本書の表題で、私は「革命」という言葉を用いた。ビットコインは(あるいはより広く仮想通貨は)いかなる意味で革命なのか。ハンナ・アレントと、『革命について』(On Revolution)の中で、「レボルーション」という言葉はもともとはコペルニクスの著作の表題『天体の回転について』(De Revolutionibus orbium coelestium)にあるように、天文学の用語であったことを指摘している。この言葉が意味するのは次の2つであった。第一に、その運動が人間の力では押しとどめることができないものであること。第二に、循環する周期運動であること。政治的な文脈においても「レボルーション」はこの意味で用いられていた。この言葉の政治的な意味合いが大きく変わった時点は、世界史上、正確にわかっているとアレントは言う。そのときを境に、第一の意味が強調されるようになり、第二の意味は忘れられたというのだ。その時点とは1789年7月14日の夜である。バスティーユ監獄での国王軍敗北の知らせをヴェルサイユで受けたフランス国王ルイ16世は、「これは反乱だ」と言った。その意味は事態を収拾する手段を王が持っているということである。知らせを伝えたリアンクール公爵は、直ちに王の誤りを訂正し、「これは革命です」と言った。その意味は第一の意味、つまり、一国王の力を超えるものであり、天体の運動を抑えられないのと同じように抑えられないということだ。

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フランス革命好きだから、本質ではない部分なのですが、印象してしまいました。