友人や同僚と、いかに家賃や食費を安く済ませるかという戦略を練っている時
「彼女作って、一緒に住めば家賃半分。ご飯もタダ」というような気軽なプロポーザルがよくある。
Ah-,the most expensive one.
と私が言うと男同志の会話では、納得の沈黙が得られる。
一方、若い女性が混在する場では
「私はカネ目当てでは選ばない。あなたは本当の恋愛を知らないのだ。」
などという可愛い反論が聞かれることもある。
これに対する良い反駁はあるのだが、実際話すとサムイので、ここに記しておこう。
私は、「女はカネ目当て」とは言っていない。高くつくと言ったのだ。
体や家事を売る職業の人たちが居る。目当ての金額がはっきりしていて、彼らはその労働力を売った人
に何の感情も持ち合わせていない。いわゆるビジネスだ。ビジネスは脅しではないので、買い手も納得
しているMarket Priceで取引されているから、高いもクソもない。
だが、カネ目当てでない場合に伴う感情、感情こそが一番怖いのだよ。
子供や血気盛んな若者は怒りを暴力に訴える。一方、大人の世界はどうだろうか?
怒りの感情とカネの関係がまだわかりにくいか?
例として、今日は女性視点の小説を引用しよう。
私が結婚した理由は金銭的な目的ではない。
結婚以前から夫のことはよく知っていたので、実家での生活よりも
厳しい生活になることは想定の範囲内であった。
非常にカネに厳しい男で、その例を挙げればキリがない。
一緒に出かけた先で、ちょっとしたトラブルがあれば、千載一遇のチャンス
とばかりに”得意の交渉術”とやらの腕を奮い、相手が金銭的和解を提案
するまで、その圧力を緩めることは無かった。
自称「平和主義者」のその”交渉”を、何度も目の当たりにしていた私は、
この男からカネを取るくらいなら、自分で働いた方が楽だと思っていた。
期待していなかったとはいえ、私の結婚生活は、厳しかった。
家計の金銭的決断は、男の独断で決まり、交渉の余地は殆どなかった。
というより交渉する雰囲気になれない無言の圧力が四六時中つきまとい
「世の中一般には」という常識や”涙という女の武器”は一切通用しない
相手だった。
「女の人生80年、そのうち子育てを”できる”のはわずか3年。
3年間だけで良いから子育てに集中させて欲しい。」
と懸命に交渉し、
「飯は作らなくて良いから金を作れ。」などと平気で言ってくる非常識な
男に対し、かろうじて形式上の主婦の座を手に入れた。
その後も、私は必死に普通の家庭を作ろうと努力し、その苦労が報われ
たのか平穏な時が流れているように思えていた。
平穏な時といえども相手が相手、男は自分で結婚することに決めたクセに、
気持ちが揺らいでいるのか”離婚してくれ騒動”は何度となくあった。
ある時、男は
順風満帆な仕事を背景に、いつもの如く傲慢な態度で語り始めた。
「俺はな�、会社も、国も、怖れてはいない。しかしだ�
ただ、一つ、思い通りにならないものがある�」
と言って私を睨みつけていた。
「離婚してくれ。」
またかよと思い、聞き流すつもりでいたが、次の台詞は目が覚めた。
「カネが必要か? お前�、一体いくら欲しいんだ?」
その時の私の気持ちが想像できるだろうか。
男のカネに対する執着心は、短くも長い結婚生活で、身に染みていた。
命の次にカネがあり、生涯、家庭や子供のことなど一度も考えてくれた
ことの無い男が、カネについて初めて言及した。
こともあろうに、その魂のカネを代償に、この私を切ろうとしているのだ。
それは今まで聞いたことのある”感情の「離婚してくれ」”ではなく、
男の”本気の「離婚してくれ」”を意味していた。
命に次に大事なのは、カネではなく、この私を人生史上から消すこと
と宣言されたようなもので、私の人生史上最大の屈辱だった。
小説 私はカネ目当てじゃない ~怒りの代償 より引用
おっと、長いな。この小説。
とまぁ、こんな感じで怒り爆発させちゃうとさ、大人の世界の解決法
ってどうなるか若い君も想像できるだろ?
と言ってあげよう。