1-6 第三者評価機関の能力
P.43 新株予約権のプレスリリースにて 「割当先の権利行使については、モンテカルロシミュレーションによる算定の結果・・・」

デリバティブズ・ビジネスII 三田 哉 (著) – 2015/9/12

本文中のプレスリリースは、三田さんも意味不明・解読不可能と書いているプレスリリースなので、全文引用はしない。だが、もう少しまともな会社の新株予約権のプレスリリースにおいても、第三者割当の新株予約権の価格についての正当性を説明するために、新株予約権の価格は「モンテカルロシミュレーションによる算定」で、「安全利子率X%、株価変動率Y%の想定で・・・」、などという奇怪な言葉が並んでおり、しかも、どの会社も判を押したように同じ文言で書いている。

これもネタがかぶるんだが、俺流のツッコミは既に書いている。
広報担当者必見、ストックオプションのプレスリリースのひな形を見直すべき

ここでいきなりページが飛ぶが、

2-5 アメリカンオプションの計算
P.103 時点Pと満期までの間の時点Qの3回行使可能ならば、作るべき株価の経路は、

現時点~時点P、時点Pから時点Q、時点Qから満期 まで 10,000×10,000×10,000の株価を発生させることになり・・・

とあるのだが、俺も全く同じことをブログに書いているので (ご参考までにリンクを張ると・・・)

アメリカン・オプションをモンテカルロするのが難しい理由 1/5 ~ペイオフ・アプローチ手法・モデル
アメリカン・オプションをモンテカルロするのが難しい理由 2/5 ~TREEとモンテカルロの基本構造
アメリカン・オプションをモンテカルロするのが難しい理由 3/5 ~最適行使問題

アメリカン・オプションをモンテカルロするのが難しい理由 4/5 ~バミューダンのバリュエーション

n^2個の乱数と計算が必要とされるので、n=10,000で設定してしまうと、合計で100,000,000個の乱数の生成と計算をすることになる。

ぐわーーーっ。ホントに同じこと書いてるーwww

アメリカン・オプションをモンテカルロするのが難しい理由 5/5 ~TREEのGREEKS計算

自分でも同じことを言っておきながら、三田さんが書いた時だけ指摘するのも非常に心苦しい状況ではあるがあえて書こうw そういうクラシカルにまともにやればそうなるのだが、回帰とバックワード・モンテカルロで計算するようなソフトが、第三者評価機関=大手の弁護士事務所で、標準化されているらしい。有利発行の判断、三田さんがいう所の第三者評価機関は、大会社の新株予約権の発行の場合は、大手の弁護士事務所になるだろうが、彼らは法律の専門家であって、まともに最適行使問題を解ける弁護士は居ないことが想像に難くない。

新株予約権をモンテカルロで解くというのは金融業界では一般的ではないが、弁護士先生の間で愛用されている「ソフト」では、それが標準的であり、それを我々が指摘して改善させていないのが問題だ。日本市場を飛び交う大会社の「プレスリリース」は、実に恥ずかしい状態のまま放置されている。また強引にリスクフリーやボラティリティを奇怪な日本語に置き換えているのも、読んでいるだけで身体が痒くなる。

P.111 金商法第202条について

漢字が全体の7割を占めている。なんという文章だ。どうせならば”デリバティブ”の部分を”金融行性工具(中国ではこう書くらしい)”と書いて欲しい。

この原因は、デリバティブの日本語表記が、金融派生商品という完全なる誤訳だからだ。デリバティブの漢字表記はもちろんできるが、このあまりにも現実と異なる誤訳で定着してしまったため、「使いづらい」というのが現状であろう。やはり倉都康行さん風に「金融複製技術」と言えば、デリバティブ商品なら金融複製商品だし、デリバティブ取引なら金融複製取引と表現できる。

デリバティブズ・ビジネスII