正確にはなんという病気か、なにしろ専門医に見せないからわからない。症状は、ナルコレプシーというに似ているが、
まァその種の神経病であろう。今、神経病は新種がどんどんできていて、いずれも原因が究明されていない。なおらな
いのなら、病名などなんだって同じである。
>そうだなぁ・・・、ホント、治らない病気を一生懸命気にしている人の気が知れないよ。
メリケンおタマ
私たちの間でメリケンおタマとか、ヤンキーおタマ、とか呼んでいるご婦人がいる。実にどうも、妖艶華麗な女性なので
あるが、残念無念彼女、そう若くない。イスラエルと日本との混血で、ユダヤ系によくある大女。美人というには貫禄が
ありすぎて抵抗があるが、大勢の人の中に居てもなんとなく眼がいく女である。
私は小声で言った。「カードは誰のもの?」
「彼女のだ」と河合は言った。「しかしヴァイスクルの新品で封を切ったぜ」
ヴァイスクルはカードを扱い慣れた人ならひと眼でわかる。世界最高のトランプ製造会社で、厳重な品質管理をし、不正
が入る余地のないことで定評がある。大分以前に、トランプ製造会社に押し入って、原版にガンをつけてくるギャング映
画があったが、つまりこのヴァイスクルのような会社があって、秘密金庫と同じくらいに警戒厳重だから、そういう発想が
生まれるのであろう。カジノはどこでもヴァイスクルの新品カードを使っている。もしガンがついていたらカジノが破産す
る原因になってしまうからである。
タネのない魔法がこの世にあるとは信じられない。カードのいかさまについてあまり深入りしたことはないが、まず容易に
考えられることに手芸があろう。カードの山の下の札を、上から出した如く見せる。或いは上の札を片手の手練で一枚、
下へはぐってしまう。しかしこの方法はカードの山を片手で持ち添えなければならない。カード遊びをする時の正式な礼儀
として、山はいつも卓上におき、一番上の札しか手を触れない
ということになっている。次にシャッフルしている時の技巧
があろう。麻雀の積み込みと同じく、シャッフルしているうちにカードの順序を覚える、或いは自分に有利に揃える。もっ
と簡単なのは、カードの山を傾けて視線に入れることも可能であろう。しかしこれも、
山を手で持ちそえなければならない。
彼女は正式に、山を卓においている。また、彼女でなく、我々がシャッフルしている場合も同じような能力を発揮する。
ではガン札だとするか。可能なのは鉛版の段階で印刷関係者が目立たない特徴をつけることである。もうひとつ、版下
屋さん、乃至は原画作成者が特徴をつけることだ。これなら厳重管理のヴァイスクルといえども、予防のしようがない。
しかし私はこれも疑問視していた。管理の眼をくぐってパスする程度の目立たない特徴が、ゲームをしている最中の遠
目にわかるだろうか。それに、彼女のカードの駆引きはプロのものであり、一時的なガン札に頼っているようにも思えない。
「とにかく、スターがなかなか出てこないな。ひょっとするとこれは流行歌や映画の世界よりも麻雀のスターを造ることが
むずかしい
のかもしれないね。」
「スター待望論ですね。」
「天才少年よいずこ。天才少女ならもっといいが」
天才を発掘することはむずかしいが、不可能事ではない。すくなくとも現在の碁将棋のように英才が集まってくる可能性
はなくはない、と私は考える。しかし、それは選手年齢が現在よりずっと下がった時点ではじめて可能になるだろう。
二十代ではもうおそい。十代の選手たちでタイトルが争わなければならない。天才というものは、旺んな生命力の裏打ち
が必要
である。ティーンエージャーが活躍するとして、そうなると、5つ6つの幼児の頃から牌を握ることが必要になってくる。
碁将棋やバレーやピアノと同じことで、個人技能のプロになろうとしたら、幼児から天才教育をほどこされなければならない。
幼少期に体で覚えるのだ。能や歌舞伎の世界でも同じである。その場合、他種目と違って、麻雀は博打だというイメージ
がマイナス条件である。幼児に博打を教える親はない
。競技麻雀も年々盛んになっているが、まだ現状のところ、博打でな
い麻雀があるということが世間にいきわたっていない。すると、かりに天才教育をほどこされた天才児が登場するとしても、
当初は、競技麻雀に理解のある家庭からであろう。競輪選手がそうであった。戦後、競輪が創設された時、圧倒的に
自転車屋さんの息子が多かった。高校の自転車部などから英才がくりこみだしたのはやっと最近である。
麻雀もデリバティブも投資も同じだな。おぎゃあと産まれたその日から、その横には既に株価があった・・・
それが投資一族の意味だ。しかし、その真髄は・・・株でもデリバティブでも博打でもない。私利私欲、見栄と栄誉を捨て、
勝つこと。勝ち続けること。 以上。 投資一族の長より。
地方競馬の、某という大馬主の馬券を呑もうというのである。草競馬だから、当然、といってもいいほど、仕組みのレース
が混ざる。草競馬は賞金が安いから、ただ賞金目的でフェアに馬を走らせていたのでは、飼葉代も怪しい。馬主は馬券
を買って儲けるより仕方ない。ところが、世の中がだんだんうるさくなって、異常な売上を監視する目が草競馬でもきびし
くなった。したがって、穴場で正規に馬券を買っていてはヤバい。そこで狙われるのが、ノミ屋なのである。パツをかませ
た馬券はノミ屋に入れる。これが少し前までの常識であった。ところがそれではノミ屋がたまらない。競馬、競輪ともに、
ここ数年、ノミ屋がつぶれることが多くなった。ノミ屋受難時代である。たいがいのノミ屋はだからその危険の無い小口
のサラリーマンを相手にすることを喜ぶ。そう面白い目も見られないのだがパツをかまされる危険が少ないからである。
そこでパツ屋の方も、危険を承知で受けてくれるノミ屋を探すことになる。
条件は出したんです。もちろん向こうからの条件も呑みました。向こうの条件は、買いに制限をしないこと
ぎょえーーん。これノミ屋の鉄則に反してるよ。下限はコストパフォーマンスの向上のため。上限は自分の懐を守る
資本力勝負にしないための基本法則でしょう。

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