情報ではなく「意思決定のプロセス」が必要
「超重要プロジェクト」の検討会議が、今日も日本中で行われているでしょう。日本のスタッフは有能でよく働くので、情報はいくらでも集まります。完璧に分析された調査レポートができあがります。しかし、何も決まりません。十分すぎる情報があるのになぜなにも決まらないのでしょう? 理由は、「誰も考えていないから」です。みんな「情報を集めて分析する」作業に熱中しています。しかし意思決定のためには「どうやって結論を出すべきなのか」を先に考えることが必要なのにそのための思考を怠っているのです。プロジェクトリーダーの企画室長が指揮を取ったのは「各部門への調査作業の割り振り」にすぎません。各メンバーはそれに応じて情報を収集し、分析し、レポートにまとめ上げました。しかし、技術や米国の情報、法務や財務の分析、顧客に関する情報がばらばらに集まっても意思決定はできません。必要なのは、「どの情報がどうであればわが社はこのビジネスに進出する。どの情報がどうであれば、進出すべきで無い」という意思決定のための思考プロセスなのに、それが存在していないからです。
私たちが何かを決めるときには「情報」とは別に「意思決定のプロセス」が必要です。たとえば、ある洋服を買おうと思ったけれど価格を見て買うのをやめたとしましょう。その意思決定ができるのは、「その洋服の価格」という情報を集めたからではなく、「この質、このタイプの服に関しては、1万円以下で無いと私は買わない!」という意思決定プロセスを自分の中に持っているからです。この思考プロセスに”洋服の値段”という情報を放り込み、「これは買う、あれは買わない」と決めているのです。意思決定のプロセスを持たないまま、どれほど多くの洋服の価格情報を集めても特定の洋服を買うべきか買わないべきか、決められません。先ほどの社長直轄プロジェクトも同じです。彼らは情報ばかり集めていて、「どういう情報があれば、どんな結論を出すべきなのか?」という意思決定プロセスについて何も考えてきませんでした。だから情報が集まっても何一つ決まらないのです。

日本の企業で行われている会議の99%がこのパターンだよねw ちきりんは、厳しく「何も考えてない=意思決定のプロセスが無いから結論が出せない」と指摘している。しかし、私の見方(言い方)では少し異なる。日本人全般で見れば、確かに論理的に考えるのが苦手な民族であるのは間違いないが、優秀なビジネスマンたちは、何も考えていないわけではない。