタンリー・キューブリックによる映画化も。

とまあ、すごい数の映画を絡めて、ワールドイズマインを語る。ここであげられている映画については邦画以外は私は全部見ているが、主人公の論理が、ラスコーリニコフの主張と似ている場合もある。

町山氏はドストエフスキー「罪と罰」については直接的に触れていないものの、

人はなぜ人を殺してはいけないか?

この一大テーマを題材にした映画はたくさんある。ワールドイズマインの漫画の中でも「人はなぜ人を殺してはいけないか?」という質問を総理大臣に尋ねるシーンがある

例えばニュートンの発見が、なんらかの事情の組合せによって、この発見を妨げる十人百人の生命を犠牲にしなければ、一般人類の所得となりえないとすれば、 ニュートンは自己の発見を生かすために、当然これら十人百人の生命を屠る権利をもっているわけである。ぜんたいとしてこれらの非凡人は、マホメットにしても、ナポレオンにしても、新しき律法を与えんがために旧き律法を破壊し、流血の惨をも厭わなかった意味において、すべて犯罪人といわなければならぬ——これがラスコーリコフの犯罪に対する理想的根拠なのである。

ニーチェ ツァラストラはかく語りきの超人思想とも類似している。時計仕掛けのオレンジのアレックス、タクシードライバーのトラビスが屈折した過程でたどりつく様子を映画的に表現している。

罪と罰をダイレクトに漫画化した作品もあり、日本で読んでみたが、舞台を現代日本に置き換えているので、原作原理主義者は卒倒してしまうだろう。現代日本なので、革命前夜のサンクトペテルブルグの不穏な空気や貧しさが全く無く、全体的に軽い感じの話になっているが、かなりの努力をもって原作を現代日本的表現に直したのがわかる。

落合尚之氏の才能が最もよくわかるのが、原作通りのシーンが一つあり、群衆が老いた馬を叩き殺すシーンを漫画で表現している。だが、漫画「罪と罰」では、そのシーンだけが異様なまでに暗く、浮いている。だから落合氏の表現力をもって、原作の「罪と罰」をそのまま漫画化してしまえば、革命前の不穏な空気の漫画化ができるかもしれない。

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