上がる時と、下がる時、に分けて考えた時、株の動きはどうなっているのか、直近500日のデータを使って検証してみました。
愛する香港は、Indexの2年のHistorical Volatilityが30%を超える狂気のマーケットなわけですが、2年間のReturnも実に高い。上げ下げを考えるのに、この2年のパフォーマンスの差が入ると気持ち悪いので、
Daily Return=ln(S(t)/S(t-1))+ln(S(T)/S(0))/500
と定義し、平均Returnが0となるようにしてから、色々計算してみました。
S(t)はReturnを計算する当日の株価、S(t-1)はReturn計算日の全営業日の株価、S(0)は500営業日前の株価、S(T)は現在の株価。
数値見てよ。楽しいでしょ?と言いたいところですが、それではブログにならなそうなので、少し解説します。
アジアの指数を中心に、大所の指数、時価総額が高い株式を対象としています。
各計算項目ごと最大値は青、最小値は赤、IndexとSingleそして全体と、3つのユニバースで平均値を取り、それぞれ下部に表示しています。
Volatility:年率Volatility (500日、Daily 、Close to Close、250日営業日換算、配当落調整無)
Return :ln(S(T)/S(0))/2
MAX、MIN:一日で最大の上げと下げ。そして、その比率をMAX/MINで表現し、100%以下の場合は下げ幅の方が多いことを意味します。
HSCEI~、Indexが本当に一日で10%動いちゃった。
注目して欲しいのは、真ん中辺りのIndices Averageで、指数が市場全体の動きを表しますが、さらに指数の平均を取り、世界の平均を見ると、上げは6%、下げは7.5%ということで、下げは大きい傾向にあることがわかります。個別株で見ると傾向は薄れるものの、しっかりと存在していることがSingles AverageやAll Averageから読み取ることができます。
Average Returnは全て0になるように定義したので、上げた日と下げた日に分解して計算してみました。
すると下げ相場は、上げ相場よりも大きく動く傾向にあることがわかります。
続いて、上げた日と下げた日を素直に数えてみました。変わらずは上げに入れてみました。
上げた日は下げた日より多い。最近どの相場も上がってるから当然だよ!という批判をかわすためにDaily Returnの定義でこの効果は既に除去してあります。
つまり株式市場で、勝つ確率は50%よりも高いということです。ということから株式投資においてビギナーズラックは必然なのです。典型的なビギナーのパターンですが、自分なりに、小さくない金額で始めるので、毎日激しく動く株に恐怖を覚え、ちょっと儲けたところで売りに走る。
この素人法は、恐ろしいことに、50%以上の確率で儲かるので、マーケットは素人を引き込みやすい性質を持っているということをこのデータは示しています。
上げた日は全体の何%に相当するのかも計算してみました。All Averageの52%の意味は52%で勝てる。カジノのギャンブルではありえない、とても大きな数値です。
激しくマーケットが動いた日に限定して、同様に、上がった日の平均、下がった日の平均、上がった日の数、下がった日の数。
2σの意は、Volatility/Sqrt(250)で一日辺りのVolatilityになりますので、その2倍が2σです。
UP-DOWNの平均のRatioは96%にとどまる。体感よりも少ないです。対象は中国が多めだからバブルバイアスの影響も否めないところです。
2σ以上動いた日で、上げた日、下げた日をカウントすると、非対称性が、かなり顕著に出ています。それに加え、2σから外れるのは正規分布的に4.56%。22.8日分に相当するので、UPとDOWNを足すと明らかなFat Tailが観測できます。
計算してて、恐ろしくなりますね。株式市場は50%以上の勝率で、小さな喜びを与え、誘い込み、下がった時に全てを奪い取り、去った後には何も残らない。
8 Responses to Skewness(歪度) マーケットの非対称性
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なるほど~。
よい実証ですね。
感覚的には、「上げ相場後の下げがきつい」という感じで、非対称性はもっと顕著だと思っていました。
が、2σ以上のDaysを見ると、上がるときも結構あるんですね…、なるほど~。
あとね、素朴な質問なんだけど、何で欧州&アジアの株の下落と比較して、米国は抑えられているのかがわからないんですけど!
ナゼだー!?
Volatilityをみればわかります。米国は、Volatilityが低いMarketなんですよ。15%程度だから、1日あたり1%程度。S&P500が2%以上動く日って見かけないでしょ?一方、HSCEIが2%以内にとどまっている事は無いね。
なんでアメリカのVolが低いか。世界一の時価総額を誇るアメリカ市場は、市場の厚みが違う。前も書いたけど、ペトロチャイナが一日で16%っておかしなことだよ。何兆という時価総額が一日で消え、また復活してるわけだから。香港の時価総額はすごいけど、板は結構薄い。1億円相当をベーンって売ったら何Tickかぶち抜けるよ。
答えは「市場の厚み」か。
ん~、そしたら結構買っているやつがいるんだねー。
単に、自国以外のエクスポージャーを落としているっていう見方って変???
one of reasonかもしれないけど。
Volatility市場の厚みもあると思うよ。Impliedが15%(VIXは20%後半だが)だとしたら、それ以上で、ぶれるとOption Longがエライ儲かるから、下がったら買い、上がったら売りの向きでオーダーが出やすいでしょう。自国以外のエクスポージャー?ごめん、ちょっと意味がわからないなー。追加でコメントいただけると助かります。
追加コメント遅れました。
ほんとにボラティリティーが大きな理由なのかなーと思ったりしました。
単純に、米国の投資家が外国株の比率を下げていて、それが理由なのかなーっていうことです。。。
米国債市場はボラ高いですよ~(笑)。
アメリカが”1day”のDownsideが小さいということを、「米国以外が売られている」とする説明は不適と考えています。
一つは、表の左から3番目のMAX(Upside)を見てください。アメリカと比較した場合どの市場もUpsideが大きいです。すなわちアジア市場は資金吸収力が弱く、動き易い。
さらに、左から2番目のReturnは、2年間の年率パフォーマンスです。これで分かるのは、米国は日本除くアジア各国よりパフォーマンスが悪いのです。アジア市場は売られているのではなく、むしろ買われていることを示しています。
ここで私が書いているのは日々のReturnの最大値です。
1月25日の記事のグラフと比較していただくと分かりますが、25日は年初来Returnを書いているので、これを見て、「米国以外の新興市場は売られた」というのは間違っていないと思います。
説明ありがとうございます。
最後の所で言及されているように、投稿内容とコメントの質問が合致していないですね。失礼しました。端っから、年初来のことを指していました。気をつけます〜。
MAX、MIN:一日で最大の上げと下げ。
とは書いたもののよく読まないとわからないっすね。失礼しました。
最初にDailyベースの値動きと強調しておくべきでした。