翡翠社長の仕入れとは、中国で女性を買い取って、日本に売り飛ばす・・・ とかいうヤクザめいた人ではなくて、石の仕入れです。中国でも香港と同じように忙しないのですが、ホテルにチェックインしたら即、仕入れにお出かけです。
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石ビル、宝石ビル、もっと具体的にいうと翡翠ビルまであります。歩いて5分程度の距離です。
Di Shi Fu 第十甫路(だいじゅうと読めると思うので、だいじゅうとDi Shiが音が近いのはお分かりいただけますね?)は、ショッピングモールではなく、ショッピングストリートで、日本で言うなら原宿の竹下通りのようなものです。(私は竹下通りに行ったことが無いので実際知らないんですけどねw) 北京の王府のようなものと思っていただいて良いでしょう。若者と消費の象徴のような通りは5分で通り過ぎ、翡翠社長は石ビルで仕入れ開始です。石ビルについての解説は、次の日に行く、”石市場”との対比で考えると説明しやすいので一度、ここで止めておきます。ここで電話「今、石ビル2の3F、3A91に居るからちょっと来てくれる?」とバイヤー仲間を呼び出します。インド人・中国人が呼び寄せられ、石の生産状況と末端価格、各石の市場動向、石ビルの各店の情報などが交換されます。一口にバイヤーと言っても、仕入れに強いバイヤーもいれば、販売に強いバイヤーもいて、翡翠社長は販売に強いので、買い付け・仕入れの部分では、仕入れバイヤーに助けてもらう必要があるのです。


「石ビルと石市場」を「小売と卸し」という観点で語ってみましょう。ユニクロさんの製販一体体制で取引中間コストを省くことによって価格競争力を・・・と「卸し=悪」のような論調もありますが、大資本なら真ん中抜いても大丈夫だと思いますが、零細資本の場合、卸しはやっぱり必要だということがわかりました。10億総”行商人”の中国においては、日本の小売は明朗会計ですが、中国の小売に値札は無いので、かならず交渉です。値札の有無は中国の場合、小売と卸しに差はありません。それなりに値段がする石は、見立てがきちんとできる人じゃないと買うのは危険な行為のようです。
1.立地
石ビル:広州駅からは遠いですが、第十甫路という買い物通りから徒歩3分。冷房が効いているビル。お客様には便利ですが、テナント料が上がれば価格に上乗せです。
石市場:第十甫路からタクシーで1時間75km、タクシー代片道250RMB。辺鄙な所、屋根だけついている外なのでテナント料の変動は影響が少なそうです。
2.営業時間
石ビル: 9:30~22:00。お客様の起きていらっしゃるお時間で。
石市場:3:00~10:00。一人でお店を経営している方が買い付けできる時間で
築地市場がなぜ朝早いのかわからなかったのですが、今、理解しました。
3.品揃え
石ビル: 総合的な店はほとんど無く、翡翠なら翡翠、アクアマリン、琥珀などなど、とにかく専門ブティックなので少しマニアックな小売です。
石市場: 翡翠のみw 大きさで売る翡翠と宝石化している翡翠があり、小さくても綺麗な翡翠のお値段が高い傾向にあります。研磨前の状態で売っているのもあり、研磨後にどうなるかを霧吹きで水をかけて、その変色具合で確認したり、光を当てて透かしてみたりしながら想像します。
翡翠社長、翡翠社長の友人のインド人、インド人の部下の中国人女性、私で朝5時起きで、石市場に突入です。場所が遠いため乗車拒否が多く、タクシーを捕まえるのに苦労しました。夜も明けかけた頃、到着しましたが、やってますやってます。薄暗い中明かり、翡翠が置いてある机の上だけに光が灯っています。石市場での取引を取引所取引に例えながら表現してみます。
1.気配が無い
値札はありません。大体900/1000くらいだなというバリュエーションができないと、素人が成行で出したら2000~3000くらいで付いてしまうイメージです。また乱暴にいきなり1000でビッドを出すと1200という意地悪なオファーが出てきます。オプションの場合は、1000ビッドがヒットされるはずですが、例えるならショートできない平均売買代金1000万円以下の株のようなもので、1000ビッドを叩けるのは、現物を持っていて、かつ、板を見ている数少ないホルダーだけなのです。
2.見せ玉
ビッド/オファーの900/1000の間をめぐって、売り手と買い手が様々なアクションを起こします。900でビッドを出す、別の行使価格でも800でビッドを出し、「俺は値段はわかっているぞ」をアピールしてから、910に上げる。枚数を増やす、帰るフリ・怒ったフリをして気配を一気に引く。株式市場でやると見せ玉、相場操縦の疑義ですが、先物・オプション市場と石市場はアービトラージの効きまくっているプロしかいない市場ので、このようなアクションに惑わされて、とんでもない値段が付くことはほとんどありません。
3.セータはマイナス
一日の取引の中で、市場がクロージングタイム(午前10時)に近づくと、セラーはその日のうちにポジションを解消したい気持ちが働き、売り板がぐっと厚くなってきます。成行で売り崩すような動きは見られませんが、Bid Hitくらいは引け前に散見されるようになります。
4.大量保有報告
株式市場のそれと若干性質が異なりますが、同行していたインド人は、顔がかっこよく、そこそこの量を買っていたので、買い主体として、セラーの注目が集まっています。通常、セラーが座り、バイヤーが商品を閲覧しながら動くのですが、引け直前には、バイヤーが座り、その周りにセラーが商品を持って集まってきて、「これを買わないか!」としきりに持ちかけてきます。
非常に原始的な石市場ですが、”市場取引”は見ていて楽しいです。それに比べ、オプション市場(米国も日経225も)は非常に洗練された素晴らしい市場なのだと改めて思いました。一方、洗練されすぎているので、素人でも大きな怪我はないでしょうし、真顔でバリュエーションする必要も無く、市場機能に甘えてはいけないとも思わされました。翡翠とお金と怒号が飛び交う石市場で非常にエネルギー溢れる感じの取引でしたが、私はそのインド人のバイヤーが買った総額の10倍以上の金額を、音も無く・部屋で・一人で取引しているので、金融取引も静かだけど、金額的には迫力あるなぁ(今さらですか?)と思い直しましたw
翡翠社長は5時起き石市場の買い付けの後、石ビルでさらに買い付けです。仕事なので。僕は遊びなので、「疲れたからホテル帰るわ」などとなめたことを言える立場ですw すいませんね。僕は次の日の午前中に石ビル・ショッピングにジョインします。翡翠社長は昨日買い付けた商品の受取、デポジットを引いた代金の支払い、梱包・郵送準備などをしながら、新規買い付けもやります。
翡翠社長「昨日のできた?」 店「いやまだ・・・12時まで待って」とか言われながら、石ビル内をグルグル回ります。
俺「お前この仕事してると物欲なくなるだろ?」 翡翠社長「まぁ、そうだな」 事業法人の購買部などと違い、直接現金を持って買い物。消費とはさすがに違い、気紛れで呑気なものではなく、在庫、売れ行き、利益、売れ残りリスクなどを考えながら、”買わなければならない”のですけどねw
石ビル(特に地下)は廊下が入り組んでおり、ビルの中でグルグルしているとどこに居るのか分からなくなります。トイレからの帰り道で私も迷ってしまいウロウロしている間に翡翠社長は人民元・闇両替商のネーさんとの人民元・円取引を終わらせていました。CNYJPYで16.8、マーケットプライス16.63なので約1%抜きで、私の感覚的には少し嫌悪してしまうようなレートですが、翡翠社長は到着してから寝ている時間と飯を食っている時間以外の時間はほとんど仕入れに使っているほど忙しいので、0.5%の両替レートの改善に時間を使っている暇は無いのでしょう。また石取引自体の値引き交渉で数%は価格変動してしまうのも1%未満の変動に関心が行かない理由となりましょう。単品で10%の値下げ交渉、でも全体で5品買っているので、ならせば2%の割引交渉というようなイメージです。
従来ならば人民元を売りたい私が、売り手となって0.4%くらいのスプレッドでやってあげるのが筋(円は要らないんだけど・・・)なのでしょうが、私は中国には鉄砲(RMB持たず)状態で入国でした。実は移動日が土曜日だったことと、伝統ある広州の地は、ドメが強く、金融・銀行においても私が取引している外資系(非中国ドメの意)銀行はあまりないのです。土日も営業しているドメ銀行の口座はあるのですが、ほとんどが定期預金に回っており、ATMで下ろせる残高わずかに800RMB。そして外資系銀行は、中国当局からいじめを受けており、ATMカードを作ることが許されていないという状態なので、平日に支店に行くしか下ろす方法が無いのです。逆に、中国に着いた途端に、翡翠社長から1000RMB借金するという仕事妨害状態でしたw
中国語できない・石分からない・購買力無い 状態なので、タイでは圧倒的だった存在感も中国・広州において、翡翠社長の交渉力の前では霧のようでした。シンガポールで会った時は大したこと無い翡翠社長w なのですが、さすがに中国では勝てません。中国語がわからずに悔しかった香港時代を思い出すなぁ・・・(遠い目) しかし石ビル内は中国なので、どこでも煙草も吸えるw ので待っている時間・長期戦には、もってこいです。しかし、翡翠社長曰く、広州はもはや、日本人の駐妻でも一人で買い物できる安全地域・観光領域に成り果てており、広州で石の買い付けを行い始めた10年前とは状況が異なる。石ビルのテナント料も上がり、それが石の値段に転化され、小売化しているので、もはや仕入れに来るインセンティブが無い。
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