あるDeep Userの方より、「最近、SGP生活や歴史関連の記事が多く、株やデリバティブが少ない。
眠くならないデリバティブ講座としての役割を期待する。」
とのご指摘・激励を頂いたので、急遽Upの順番を変更して、お届けいたします。
Vanillaの話に限定すれば
Underlying,Put/Call,Strike,Maturityが定まれば一つのオプションが規定できる。
このStrikeだが、Equityでは、価格だったり、Spotに対する%で表示されることが多い。
上場モノ主体で取引されるIndex Optionは価格Strikeであることが多い。
対して、FX Optionの世界では、25Deltaとか、25RRなどと言うのが一般的な”Strike”の表示である。
StrikeはSpotに対する%ではなく、OptionのDeltaで規定される。
25DeltaとはDelta25%水準のOTMを意味する。
Equityの常識からするとなぜModel Drivenな決め方をするのだ?と不思議に思う取引習慣である。
そもそもATMの定義もSpotとするEquityに対してForwardをATMと定義するFXの世界は理論的
整合性と美しさを追求する価値観で商習慣が出来上がっている。
確かにForwardが中心値であるので、長期あるいは強いドリフトを持ったUnderlyingではSpotなど
Optionを語る上で意味を持たないと言うFXの主張は合理的である。
が、一言言っておくと、FXはVolatilityが小さいので、僅かなStrikeのズレが効くのだが、Equity
の世界において、SpotとForwardのズレなど、気にする必要が無いのである。
25Deltaの意味に話を戻すが、この商習慣には理論的背景があるに違いないと思って調べてみた。
Strike XはBlack-Sholes上のDeltaで与えられるというのだが、
Delta=N(d1), d1={ln(F/X)+σ^2t/2}/σ√t
であるから
X=Fexp{σ^2t/2 ± σ√tN*(Delta)}
N*は累積密度関数Nの逆関数。
これ、じっと見つめると
{ln(F/X)}/σ√t こそが幾何ブラウン運動下における時間やVolatilityに依らず規格化した距離であり、
Deltaはその到達確率と思ってよい。
だから、σ=15%の幾何ブラウンで、期間1Monthであれば、1σ=15%÷√12程度の分布であり、1年であれば
1σ=15%程度の分布であるから、1Monthの115%と1Yearの115%は分布的にはまったく意味が違う。
逆に、25Dは、満期に依らず、確率25%程度で到達する距離という一貫した”意味”を持っているのである。
なるほど、さすがFX。理論的に美しい商習慣であることがよくわかった。
Equity至上主義であるこの私がここで話を終わらせるはずも無いというハードパンチャーな読者諸君の
期待に答えよう。
ここからはセクショナリズムモード全開で行く。
FX信者、FI一派の読者諸君は、ここから先は気分が悪くなるから読まないことをお勧めする。
理論的整合性のない取引習慣のEquityは、FXに比べて未開なMarketと判断するべきではない。
発行済み株式数の50%を握れば、会社のOwner Shipを手に入れることができる株式が持つ価格に対し
FXや金利などの価格の絶対水準には何の意味も無い。FX、FIというのは、値段なんかどうでも良い
という価値観を持った市場参加者で構成されているから、理論的な都合を優先しているに過ぎない。
例えば、いわゆるキリ番が心理的な節目になるというのはあるだろうが、FXの世界において
AUDJPY=70円 という節目は、AUD=で取引している市場参加者にとってAUD=0.714(JPY=98なら)
という節目とは全く関係ない水準に見えているだけである。
Put/CallなどPayoffの形が似ていることから、FXとEquityのOptionは「同じようなもんだ」と勘違い
してしまうマネジメントが居るが、その本質が全く異なることが、商習慣を見ているだけでわかる。
2008.01.31: ガンマ無き者はデリバティブに非ず で以前述べたように
デリバティブの本質は、この株をいくらで買いたいか?ということにある。
(昔の記事ながら一言で良い事言ってるなと思うのは俺だけか?)
デリバティブの本義である「この株をいくら=Strike」があって、そして対応するVolatilityなのである。
この本質である「いくら」が上記の式のように、Strike=”Volatilityで与えられる変数”になるという
のはEquityの常識では考えられない。理論的整合性以前に、明確なTarget Priceを持たずに
Equityを取引するなど、本末転倒なQuoteなのである。
FX・FIの先輩方、生意気言ってすいません。だから読まないことを勧めるって書いたんすよー。
ご批判・クレーム受付中でございます。
【セクショナリズム全開系関連記事】
2009.03.18: 歯磨き粉の買い物と債券Arbitrage
2009.03.04: オタク適正テスト
2009.01.15: 株投資家から見たインフレ連動債TIPS
2008.01.31: ガンマ無き者はデリバティブに非ず
2007.12.17: 債券市場参加者の世界観 ~ 儲け=売値ー買値では無い
3 Responses to FX Optionの 25Deltaって?
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ああ、そうなんだ。
僕はてっきり為替の場合は時に恐ろしい桁数になってしまうので、口にしづらいから、という理由だと思っていました。
例えばUSとジンバブエという非常に似通った金融政策を持つ国同士の為替のオプションがあったと過程して、USの方が国のリーダーが若干イケメンだという理由だけで為替レートに大きな違いがあり、1まるまるまるまるまるまるまるまるまるまるコール買い!、とか言うとつい桁数を間違ってしまう恐れがあるからだと思っていました。
コメントありがとうございます。
FXに関しては素人ですが、ZWR(デノミしたんですね)の作為的なSpotの動きを見る限り、
Free-Floatではなさそうなので、そのような通貨はオプションが無いと思います。
可愛い可愛いベトナムドンもお洒落な水準ですが、NDFでも十分Wideなのでオプションまでは
たどり着かなさそうな雰囲気です。
中東系の本を読んだまとめなども書いたりしてます。おそらく突っ込みどころ満載なので色々と
教えていただければ幸いです。
ボラティリティ・スマイルの形状
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