冷戦の終結とソ連の崩壊により米国に敵対できる勢力は消滅し、当分の間は出現する可能性がない一方で、世界はなお不安定であり、規模の差はあれ、局地戦が多発するようになると予想された。1991年の湾岸戦争の経験が大きな影響を与えていたのはいうまでもない。ここから米国防総省は冷戦後の米軍の規模として、湾岸戦争に相当する大規模な地域紛争がほぼ同時に2箇所で発生してもそれに対応できるものとして、陸軍現役10個師団、空母12隻、空軍の現役戦闘航空団13個などの戦力構成目標値を決定している。
21世紀の米国家安全保障に関する調査委員会、1999年9月「新しい世界の到来」において、2025年までの世界に予想される傾向が14項目にわたって挙げられている。
1.米本土から敵からの攻撃に対する脆弱性が増大し、米軍の優越性だけでは米本土の防衛に十分ではなくなる。
2.情報とバイオテクノロジーの急速な進歩で、米国の安全保障に新たな脆弱部分が生まれてくる。
3.新しい技術は世界を分割すると同時に、近づけることもする。
4.先進国の安全保障は、世界の経済インフラの変化に伴って生じる脆弱性の影響を受けやすくなる。
5.今後もエネルギー問題が重要な戦略要素であり続ける。
6.あらゆる境界が不完全なものとなり、ある境界は曲折し、穴が開くようになる。
7.国家主権に対する挑戦が増大するだろうが、主権そのものの概念は残り続ける。
8.国家の分断や崩壊が起こり、周辺諸国を不安定化させる。
9.暴虐を伴う国際危機と一般大衆を狙うテロが頻発する。
10.宇宙が軍事的にきわめて重要にして、競争的な環境になる。
11.戦争の本質そのものに変化は生じない。
12.米国の情報機能は従来以上に強力な敵に直面し、優秀な情報機能をもってしても奇襲を完全に防止できないだろう。
13.米国は頻繁に軍事的介入を余儀なくされるが、それに協調するほかの国家があるという確証はなく、前方に展開している米軍の兵力は現在よりも少ない。
14.次の四半世紀において台頭してくる安全保障環境は、現在と異なる国家の軍事とその他の機能を要求するようになる。
北米防空司令部によれば米本土防空に投入できる戦闘機は25個スコードロン、約450機で、数は足りているが、それを支援する早期警戒管制機(AWACS:ボーイングE-3セントリー)と空中給油機の数が不足するという問題が生じた。米空軍には32機のE-3AWACSがあるが、常時稼動状態にあるのは24期程度で、そのうち3気は常に太平洋空軍に所属して沖縄嘉手納基地に配備されているし、他にも海外に展開している米軍部隊の支援、例えばイラクの飛行禁止空域を監視する任務にも派遣されている機体があるから、米本土の防空用に充当できる機数はさらに少なくなる。
> 日本は全世界に派遣する立場ではないにもかかわらず、4機も持っている。哨戒機も100機くらいあるんだよね? 潤沢~♪
AWACSと同様に、あるいはそれ以上に不足が指摘されたのが空中給油機であった。米本土防空のために空中戦闘哨戒に発進した戦闘機はすぐに空中給油を受け、さらに戦闘哨戒中に1~2度の給油を受ける。1日24時間態勢でこれを続けるのは大変なことで、特に給油機は戦闘機に対する給油という任務の性格上、AWACSよりも多くの数が必要とされた。AWACSも哨戒飛行の間に少なくとも1回の空中給油を受けている。これに拍車をかけたのがアフガニスタン空爆作戦であった。政治的制約からアフガニスタンの隣国に戦闘航空機部隊を展開できなかったため、航空機はアラビア海の米空母から発進する艦載機(F-14戦闘機とF/A-18戦闘攻撃機)とカブールから4000キロ離れたインド洋の中央にあるディエゴガルシア等を基地とする戦略爆撃機(B-52とB-1B)が主力とならざるを得なかった。中東地域から発進した米空軍の戦闘機、戦闘爆撃機も空爆に参加しているが、距離が遠いのと、政治的配慮から、全出撃数の10~15%でしかなかった。米空軍の空中給油機はKC-135ストラトタンカーとKC-10イクステンダーが種直である。このほかにも特殊作戦用のHC/KC-130があるが、戦闘機や爆撃機、輸送機に対する給油を行うのは前2機種で給与方式も異なる。KC-135は総数732機が調達されたものの、部隊配備開始は1957年という昔であり、2001年当時の機数は564機に減っていた。またKC-10Aは1982年と新しいが60機しか調達されず。
KC135は何度か寿命延長と改造を受けているが、100機のE型エンジンを換装するには25億ドルが必要であり、経費がかかる割に効率はよくない。全く新しい給油機を開発するとなると、時間と経費がかかる。そこで浮上したのがリース案であった。ボーイング767型機を空中給油機型に改造して製造会社であるボーイング社から年間2000万ドルでリースするというものである。
急増した生物・化学剤防護装備の調達
米軍自身の生物・化学戦(テロ)対応能力が十分かと言うとそうでもない。一般会計検査院(GAO)は2001年9月の報告書において、国防総省は十分な数の防護マスクと手袋はあるものの、交換フィルターや、防護服(フード、ブーツなども含む)などの数が不十分で、一定時間以上の生物・化学兵器攻撃には耐えられない欠陥を指摘している。防護マスクは160万個で、米軍人157万人には十分だが、マスクに使う交換用フィルターは480万セットしかなく、最初のしようと、あと1回分の交換しかできない。戦時状態を考えるなら最低720万セットは必要になる。9月11日の寺家に語、米国産業界は自発的に生物・化学防護装備の開発と生産増加を行っている。この分野で大手企業の1つであるスミス・エアロスペース社は、生物化学兵器検地装置の売上高が2001年では1億2000万ドルであったが、2002年は2-3倍に増大すると予測している。
地中探査レーダーは地雷原の探知や埋没遺跡の発見などに使われるようになって来ているが、米国のバクタール・アソシエイツ社が開発した地中新党レーダー(GPR)は、陸上、海上を問わず、最大深さ45・7メートルにある物体を3次元映像化する機能を持ち米空軍の小規模企業支援計画で研究開発資金を得た。
貫徹型爆弾の開発
米国防総省によると全世界で地価軍事施設は1万箇所もあり、そのうち、重要な攻撃対象と考えられるものだけでも1000以上あるという。さらに秘密の大量破壊兵器関係の施設があるはずで、このため米軍はCPI(拡散対抗構想、カウンター・プロウリファレイション・イニシアチブ)の一環として高い貫徹力を持つ兵器の開発に大きな優先度を置いている。米空軍のAGM-86C/D通常弾頭型空中発射巡航ミサイル(CALCM)の貫徹型弾頭にはロッキード・マーチン社が開発したBLU-116B型弾体が使われたが、米海軍のトマホーク巡航ミサイルと、2003年以後に実用化されるタクティカル・トマホーク、そしてAGM-154JSOW(統合スタンドオフ兵器)空対地ミサイルの貫徹型弾頭として採用されたのが、イギリスのBAEシステムズROディフェンス社が開発したブローチ(BROACH)という複数弾頭型である。
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