債権者取消権とはなにか これは詐害行為取消権とも呼ばれます。この権利は、債務者がした財産の処分行為が債権者を害する結果となる場合、債権者がその行為を取り消すことができるものです。取り消しがあると債務者の責任財産から逸出していったため、債権者がこれに強制執行をかけられなくなったものを、強制執行の対象とすることができるようになる、という効果があります。
なにが詐害行為か 従来の裁判例では、乙が不動産を処分するという行為がしばしば問題になっています。不動産はその価値が高いので、その処分は乙の責任財産を大きく減少させ、一般債権者が乙の財産に強制執行をかけたときの配当割合を低下させる可能性が強いからです。したがって、乙が動産の財産を他に十分持っていれば、不動産を一つ位処分しても必ずしも問題にならないわけです。ただし、不動産は債権者にすると強制執行しやすいという特質があるので、乙が動産を処分した場合より、詐害行為とされる可能性が高くなるということがありましょう。詐害行為は「財産権を目的とセサル法律行為」を対象とできない、とされています。しばしば判例に登場するのは、財産状態の悪化した夫が妻と離婚し、乏しい財産を妻に離婚に伴う財産分与あるいは慰謝料として与えてしまうことが詐害行為になるか、という問題です。財産分与の方は、名義は夫でも、婚姻生活中夫婦が協力して築き上げたものは実質的には夫婦の共有であり、離婚に際しそれを清算するにすぎないと見れば、夫の債権者としては妻の持ち分をあてにすることは元来できなかったのだから、詐害行為は成立しない、ただそれに仮託して過大に財産を分与した時にのみ問題になるにすぎない、ということになります。慰謝料の方は右のような説明はしにくいと思いますが、判例はやはり離婚の事情にてらして相当な額であれば詐害行為にならない、としています。
「離婚すんだよ離婚! それから慰謝料ガバーッと払うの。慰謝料税金かかんねーから! 俺、女を愛したらそこまでやる男だよ。」 ※あまりにも莫大なカネだとこの限りではありません。ご注意くださいw 税務署だけじゃなくて、債権者も詐害行為といういちやもんをつけてくるようですね、皆さん、記憶しておきましょうw
即決和解の申立書には、当事者間に和解が成立すると思われる理解案を添付するのが普通ですが、その和解案について事実上当事者間に了承ができているということです。そうでなければ、債権者が一方的に和解案を作って申立てても、期日に債務者がこの案に同意して和解が成立するということは、まず考えられないからです。換言すれば、即決和解という手続きは、事実上既に当事者間で合意のできた債務の弁済契約案を裁判所で調書に作るもの、ということになります。そうであると執行証書、すなわち公正証書による契約と似ていますが、公正証書とは違う点が2つあります。1は、公正証書で作られた債務名義では、債務者の財産を強制執行できるだけにすぎないところ、和解調書であると、たとえば債務者がその債務の弁済に代えてその所有する不動産の所有権を債権者に移転し、登記名義を移し、債権者に引き渡す、というような内容の両者の合意についても強制執行ができる、という点です。2は、公正証書の作成費用は(最低でも4000円であり)、その目的金額により異なるのに対し、即決和解の申立ての際に納付すべき手数料は、金額のいかんにかかわらず1500円で足りる、という点です。ただし、公正証書の場合は、文案さえしっかりできていれば、必ずしも弁護士を代理人としてその作成を嘱託しなくてもできるのに対し、即決和解は裁判所で取り進める手続きなので、やはり弁護士を依頼する必要があり、その報酬がかかることは計算しておかねばなりません。
仮差押えの申請
裁判所は、通常、債務者を呼び出してその言い分をたずねる(審尋)ということをせず、債権者の申立てだけを聞いて、仮押さえを許すかどうか決定します。これは審尋すると、債務者が財産を隠匿したり名義を変更したりしてしまう危険があるからです。その代わりに、債権者に対してはたとえば債権額の1/4位の担保を出すことを条件として仮差押えを許すのが普通です。これは本訴では債務者の主張が通り、債権者が敗訴することもないとはいえないからで、その場合、仮差押えにより財産の処分を制限された債務者がこうむった損害をこの債権者に出させておいた担保から賠償させるためなのです。なお仮差押えを申請するには、仮差押えの対象物を申請書に記載する必要があります。そのため、債権者としては、あらかじめ日ごろから、債務者の財産、ことに仮差押えをしやすい不動産の所在とか取引銀行を調べておくことが大切です。
強制執行のあらまし
(1)不動産の強制競売
不動産を売却するもの(強制売買)と売却をしないでするもの(強制管理)があります。前者は債務者の不動産の売却代金を債権者に与えるものであり、強制管理はほとんど行われていません。強制競売はその不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てます。申立てに債務名義を要します。強制競売開始決定は、債務者に送達されるとともに、所管の登記所にはその登記が嘱託されます。差押さえとは競売のために不動産の処分権を債務者から奪い、これを国家の手に移すことをいいます。
(2)強制執行と平等主義
債務名義さえ持っていれば、自分で債務者の不動産に強制執行を申立てしなくても他の債権者の申し立てた強制執行に便乗し、配当を受けることができるのです。はじめに競売の申立てをした債権者は、競売代金の配当の際、他の債権者に優先して弁済を受けられるわけではありません。
(3)無剰余競売の禁止
不動産の競売代金から競売申立てをした債権者に優先して支払われる費用や最低売却代金から控除した後、剰余がないと見込まれるときは、競売の申立ては原則として許されません。
(4)動産の強制執行
動産の詳細を債権者があらかじめ競売の申立書に差押えの目的物として列記することはできませんので、申立書には単にその所在する場所だけを記載することになります。動産の競売の申立ては、不動産のように裁判所ではなく、執行官に対してするのですが、これは現実に債務者の住所等におもむいて、債務者の占有する物を個別に選んで差押える(封印をしてあるいは差押物件標目標を貼布する)という作業の性質上、執行官が担当するのに適しているからです。
(5)債権の強制執行
債権にも色々の種類がありますが、ここでは売掛金とか銀行預金あるいは給料などの金銭債権を対象にする強制執行について説明します。差押えの対象となる債権が給料や俸給である場合は、その支払期に受ける額の3/4に相当する部分は差押えが禁止されています。ただし毎月21万円を超える給料をもらっている人であれば21万円を超える額は差押えてよいとされます。なお退職金も差押えることができますが、この場合はその額のいかんにかかわらず、その3/4を超えて差押えてはいけない、とされています。
債権回収の実務 (日経文庫) 岩城 謙二 日本経済新聞社 1987-02 |
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