彼は私の胸をはだけるように、いままで私がついてきた嘘を指摘しはじめた。
「あなたは絶対に中国人ではない。15年間住んだといった黒龍江省五常県を五常市と言っただろう。五常市は存在しないよ。それに五常県周辺の県を一つも挙げられなかった。あなたは中国語で「トゥンス(物心がつく)」という言葉をよく使ったが、その言葉は南方だけで使われるもので、北方の黒龍江省ではほとんど使わない。そのうえ黒龍江省五常では新聞の街頭販売が無いのに、あなたは五常に住むネーさんは街で新聞と饅頭を売っているといいつくろったね。」
続けて彼は、私が日本に居住した事実が無いと断定してその理由を指摘しはじめた。
「日本で一年間生活したのに、日本人がよく食べる海苔を見て、あなたは紙を焼いたのかととぼけただろう。また真一の家だと描いた絵も日本家屋の構造じゃなかったし、日本の町だと書いた絵も日本ではなかった。毎日炊事を担当したといったくせに石油を使ったか、ガスを使ったか、それとも煉炭を使ったか答えられなかった。あなたが11月14日に日本を出発したのなら、日本の首相が変わった事実を知っているはずなのに、それも知らなかった。竹下首相なのに、中曽根首相だと言った。決定的なのは日本で見ていたテレビの商品名を、あなたは北朝鮮製のチンダルレと答えて慌てたのを私たちは見た。日本のタクシーの運転手の座席の位置も左側だと言ったね。それでも日本で暮らしたと主張できると思うのかね」
そうか、これ、嫌味に使えるな。新聞や本を読んでそうも無い人に。「常識疑ってしまいますけど、大丈夫ですか?」は手ぬるいな。「国籍を疑ってしまいますけど、本当に日本人ですか?」 にしてみよう。場が凍りつくに違いない。
私は平壌市大同江区域東新洞で生まれましたが、母に抱かれてキューバに渡りました。外交部に勤めていた父が、キューバ大使館に転勤を命ぜられたためです。そこで妹の賢玉(ヒョンオク)と賢珠(ヒョンス)が生まれました。1967年に家族全員で帰国しました。下新人民学校4年、中新中学校5年を経て、金日成総合大学に入学して1年通いました。しかし父の「今は外国語を必要とする時代だ」という言葉に従って、1978年に平壌外国語大学の日本語科に入りなおしました。1980年3月、大学二年生であった私は、突然労働党調査部の工作員に選ばれ、家を離れることになりました。
出世コースの始まりですなぁ。最初から裕福な家庭育ちのお嬢様。
「22,3、いちばんいい年頃ですね」 私は年を言わないままにっこり笑っていると彼女はそれ以上訊かなかった。実際の年より3,4歳下に見てくれているので気分がよかったが、実際の26歳の年を考えると悲しかった。19歳で工作員に選ばれて7年という歳月がたったのを振り返ってみると空しく時がたったように思われてならなかった。
降りしきる雨、息も白い凍りつくような中、背負った背嚢を「ドサッ」と置く。
1987年平壌・・・7年の時を越えて・・・革命戦士が一人・・・覚醒した・・・

こんな感じで映画になりますよ。あなたの19歳から26歳の人生はね。一般人の7年間?大学行って就職して、ちょっとした色恋があって・・・みんな集約しちゃうとそんなもんです。空しく時がたった? そんなことはありませんよ。
逮捕後、ソウルにてクリスマス・イブ
なぜ街全体がこんなに浮き浮きとした雰囲気なのか、そのときになってやっと私は気付いた。北ではクリスマスを特別な日とは考えないし、その日が何の日であるか正確に知っている人もそれほどいないだろう。ただ、西洋ではクリスマスが祝日だというくらいしか知らない。「思った通りだ。アメリカ帝国主義者の傀儡だから、アメリカ製のお祭りを一緒に楽しむしかないのだろう。文化や風習までを支配されてしまったのか・・・」
その人たちの顔全てがここから楽しそうに見えた。私はいいようもない悲しみを感じた。みんな一つの心でつながっているのに、私一人だけ彼らと違う人間なのだ。みずから疎外された存在であることを認めざるを得なかった。
アメリカ製じゃないかも・・・、ま、いいけど。日本や韓国では、クリスマスはキリストの誕生を祝って若き男女が子作りする日です。なぜか、クリスマスが近づくと、おまたを開きやすくなるみたいですよ。あなたのおっしゃるとおり、滑稽としか言いようがありませんな。
【国家権力による搾取】
2010.10.14: 道路の権力1
2010.08.24: 中国の家計に約117兆円の隠れ収入、GDPの3割
2010.07.05: 警視庁ウラ金担当
2010.05.20: 秘録 華人財閥 ~独占権、その大いなる可能性
2009.08.14: インド独立史 ~東インド会社時代
2009.01.07: ユーゴスラヴィア現代史 ~国家崩壊への道
2008.09.24: 俺の欲しいもの
2008.09.23: 被支配階級の特権
2008.07.18: Olympic記念通貨に見る投資可能性