CMS CapはVega LongだがCMS Floorはそうとは限らないのは何故か?
というのが私が問われた正式な質問だ。CMSも知らないエクイティの偏狭なセクショナリズムに侵されている諸君等のために丁寧に解説すると
CMSとはConstant Maturity SWAPで、参照金利が”SWAP Rate”のオプション
CMS CapはMax(SWAP Rate – K,0)、CMS FloorはMax(K – SWAP Rate,0)というPayoffを持つオプションである。
Caplet,Floorletと形は同じであるが、参照金利が単一期間の変動金利なのかSWAP Rateなのかが異なる点である。
Caplet: Max(r-K,0)と表記するならば
Cap: ΣMax(r-K,0)と表わされる”オプションバスケット”に対し
CMS Cap:Max(1/nΣr-K,0)と表わされる変動金利の”バスケットオプション”であり
Payer Swaption:Max(Σr-K,0)も同様にと表記できる変動金利のバスケットオプションである。
1y Cap 4% SL 10yCMS のようにクオートし、10年のスワップレートを参照した1年のオプションであり、1年後に4%を越えていたら越えていた分だけもらえるオプションでSLとはSingle Lookという意味である。
私は表題の質問に即答できなかったわけであるが、一晩寝て、朝起きた瞬間にふと思いついて、悔し紛れに返答した。(即答とは言い難い)
今、起きた瞬間思いついた。
CMSは激しいPositive Convexty。それを引き算するPayersはNegative Convextyを元来持っているため。
どや? 昨日は夜まで考えて、まだ思いつかなかった。
正解を確信している私の言わんとしていることは、絵で表記するとわかりやすいので、
cms-curve.png
であると思ったのだ。完全な間違いとは言い切れないものの、出題者の意図を理解していないことと説明力に乏しさが感じられるので、出題者の模範解答を示しておこう。
x軸のrをSWAP Rateに取った場合、CMSのPayoffは、単にSWAP RateとStrikeの差で、いわゆるPut/Callのように折れ曲がった直線的な形になる。一方、Swaptionは、DVO1(Duration)が存在し、1 into 10なら10年のSWAP、10年間にわたるCash FlowがPayoffとならば、金利r=SWAP Rateに対して、金利が上がると利益が発生するPayerはDiscountが強く効く分だけ上に凸の形となるのだが、金利が下がると利益が発生するReceiverはDiscountが弱くなり、下に凸になるのである。
CMS Capの直線的な損益曲線をPayer SwaptionでDuplicateする時は、上に凸な分ATM Swaptionだけでは足りず、OTM Swaptionを買い増す必要がある。Σ Weight(K)*Payer Swaption(K)
CMS-Cap-Payers-Swpt2.jpg
一方、CMS FloorはReceiver SwaptionでDuplicateする場合、下に凸なATM Swaptionでは多すぎるので、OTM Swaptionを売る必要がある。ATM Receiver Swaption-ΣWeight(K)*Receiver Swaption Kという売り買い交錯のSpread Option取引となり、必ずしもVega Longになるとは限らない。
CMS-Floor-Receivers-Swpt3.jpg
模範解に示されるようにSwaption主眼の立場を想定していない以上、私の解答は完全に間違っているのだが、Swaption慣性系、SwaptionこそがPut/Callのような直線的Payoffに見える慣性系においては、CMS FloorのIntrinsicは私が示したように下に凸の局面もあるだろう・・・。我ながら苦しいな・・・。
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