ライツイシューとは、増資に応じる権利の発行である。もう少し細かく表現すると、有償増資に応じる権利の無償発行である。ついてこれるか?
日本市場では約25件ほどの実績がある。新株予約権系ファイナンスは、ライツイシュー、ワラント、転換社債の3種に分けて、トレースしているが、2010年タカラレーベンのライツイシューを皮切りにデビュー。その後はなりを潜めていたが、2013年に堂々復帰したので、ここで言及しておこう。
「これだけの情報や知識を公開してしまって良いのですか?」とよく聞かれるが、全然問題無い。ここで書く私の情報元は、無料で誰でも取れるものだから、情報元のありかを言及しよう。ぐぐればそんなものはすぐわかるはずなのだが、情報元のありかだけでなく、プレスリリースの見方まで公開しよう。
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1.ライツイシュー関連の情報のありか
1)企業ホームページに行く。
2)IR情報に行く
3)IRリリース、ニュース、プレスリリースなど、会社によって表記は違うが、そのあたりの単語に行く。
タイトルはどの会社も同じで、
1)「ライツ・オファリング(ノンコミットメント型/上場型新株予約権の無償割当て)に関するご説明(Q&A)」に関するお知らせ
 ライツイシューの仕組みについて説明。基本的な情報は含まれている。わかりやすく書かれているので、私の文章ではわからないという諸君はこれをチェック!
2)ライツ・オファリング(ノンコミットメント型/上場型新株予約権の無償割当て)に関するお知らせ ☆これをチェック!
 ライツイシューに関して最も詳しい説明。
3)上位株主(XXXX)による当社第X回新株予約権の行使状況に関するお知らせ
4)ライツ・オファリング(ノンコミットメント型/上場型新株予約権の無償割当て)による当社第X回新株予約権の権利行使状況(途中経過)に関するお知らせ
5)ライツ・オファリング(ノンコミットメント型/上場型新株予約権の無償割当て)による当社第X回新株予約権の権利行使結果(確定)に関するお知らせ
2)の 「ライツ・オファリング(ノンコミットメント型/上場型新株予約権の無償割当て)に関するお知らせ」の見方だが、
2-1)資金調達の目的、ライツイシューに至る経緯など。日本固有のコピペのような文章、面白くない部分。
2-2)ライツ・オファリングの内容、割当日、割当株数、行使価格、権利行使期間など、ライツの条件
2-3)ライツ・オファリングの日程 (2-2)の時間表だが、情報としては2-2に含まれる内容でしかない。
2-4)調達する資金の額及び資金の使途等 発行諸費用についても言及がある。

2.ライツイシューが株価に影響を及ぼす重要な数値
発表時の株価S円、有償増資の金額A円、発行済株式数X株、有償増資の新株数Y株
とすると、発行体企業は、最大でA円×Y株の資金調達ができる。ノンコミットメント型は全株行使が保証されていないのでこれよりも低い場合がある。日本ではコミットメント型はアイアールジャパン、日医工の2件のみで、ノンコミットメント型が主流であるが、行使率は意外に高く、平均で85%あり、多くの企業で80後半%以上の行使率だが、メガネスーパーの2回目とインフォテリアの2例だけが35%前後の低い行使率にとどまっている。
有償増資の金額A円は、現値S円に対して、平均46%、このA/SをITM率(インザマネー率、転換社債のアップ率に呼応してダウン率としたほうが言葉として適切かな?)。もっとも低い比率はフォンツHDの1回目の6%、高い比率は省電舎の68%となっている。また新株数Yは、ほとんどの場合が1対1増資、X株から自社株保有数を引いたものが主流だが、様々なパターンが存在する。
ライツイシュー割当後、ライツの権利落ち日の理論株価(これを基準に東証は制限値幅を定めている)は
権利落ち後新理論株価N=(S×X+A×Y)/(X+Y)
具体的に数値を入れるが、日本市場でもっとも標準的なライツイシューは、現値Sを100円とすると、有償増資の金額Aを50円、1株について1株割り当てる、タイプの者で、権利落ち後新理論株価N=75円となるものが多い。要は単純見れば”額面”株価が下がるので、これをもってライツイシュー乱発による希薄化と批判するには当たらない。
株式分割はライツイシューの部分集合と言える。ライツイシューは有償増資に応じる権利の無償発行だが、株式分割は無償増資に応じる権利の無償発行である。だから、1:2分割の場合、S円が100円、有償増資A円が0円(すなわち無償)、発行済株式数と新株数が等しいので、新理論株価が50円となる。1:2分割で株価が半額になったとしても、全株主平等性によって希薄化と文句を言わないのが一般的だろう。
ここまで来て、肝心な部分に初めて触れるが、ライツイシューのライツ、すなわち増資に応じる権利は、ワラント化され、上場する。

3.ライツイシューのスケジュール
1) 発行発表日
2) 権利付最終日 (発表日から数週間) どうしてもライツを受取りたくない人は、ここまでに売れば良い。
3) 取引開始日 (権利付最終日の4営業日、ライツが上場され取引所で売買可能になる)
4) 権利行使開始日 (取引開始から数週間)
5) 取引最終日 (取引開始から1ヶ月以上は大体ある)
6) 権利行使最終日 (権利行使開始日から1ヶ月以上大体ある)
権利付最終日の価格をS、取引開始日は、権利落ち後新理論株価Nを基準値に、株は取引されるので、ライツの値段Wとする。理論ライツ価格はW=S-Nなのだが、実際には理論価格と取引価格が違うので取引価格はN(t)、W(t)と表現すると、
S < N(t)+W(t)
(上記は1株につき、1株のライツが付与される場合なので、正確には S < N(t)+W(t)・Y/X ) であれば、損しない。しかし、ライツイシューが悪者扱いされているのは、こうなっていないからである。 【個別株日本株】 2014.05.02 日本全土落下傘計画 東北編 3/4~石巻の産業
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