米国では大企業の株主が非常に短期間、つまり1年か2年で企業を売却してしまう。極端なことを言えば、株主が所有者ではなくトレーダーになってしまっている。一方で日本の問題は正反対だとガースナーは言う。日本の株主は、非常に長期に会社の株を保有する。しかも非常に目立たない株主として保有する。この正反対の状況は、どちらの場合も共通の不健全な状況を引き起こす。つまりマネジメントを適正にガバナンスする者が不在になるのである。米国のように1年で交代する株主には長期の視点で経営者を統治するインセンティブはない。一方で、長期にわたって株式を保有する日本の機関投資家の場合は、物言わぬ株主であり続けてきた結果、企業ガバナンスからは遠い存在となっている。皮肉なことに過去数年において、株主が経営陣に対して一番強い要求をつきつけてきたのは中国だったという。「中国では政府が株主だったわけです。だからそれなりに企業に対して政府がこういったことをやれと命令するアジェンダを持っていた」 それは経済的な競争力と言うよりは社会的な目的、つまり雇用に重点が置かれていた。


米国法人の経営陣のマネジメントとしての力量が不足していたのである。現地法人の経営陣がいかに経営に関してのコミットメントが低いか。経営者であるにもかかわらず、顧客に会うのに時間を使っていない。日本の経営陣の方向だけ見て仕事をしている。日本の本社にいい話をすることが彼らの仕事。これでは市場の評判は上がらない。
ありがち~♪
バイアウト・ファンドというファンド形態に可能性があると見るや、既存の金融機関がこぞってバイアウト・ファンドの組成を始めた。1990年代後半に日本の銀行や証券会社がこぞってベンチャーキャピタルを組成し始めたのと、状況は非常に酷似している。金融機関系のバイアウト・ファンドは、日本の銀行系ではみずほキャピタルや、三菱系列のフェニックスキャピタルなどが業界大手である。証券系では野村プリンシパル、日興プリンシパル、大和証券SMBCプリンシパル、三菱UFJ証券系のパレスキャピタル。日系のバイアウト・ファンドとしては、ユニゾンキャピタル、MKSパートナーズ、アドバンテッジパートナーズ、さらにグローバル・ファンドとしてKKR、ベイン、CVC、TPG、リップルウッド、もちろんカーライル・グループはこの独立系のグローバル・ファンドの一角に位置する。
ウィルコムのMBOの背景
KDDIグループの投資は、au事業に集中する必要があった。そのため旧DDIポケットに対する設備投資やマーケティング投資は最低限のものとして控えられてきた。さらにau事業とのグループ内競合を避けるためにPHS事業は主として「低速のデータ通信に限定する」ことが要望された。高速通信あくまでauの次世代携帯のウリにしたい。また音声通話は携帯電話の本来サービスであり、ここはPHSにはあまり積極的に出てきて欲しくない。このようなグループ内の事業領域調整の要請により、PHS事業は限定的な展開に甘んじることになっていた。
> グループ内競合のため、成長を望まない事業。そんなもん売れよ。
> はい、だから売りましたw
カーライルは日常の経営執行については経営者に全面的に委任するという点である。ここはテレビドラマでよく描かれるような敵対的な買収とは、事情が正反対な部分である。もともとバイアウト・ファンドが企業に投資するのは、その企業の将来の成長プランについて経営陣と完全にすり合わせができてからの話である。彼らはアクティビスト・ファンドのようにまずは独自で株を買い、株主となり、その上で株主として経営陣に対してさまざまな要求を迫るといったようなことはしない。むしろ順序は全く逆で、まずは既存経営陣と将来のプラン、ファンドと会社との役割分担等を十分に相談、協議する。彼らは経営陣の成長戦略を吟味した上でその計画に乗ることを決めたためにプライベート・エクイティで投資するのである。だからその戦略の執行は投資した時点での経営者にプライベート・エクイティは委任する。
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日本の経営陣はまだまだ経営のプロと呼ばれるほどの人は少ない。欧米のように経営を専門に学び、経営者として何社もの企業を経営し、その結果現在の地位に在るといったプロの経営者は日本にはほとんど存在していない。
【日本の企業経営】
2015.06.08 溶ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録 2/4~経営者として
2015.03.20 リクルート事件・江副浩正の真実 1/5~NTTと政界とのつながり
2014.04.09 株主総会
2013.09.20 解明・拓銀を潰した戦犯 1/4 ~破綻への道
2013.04.12 徴税権力 国税庁の研究 2/2 ~大企業
2012.04.11|財務会計基準機構加入止めない??
2010.01.21: 上場会社のあり方 
2009.12.17: 俺の恋のライバルはツワモノ揃い
2009.07.31: 角栄の逃税学2 ~逆さ合併
2009.05.01: 私のケチの定義
2009.04.07: 六本木の元社長の会見
2009.02.25: 日本の長者番付 ~金融危機の果てに変わった勢力図