アルテミス
大女神の特性の一つである「野獣の女主人」を継承した鳥獣の守護神であり、同時に森や野原をかけめぐって狩猟をする女神でもある。もともとは多産や子どもの守り神で子を産む女性の神話は本来すべてアルテミスの神話であったとさえ言われる。性愛をめぐる立場ではアプロディテと対極に位置するが、畏怖すべき女神であるという点では官能の女神にまさるとも劣らない。「アルテミスの矢に射られる」という言い回しは女性の原因不明の突然死の比喩的表現であり、死をもたらす一面がアルテミスにあったことを暗示する。ニオベの物語では、ニオベは多くの子宝に恵まれたことを自慢し、アルテミスとアポロンの二柱の神しか産まなかったレトより自分の方が子どもの数で勝っていると豪語した。するとただちにアルテミスとアポロンの矢がニオベの子どもたちに次々と襲いかかり一人残らず奪い去った。ニオベは悲嘆のあまり、涙を流し続ける石になったという。
アテナ
アテナイの守護神の地位をめぐる海の神ポセイドンとの覇権争いの物語において、住民に最も有益と思う贈物をすることになったとき、アテナはオリーブの木を人々に送った。ポセイドンは海の神にふさわしく、三又の鉾で地面を突いて海水を湧き出させた。あるいは馬の神でもあることから馬を出現させ、調教の技を人間に授けたとも伝えられる。この勝負では結局、オリーブの木を出現させたアテナに軍配があがった。なぜオリーブがそんなに尊重されたのかわたしたちには理解しがたい。だが、その理由は、オリーブが現実世界での経済的価値に求められる。今と同じように古代にもオリーブの実は食用に供され、その油は調理にも薬用にも用いられた。油は昔は灯りをともすために欠かせないものでもあった。それ以上にアテナイの経済を支える重要な輸出品でもあったのである。
アテナイ(Athenai)という都市名は女神の名称アテナ(Athena)の複数形であるため、英語のAthensにも複数形であることを示す-sがついている。この女神を祀る神殿は、アテナが処女(parthenos)であるがゆえに、パルテノン(Parthenon)と呼ばれる
アテナは戦いの神でもあり、英雄ベレロポンのキマイラ退治やペルセウスのメドゥサ殺害を援助したのはアテナであり、剛勇ヘラクレスの華々しい成功の陰にも常にアテナがいた。
パリスの審判
ヘラとアプロディテとアテナが争ったエピソードはパリスの審判と呼ばれ、トロイア戦争の伝説の発端となった有名な話である。中心人物は別名アレクサンドロスとも呼ばれるトロイア王子パリスで、審判でパリスが主審をつとめたのは一種の美人コンテストであった。ことの発端はトロイア戦争の英雄アキレウスの両親の結婚式にさかのぼる。ゼウスは女神テティスを追い求めていたが、テティスは自分の育ての親であるヘラをはばかってゼウスを拒んだ。ゼウスが彼女を断念したのはテティスから生まれる息子はその父親を凌ぐだろうという予言のせいであった。ゼウスは人間のペレウスという人間の男に彼女を嫁がせることにした。すべての神々がペレウスとテティスの結婚式を盛大に祝う中、ただ一人だけ華燭の宴に招かれなかった女神がいた。その名はエリス「争い」である。争いを引き起こす女神エリスは名前の通りトラブルメーカーであるから、招待されようとされまいといずれにせよ、問題を起こしたに違いないが、エリスはこれを恨み、「最も美しい女へ」と書かれた黄金の林檎を祝宴の真っ只中に投げ込んだ。この林檎をめぐって、ヘラとアプロディテとアテナは自分のものだと主張して譲らない。困り果てたゼウスは争点となっている林檎の所有を決めるためにその判定を羊飼いのパリスに委ねた。パリスはトロイア王プリアモスと王妃へ壁の子であるが、生まれて間もなく捨てられた。女神たちはそれぞれ自分に栄冠を与えるなら贈物を授けようとパリスに申し出た。ヘラは全世界を支配する王の権力を、アテナは戦争での勝利を、アプロディテは絶世の美女との結婚を彼に約束した。そしてパリスが選んだのは、世界一美しい女性ヘレネとの結婚であった。しかし彼女はすでにスパルタの王メネラオスの妻であったためにギリシアとトロイアの戦いの幕が切って落とされることになる。
女性が、「自分が一番可愛い」と思いたいのも、今も昔も変わらないと。可愛いと思いたいのよ。それが嘘でも良いんだわ。思うだけだからな。こういう記述はギリシア神話に無いのかなぁ、本当は自分が一番だと思っているくせに、他の女を褒める”嘘”をつきまくる。あの白々しさは、本当にサムイ。