せっかく新しい、情報を見たのに既に頭の中にある知識を引っ張り出してきたら、新しい思考は生まれません。知識はちょっと横に置いておき、得た情報から新たに考え始めて、今まで見えていなかった結論にたどり着けるのです。
「知識」は過去!「思考」は未来!
知識が思考の邪魔をするため、誰にとっても自分が詳しい分野において斬新なアイデアを受け入れることは、よく知らない分野においてそうすることよりはるかに難しいことです。よく知らない分野であれば、革新的なアイデアを寛容に受け入れる人も、自分の専門分野については驚くほど保守的であったりします。保有する知識が多すぎて、どんなに斬新なアイデアを聞いても頭の中から引っ張り出してきた知識によって「そんなことは不可能だ、できるわけがない。」と否定してしまうからです。「詳しくなればなるほど、その分野での新しいアイデアに否定的になる」傾向が見られたら、「知識が思考を邪魔している」ことを疑ってみた方が良いでしょう。
反対に思考力のある人は、自分の専門分野においてさえ革新的で柔軟です。それは彼らが常にゼロから考えているからです。時代が変わり、世の中が変わり、新しい現象が出てきて新しい情報に触れたとき、過去の知識ではなく、目の前の情報から考えることができるかどうか。それが「考えることができる人」とできない人の分岐点です。もしくは、「時代の変化に気がつく人」と気がつかない人の違いともいえます。
ちきりんの本が、アジア一国一愛人構想の新たな一局面を言語化したな。
・アジアの動乱の収益化
・国民としての権利の買収
・高度経済成長の体感
・過去の経験や知識が通じない新興国の原始的状態を見て、そこで得た新思考を先進国市場に還流させる。New!
最初に私が気付いたのは2006年香港でアジア通貨建てのデリバティブ、NDFとオンショア・オフショアスプレッドの存在だった。持出規制があるアジア通貨はユーロ・マネー(オフショアマネー)が存在しない。通貨の取引規制で投資できない通貨ゆえ、オフショアの投機的需給だけで取引されるNDFが、その価格からインプライされるオフショア金利がマイナスになる水準で取引されていた。
実にオンショア・オフショアスプレッドで中国元は10%以上の乖離を示していたこともあった。当時のデリバティブデスクは、エキゾチックデリバティブでNDFを売り、ヘッジでオンショアレートを取るという、オンショア・オフショア・アービトラージを狙った取引をKRW、TWDで展開していた。そして、この歪みは、2008年のリーマンショック以降、信用収縮で資金需要がタイトになれば、先進国通貨においても発生し、ベーシススワップのスプレッド拡大、期先の日経フォワードの価格上昇まで引き起こしたのである。08年当時、私が06年からアジア通貨で経験していた、オンショア・オフショアの資金の分断が、先進国市場で活かされた瞬間でもあった。
ちょっといきなり普通じゃない例でついて来れないかな? ではもう少し簡単な事例。
インドネシアのジャカ1の名ゼリフ、「銀行預金は”月”に1%しか金利がつかない。」
私が言いたいことは、諸君らもプロならば、リスクフリーレートとは何か? とか 通貨の信認 を考えたことがあるだろう。そして、それは先ほどと同様にリーマンショック後には、信用収縮や操作事件を経て、LIBORとは何か?を強制的に考えさせられたであろう。先進国に慣れていると、国家の信頼性、通貨の信認などを一般国民が、改めて意識することはない。通貨の信認が無いような国家に行けば、必然的に考えなければならず、改めて、それを先進国で考えることに意義があるのである。
いかんな、なんせ真面目な性分なのでついつい市場関係に直接結び付けてしまうわけだが、原始的な状態で見た経験を先進国に持ち帰る事例は金融市場の現象に限らない。例えば、道路インフラを考えるきっかけを与えてくれたのもインドネシアだ。ジャワ島を横断する道路が一本しかない。ジャカルタ市内は道路が存在するが、異様な人口が密集しているのに、高速・高架道路の建設、信号や道路のメンテナンスにかける金がなく、ボコボコしたり穴があいている状態が散見される。ジャカルタの交通渋滞は、深刻な社会問題と言ってよい状態にある。
この状態を見て、中国の人民がなぜ国内移動をも規制されているのか? もし中国の農村部の人民が都市部に流れ込んできたら、中国の都市部は一気にジャカルタ化する。シンガポールはなぜこんなに交通の便が良いのか? 歴史がなく、市民はほとんど土地を所有しておらず(8割強国家保有)、地上げ、都市計画が思い通りにできたからである。タイのバンコクのスクンビットの渋滞は、歴史という過去の遺産が生み出した必要悪。そして、日本の道路建設は本当に無駄なのだろうか? と考えた時に、答えが変わってくると思わないか?
自分のアタマで考えよう ちきりん 良知高行 ダイヤモンド社 2011-10-28 |
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