日本の政治制度の根幹は議院内閣制である。与党と内閣が一体となって国政を担当することにな
っている。国会と行政府のリーダーが一つになるのだから、アメリカのように議会と行政府が分立し
ている大統領に比べると、非常に強力な体制
といえるだろう。そのトップに立つ内閣総理大臣は、ほ
とんど万能に近い権力を握っているはずである。ところが、実際の首相は万能どころか”半能”の権力
さえ持っていないかのようだ。このギャップはどこから来ているか。戦後政治の特質に原因があると思
う。大戦が終わって50年弱。戦後の日本の政治は国民みんなで働いて得た財をいかに公平に国内に
分配するかということだけに終始してきた。
> Workしすぎてて怖いな。市場原理に背く好事例といえるだろう。経済一流、政治は二流。そんな
> ことない
だろう。世界で稀に見るで公平な社会が出来上がっているじゃないか。政治のおかげで。
問題はその後の政治だ。戦後の経済混乱を克服し、経済的に大きく発展したにもかかわらず、相変わ
らず財を分配するだけの政治、経済優先の政治に終始し、冷戦が終わってもそれを変えようとしない。
すなわち、戦後日本の政治は、対外政策の大枠をアメリカに任せ、国内の配分の問題に専念してきた。
そのためには強い権力は不要であり、みんながもたれあってなんとなく決めるほうが便利だった。問題
の第一は権力のいたずら分散である。制度を冷静に眺めるなら、全ての権力が総理総裁たる首相に
集中しているのだが、実際には自民党政権の権力は、自民党の権力政府の権力とに分かれてしまっ
ている。
> 年金と消費税か。民主主義を勘違いしてる。民の関心事をそのまま政治に持ち込んでどうする?
> リークアンユーの言葉を思い出せ。「我々が何が正しいかと決めます。国民がどう思うかは気にする
> 必要はありません。」
> ある男が言った。「何が正しいか、どうすべきかは私が決めます。民たる妻がどう思うかは関係ない」
日本政府の最高意思決定機関であるはずの閣議が全く形骸化している。閣議では実質的な議論は行
われず、最終決定はその前になされている。もはや閣議は儀式に過ぎない。中央官庁事務局の最高責
任者の会議である事務次官会議もかなり形骸化しており重要な意思決定の場とはいえない。ではどこで
決めているのかというと、それが明確に見えてこない。関係する事務当局がそれぞれの政策をどうすり合
わせ、誰がどこで決定したかがわからない。逆に言えば誰も責任を取らない中で政策が決まっている
である。
大久保、伊藤、原、吉田に学ぶ
近代120年の歴史の中で、注目すべきリーダーとして次の四人を挙げたい。彼らはきわめて個性的な存
在だ。それだけの周囲の意見に耳を傾ける物分りの良いリーダーを理想視しがちな日本風デモクラシー
の観念からすれば、同時代の人たちからは決して高い点数は得られなかった。そのことは4人の引き際が
はっきり物語っている。大久保と原は、強引とも言えるような政治手法を批判され、現職のままテロリズム
に倒れた。伊藤は首相をはじめ多くの新設ポストに就きながら、最後は枢密院議長に祭り上げられ挙句に
暗殺されてしまった。吉田は首相として四面楚歌の中で政治生命を失った。
> 例えて言うならば、無冠の帝王、ジェロムレバンナとアーネストホーストだね。勝とうと思ったらホースト
> のようになってしまうが、何がしたいの? プロでしょ? 客から金とってナンボ。客が判断し、客が引く。
> 客が楽しめるようにルール改正するなら、それは民主的だが、選手視点で安全・勝利を重んじてしまっ
> たらどうなる?
 大久保利通は、明治維新と廃藩置県の断行に大きな役割を果たし、太政官政府の下に内務省を建設
し初代内務卿として殖産興業をはかった。韓国に出兵すべしという征韓論に反対し、粉砕したのも大久
保だ。さらに西南戦争に勝ち抜いて中央集権国家を築き上げた。明治国家の基礎をつくったのである。
 伊藤博文は内閣制度をつくり自ら初代の内閣総理大臣となり、明治憲法を制定した。その一方では明
治国家の対外的な独立をめざして条約の改正を推進した。
 原敬は、政友会総裁として明治国家の中に政党を定着させ初の本格的政党内閣を率いて第一次大戦
後の日本の内政と外交に貢献した。
 吉田茂は、親英米派と官僚集団を権力基盤にして、GHQと取引しながら第二次大戦後の改革を進め、
講和独立を達成したのである。
彼らがこのように強力なリーダーシップを発揮できた理由は何だろうか。私は、彼らが強烈な国家意識、
つまり使命感
とそれを実現するための権力意思を持っていたことだと思う。彼らは周囲の批判を受けなが
らも自らの使命を果たすために、権力機構を完全に掌握し、実行のための体制を固めたのである。
> まとめていうと彼らの偉業は権力の集中を行ったことにあると小沢先生は
> 言っていると思うのだが、そこもうちょっと詳しく書いてくれると嬉しかった。
【国民意識と愛国心】
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