「日経225先物取引」の廃止
大阪証券取引所における「日経225先物取引」は、投機マネーとして、現下の株乱高下の一因となって
おり、早急に廃止する。
がネット上で波紋を呼んでいる。
>CMEに流れるだけ。
とか書いてあることが多いが、Volumeと取引時間から考えたらSGX(SIMEX)に流れるのが妥当である。
CMEは日本の先物の10分の1程度。SGXは半分程度の売買代金となる。
先物の売買代金とは変な言葉であるがここではIndex × Volume × Contract Sizeで定義する。
CMEの日経先物は、ドル建てと円建ての2通りある
ドル建ては正確に言うとQuanto Futureなので、通常のFutureやComposite Futureとも異なる
F:通常のFuture
 Index × Contract Size をJPYでセトル
Fq:Quanto Future
 Index × Contract Size をUSDでセトル
Fc:Composite Future
 Index × Contract Size × JPYUSD(為替レート) をUSDでセトル
これらの理論値の関係は、F=Fcとなる。
Compositeは単に取引通貨が異なるだけで経済効果は全く同じである。
ただし、通貨規制がある国のIndexで、国外上場(Off-Shore上場)Compositeの場合、同一通貨で
On-ShoreとOff-Shoreの2つの金利が存在するので、となる。
昨今の金融危機の状態では、エマの話とは限らず、通貨規制が無い国であっても、Basis SWAPなどに
大きな乖離がある場合、貴君らにとっても、この話は他人事ではすまない
ことを意識してよいだろう。
一方、CMEのQuantoはという関係になり、全く違うものを指す。
さて、話が大分それたので元に戻す。Volumeから考えて、代替候補筆頭はSGXが妥当である。
SGX日経先物は、日経先物よりも日経ミニ先物と近いと言えるだろう。
まず、ミニとSGXは売買代金はほぼ同じ。ただし、Contract Sizeの違いで枚数は異なる。
Contract Sizeが日経先物1000、日経ミニ100に対して、SGX日経先物は500となる。
刻み幅も5円刻みで同じ。
取引時間が若干異なり、SGXは寄り前15分、東京時間8:45から、引け後30分まで
そしてEvening Sessionの終わりも23:55までと長いのが特徴である。
滅多に意識することは無いが、制限値幅が違う
また、日本祝日の場合、大証は休みだが、SGXのEvening Sessionは翌日取引扱いなので取引ができる
>乱高下の一因
という亀井原案の否定もしておいた方が良いだろう。
無理解・局所的な偏見から、悪者にされがちな先物と空売りであるが、これらが”乱高下”を防ぐ役割がある
のは先物と空売りが無い市場を見るとよくわかる。
株を買いたい人は、金さえあれば買える。株を売りたい人は、株が無いと売れないのである。
必ず、買いから入らざるを得ず、一度買ったものでないと売れないということになる。
この「株が無いと売れない」という状況は不当に高い値段を引き起こしやすい
例えば、ライブドア事件をきっかけに改正されたが、株式分割の際の新株調達までの時間に株価が不当に
上がるなどという現象が一番わかりやすいだろう。株価が不当なまでにつりあがればあがるほど、新株
調達ともに悲惨なまでに下落することは皆さんご存知の通りである。
これと全く同じ構造でOption(売買対称)とWarrant(証券有りなのでIssuer以外は売りができない)
の価格差にも表れており、WarrantはListed WarrantであってもOptionよりも高いことが多い。
最後は、中国A株の動きを見ながら、先物の”社会的意義”を見てみようと思う。
SHCOMP(中国A株、先物無し)
HSCEI(香港H株、先物有り)
shcompvshscei.gif
HSCEIは、銘柄数が少なく、金融セクターのウエイトが50%を超えることもあるので、確かにVolatility
が高く乱高下しているかのように見える。
しかし、このRatio=SHCOMP/HSCEIの推移を見ると、相場上昇時に、A株が必要以上に上がり、
下降時の下落も大きいことを、このRatioの0.4232から0.1925への下落が示している。
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