憲法で保証されたロビー
合衆国憲法には「国民の政府に対して請願する権利」が明文化され、そのための行為が保証されている。「ロビー」とは、この法的根拠をよりどころにした活動といえる。憲法修正第1条は「議会は国民が平和裡に集会し、そして不公平を取り除くために政府に請願を行う権利をはく奪するような法律を制定してはならない」と回りくどい語調だが明確にロビイングの正当性を記してある。一般にロビーと言った場合、厳密な意味では「立法府である議会に対して他の人々あるいは団体を代表して、特定な目的に向けて報酬を得て、議員との直接の接触により影響を及ぼそうと働き掛けること」と解釈されている。一方広義のロビーは、立法府のみならず、行政府に対する国民からのあらゆる陳情や圧力、請願を行うことも範囲に含まれる。
戦後間もなく「連邦ロビイング規制法」が制定された。1946年に誕生したこの法律は、ロビイングの不正を阻止するために、ロビイストの行動を監視する。また彼らのロビー活動の内容を、国民に公開することを基本としている。この法律の規定によって先述の狭義のロビイストに該当する者は、上院下院それぞれの事務局長あてに登録する義務が生じている。届け出は年4回必要である。第303条が「金銭の管理」「寄付の明細書」の条項である。合計額が10ドルを超える全ての支出について、明細を記載した受療署名のある伝票を取得し、保管する義務を謳っている。報酬または何らかの対価を得て、議会による立法の可決または否決に影響を与えようとする目的の行為に従事する人物は、その目的を達成するに際し、何らかの行動を取るに先立ち、下院事務総長ならびに上院事務総長に登録し、氏名と事務所の住所、雇用主の氏名と住所、誰の利益のために活動するのか、雇用期間、報酬としての支払いを受けおよび受領すべき金額、報酬の支払いを行う人物、経費として支払いを受けるべき金額ならびに経費について、宣誓の上、文書で届けなければならない
ロビイスト産業の花形スターを当地では「スーパー・ロビイスト」と呼んでいる。スーパー・ロビイストの一人、エディ・マーイがなぜそう呼ばれるのかを紹介しよう。ロビイストの世界では、彼らの実力は一流顧客の有無からも察しが付く。その点彼が主宰するエディ・マーイ社というコンサルティング会社の顧客リストを見れば、実力のほどは納得できる。全米建設業協会、スタンダード石油、G・D・サール社(大手医薬品)など政治に直結した建設・石油・医薬品業界が経済界側のクライアントである。それに加えて、共和党全国委員会、上院共和党、下院共和党、そして共和党州知事会と、共和党のオール政治マシーンが顧客なのだ。もちろん1988年のブッシュ共和党大統領選挙対策本部も有力な顧客であった。彼が単なるロビイストでないのは、議員たち自身が彼の顧客んなっていることだ。通常ならば民間団体がロビイストに接触を依頼する先方の議員たちが彼の顧客なのだから、こんな強力なコネクションは無い。