巨艦・野村證券も動く!資産運用業界の「大淘汰」時代が始まった

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51841

フィデューシャリー・デューティーは大いに結構だが、問題の本質は、投資信託の手数料がどうのとかそういう細かいことじゃない。最もやるべきことは「健全な資本市場の形成」。それは、株屋ごときの企業倫理でも投信手数料の減額でもなく、上がり続ける株式市場の形成=キャピタルゲインの創生だ。「上がり続ける株式市場が官主導で作れるなら苦労はない!」という批判は当然だ。だが、民主導の資本主義の下で、10~20年という長期で見た場合、全体が上がってない株式市場というのは世界にあるのだろうか? ああ、中国も上がっているから民主導の資本主義下という条件は削除しても同じことだw ほぼ全ての世界中の指数がどの時期で切っても長期間では上がっているのは周知の事実であろう。

米国の個人の株の投資比率が高いのは、「投資教育が進んでいて、個人がビジネスのリスクを理解できているから」。そんなわけねぇんだ! 民が何も考えずに、株を買えるほどに、ずっと上がり続けているからだ。日本の個人が預金が好きなのは、護送船団方式で都銀は絶対潰さないし、銀行預金は預金保険機構で絶対に守るという保証を付けているからだ。もちろん、アメリカに株の損失補償なんてあるわけない。でも何十年もずっと上がっているの。指数もそうだが、オールドエコノミーの鉄板企業なども同様だ。とにかく右肩上がりで株価が上がり続けている企業がいくらでもある。日本で30年チャートが右肩上がりという条件だけでいくつある?成長率がJNJやDISやPFEに劣ろうがそれは目をつぶる。 ユニ・チャームはがんばっていると思うがね。

S&P500とTOPIXの30年のログチャートを比べればわかるが、とにかくずっと上がっているように見えるはずだ。あるいは、”アメリカの時価総額トップ企業ならば全て”、長期チャートは、リーマンショックをもろともせず、右肩上がりのはずだ。日本のトップ企業である三菱UFJFGの長期チャート見てみろ。なんだこれ?

米国の個人のフィナンシャルリテラシーが日本の個人より高いんじゃない。
米国個人「とりあえずJNJでも買っておくか」=日本個人「とりあえず銀行に入れとこ」
なのだよ。要は民の信頼の問題だ。

面白い事例を紹介しよう。俺のシンガポール時代の友人が日本に帰っている。彼は全くの株の素人で、俺のお勧め通り、シンガポールの証券会社の手数料も安く、健全な市場である米国ブルーチップのBuy&Holdを基本としていて、この7年間負けた経験がない。だから、日本で彼は素直に、「株は簡単だ。買って放っておけば普通に儲かる」と発言(2017年2月)し、周りの日本人を凍り付かせたのだ。

わかるかね? 彼は日本人だ。フィナンシャルリテラシーなんてあるわけねぇ。ただ、日本市場での経験がなく、米国市場しか知らんのだ。その彼が「株は簡単だ。買って放っておけば普通に儲かる」と言ったんだ! 正直、この発言には俺も驚いたが、これが「健全な米国の資本市場が持つ民に対する信頼」ということだ。

・民の信頼を裏切り続けた株式市場=株主を軽視してきた経緯 (いくらでも挙げられるはずだが、とりあえず)

1968年まで額面発行増資、時価・セカンダリー市場の軽視の証拠。
貯蓄から投資へ って何年言い続けているか。
グリーンメーラーではあるものの株主としての意見を述べたブーン・ピケンズが指摘した「明確な資本関係もないのにケイレツ?取引って何ですか?」という問題提起は解決しないまま放置。
経団連の会長が「企業は株主のためじゃなくて従業員にためにある」って公言しているのは、経営の姿勢として明らかに不健全。
株主との対話と言いながら、総会屋対策の名残で、6月末のある日に一斉に総会やるって、対話する気はないということ。
ROEを経営指標として株主還元いたしますって、2016年の日経新聞の一面に書いてあるのよ? 今まで何見て経営した来たのか。
ホリエモン事件以降、自主的に止めた会社があるが、親子上場、親子ねじれなど、親会社・子会社の利益相反は今も法的には放置。

・10~20年という長期で見た場合、全体が上がってない株式市場というのは世界にあるのだろうか?

今の株式時価総額はバブル期の最高時価総額を越えたこともあるレベルなのに、時価総額加重で計算されるTOPIXはなぜ下がっているの?
その犯人は、1992年計算開始、1000を基準とした時価総額加重指数の業種別指数の推移を見れば明らかだ。答えは銀行。銀行が合併だ、増資だ繰り返して、株主リターンを殺して、今の時価総額を維持しているのがよくわかる。ただ、それは銀行だけが悪者なのか?
弱肉強食の自然淘汰を隠し、倒産は悪、ゾンビ企業をもたれあいで、生き延びさせるために銀行に融資させる。その体質が全体に影響している。

この「父子の隠し合い」を発生させた原因は、工業化と高度経済成長下において核家族化するなかで、「企業は従業員にとっての家」の役割になった故に、従業員と企業の関係が冷たい法的な雇用契約ではなく、企業が従業員が帰属する社会的主体なったことにある。「海賊と呼ばれた男」でも読んでもらえば、その典型企業だが、「社員を守る」というのが一般的な発想だ。

割高な投信手数料も問題だよ。官主導で圧力かけるのは良いことだろう。だが、そんなもんは重箱の隅だ。

「正しい金融知識を持った顧客には売りづらい商品を作って一般顧客に売るビジネス、手数料獲得が優先され顧客の利益が軽視される結果、顧客の資産を増やすことができないビジネスは、そもそも社会的に続ける価値があるものですか?」
金融庁の森信親長官は4月7日の講演

と言うのならば、「父子の隠し合い」と「会社は家」を止めて、健全な資本市場の形成、弱者(弱社)は退場していただくのが自然な姿でしょう。民が投信を買うのは、「自分では判断できないからプロに任せよう」と思うからだが、「適当にブルーチップ(有名企業と言ってもいいだろう)を買って放っておけば、まぁ、儲かるでしょ」と思う俺の友人の例のような株式市場に絶対に信頼があれば、、アコギな投信など、手数料が割高過ぎるなんて言わなくても、大部分が自然に消えてなくなる。今の日本の時価総額トップ企業を見てみろ。「銀行やNTTで損した」と言っている個人投資家がどれだけいるんだ?それは証券会社やバイサイドの責任か?大蔵省主導で国民に損を押し付けてきたからだろう? 金融庁長官とやらに「この株で損した」なんて企業が時価総額トップにいること自体が「不健全な資本市場」だと思わないのかね?と問いたいよ。

健全な資本市場の形成のために、俺が上記に書いたことを実践することは、日本の歴史と日本人の「互いに尊重し助け合う」という国民性の否定となる。それを両立させる解決案は、俺ごときではとても思いつくものではなく、今現在、俺以外の誰も持ってないのが現状だと思う。それをどう解決していくか、俺はドル中立測度下で、ずっと見続けていこう。