アメリカン・オプションをモンテカルロするのが難しい理由 2/5 ~Treeとモンテカルロの基本構造

では実際にBinomial Treeとモンテカルロを使い、幾何ブラウン運動を想定して、European CallのValuationをしてみよう。
解析的アプローチはいわゆるBlack-Scholes方程式で、導出も結果も、どこの教科書にも、Wikipediaにも載っているので割愛する。
Europeanは非・経路依存なので、アプローチ・方法に依らず、必要なのは満期の状態のみである。
Ⅰ.Binomial Treeによるアプローチ
Binomial-Start.png
n回時間分割したBinominal Treeの満期は、n+1個の株価が発生しており、現値S、上昇率u、下落率dとした時、
最も高い株価は、そして次に高い株価は , ,… ,
と最も低い株価まで離散的に発生している。
確率も同様に上昇確率pとして、二項係数C(n,k)を使って表現すると、
, , … ,
と対応している。
よって、n+1個の各点においてのペイオフはコールオプションであるから、Max(S(T)-X,0)のS(T)にi個目の点における離散的な株価を代入すれば、 となり、さらに確率が求まっているので、期待値が計算でき、 となる。ここでのn回時間分割のnは100~200くらいの均等分割で十分であろう。Payoffに連続性があるため、それほど細かくやらなくても良いであろう。
ちょっと気合いを入れてMIMEで書いてしまったが、これも一般的な教科書レベルで書いてある情報だ。
Ⅱ.モンテカルロによるアプローチ
モンテカルロはもっと単純で、のε部分に標準正規乱数を入れれば満期時点の株価が一つ定まる。であるから期待値はn個の乱数で株価を発生させて、各々のパスごとにペイオフを計算し、平均を取ればいいだけだ。その作業を表すと、となる。European型の場合は、n個の乱数のnだが、プレミアムだけならn=100でもそれらしい値が出る。n=10,000ならば、解析解に近く、1次微分のグリークくらいまでなら工夫しなくても問題なく出るだろう。
次は、本題のアメリカンを計算する前に、ある時刻τと満期の2回だけ行使可能なバミューダンを計算しよう。なぜバミューダンを先に考えるかと言うと
2.バミューダン・オプション(Bermudan):満期まで間、特定の複数の日で権利行使可能
で一般には満期までの間、特定の複数日でn回行使可能なオプションなのであるが、n->∞にすればアメリカンになる。しかし、現存のアメリカン・オプションはほとんどがPhysical Settle=現物決済で、Call Optionならば、行使価格Xを払うと、Q日後に株が調達されるという形がほとんどなのでn=オプション期間中の営業日とするだけで十分なのである。Cash Settle=現金決済のアメリカン・オプションというのは今まで見たことないが、知っている人がいたら教えてくれ。仮にCash Settleのアメリカンで瞬間瞬間行使可能な条件、あるいはPhysical SettleだがT+0ms(0ミリ秒)、行使した瞬間に株がセトルされるような将来が来たすれば、n->∞もある程度考慮しても良いかもしれないが、コール・オプションの行使自体が配当落ちという離散的なイベントが行使に密接に関係しているので、アメリカンは事実上n=営業日のバミューダンなのである。
数式使いすぎてて、読む気がしない? 初心者読者がそう思っているだろうと記事を短めにしてるんだ。今日の記事をよく読むと、高校生でも理解できるレベルの数式で記述してある。
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