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1999年4月、わたしはインターネット銘柄の株価水準について考えをまとめて、ウォールストリートジャーナル紙のコラム面に発表した。タイトルは『インターネット株は高すぎか? そのとおり』だ。当時のハイテクセクターはまさに沸騰状態で、セクターの時価総額がS&P500の全体の1/3に近づいていただけでなく、ナスダックの売買高が、史上初めて、ニューヨーク証券取引所を上回っていた。2000年3月、私はジャーナル紙にもう1本論文を寄稿した。タイトルは『大型ハイテク株はポンカス』だ。この論文で私は、シスコ、AOL、サン・マイクロシステムズ、JDSユニフェーズ、ノーテルといった銘柄を挙げ、今の株価水準が続くはずがなく、いずれ大きく下げると指摘した。
> 懐かしい銘柄ですね。ノキアは無いんだ…。
「買って永遠に持ち続ける」だけなのだから、長期的リターンの算出は簡単だと思えるだろう。だが実際にやって見ると簡単どころではなかった。個別銘柄のリターンについて、研究者や機関投資家が利用できるデータは一定の前提に基づいていて、そこには交付された株式やスピンオフされた子会社の株式は、すぐに売却し、売却代金を親会社に再投資することになっている。だがこの前提通りに行動しない投資家も大勢いる。1950年頃にAT&Tを買った、友人の父親がそうだった。私は半世紀を遡り、長期リターンを算出した。配当は再投資し、交付された株式もすべて保有することを前提としたリターンだ
成長の罠
成長の罠にはまった投資家は、革新をもたらし、経済成長を牽引する企業や業界に、過大な対価を支払う。ひたすら成長率を追い求め、話題の銘柄を買い漁り、胸躍る最新技術を探し回って、なるべく成長率の高い国へと資金を振り向ける。こうした投資アプローチは、低い投資収益率(リターン)しかもたらさない。それどころか長期的なデータを見る限り、過去に際立った運用成績を達成してきた銘柄は、斜陽業界や低成長国に属しているケースが多い
先端技術を導入することで莫大な経済成長がもたらされる一方で、なぜ投資家が大火傷を被るのか? 理由は単純だ。新たなテーマに熱狂して、話題の銘柄に手を伸ばす投資家は、そのたびに、過大な値段を支払わされる。やみくもに成長性を追い求めるあまり、変化が速く、競争が激しすぎる業界の銘柄を過大評価する。こうした業界で勝ち残るのはごく一握りにすぎず、この一握りにすぎず、この一握りでは、敗者の群れが残していった損失をとても穴埋めできない。
創造の過程から借り取る果実など無いと言っているのではない。新製品の技術や新技術を発明して、億万長者になった人はたくさんいる。だが、この成長の恩恵が流れ込む先は、個人投資家ではない。流れ込む先は発明者と創業者であり、開発資金を出したベンチャーキャピタルであり、株式公開を仕切った投資銀行であり、最終的には、より良い製品をより安く手に入れた消費者だ。個人投資家は、世界経済を牽引する輝かしい成長の分け前にあずかるつもりで、実際には損を引き受ける仕組みになっている。
> 個人投資家ではなく、機関投資家でも場で買えば同じわけだから、少数株主なり、一般株主とか表現すべきだね。そして、成長の恩恵を最大に受けているのは、投資銀行ではなく、消費者であることは間違いないだろう。
長期投資に最適の銘柄
1950年に戻って、オールド・エコノミー陣営のスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー(現在のエクソンモービル)とニュー・エコノミー陣営の巨人、IBM。その後半世紀、どちらのセクターが相手以上に成長するだろうか? ハイテク・セクターだろうか、エネルギー・セクターだろうか? さいわい、過去をざっと振り返れば、答えは簡単に出てくる。50年前と言えば、ハイテク企業の急成長がこれから始まるところだ。IBMのEPSの伸び率は、向こう50年にわたって、石油大手、スタンダード・オイルを年率3ポイント以上上回っている。情報技術が進歩し、コンピューターが経済で果たす役割が格段に広がった結果、ハイテク業界が市場で占める比率は、50年前の3%から18%近くに拡大した。1950年、石油セクターは米国株の走時価総額の約20%を占めていた。2000年、この比率は5%を割り込んでいる。しかも原発推進派の予想に反して、原子力が電源の主役になることは無く、化石燃料が引き続き主流を占める中で、ここまで縮小している。だが、石油会社に投資した1000ドルは、126万ドルに増えている。IBMに投資した100ドルは、96万1000ドルだ。スタンダード・オイルのそれを24%下回る。
【投資方針】
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