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「日本のいわゆる政党なるものは私利私欲のために集まった徒党である。主義もなければ理想も無い。外国の政党には歴史がある。人に政党の主義があり、家に政党の歴史がある。祖先はその主義のために血を流し、家はその政党のために浮沈した。日本にはそんな人間もそんな家もそんな歴史もない。日本の政党は、憲法政治の迷走から出来上がった一種のフィクション(虚構)である)」
藩閥論
「藩閥はすでにシャドウ(影)である。実体が無い」
ついでながら小村は日向飫肥藩の出身で薩長人ではない。
「ところがフィクションである政党とシャドウである藩閥とがつかみあいのけんかをつづけているのが日本の政界の現実であり、虚構と影のあらそいだけに日本の運命をどう転ばせてしまうかわからない。将来、日本はこの空ろな2つのあらそいのためにとんでもない淵におちこむだろう」
小村は、藩閥と党閥が国家を滅ぼすということをつねに言った。それだけではない。
自分は国家だけに属している。いかなる派閥にも属しない」という立場をつねに明言しつづけた。


17世紀後半のころ、北米の大原野で互いに領土と利権を争っていたのは、英と仏であった。かれら白人はともに、原住民であるアメリカ・インディアンを敵としたが、しかしじかには争わない。インディアンが多数の種族に分かれてたがいに抗争している点を白人たちは研究し、かれらの一方に利を与えて他の一方と戦わせた。かれらは銃器と強い酒をよろこんだために白人たちは惜しみなくそれをあたえた。「インディアンには理性的判断力というものがきわめて薄く、それにひきかえ感情が豊かで部族愛が強く敵を憎む力が盛んであり、名誉心に富み、かつ戦いを好み、いったん戦いを始めれば互いに滅びるまで戦いを止めない。英も仏も、この習性を利用した。かれらにとめどなく銃と酒を与えた。特に英人は巧妙で、かれらはインディアンの中でもイロコワ族がもっとも勇敢で侠気に富んでいることを知り、これに利をくらわせて自分と同盟させ、この種族の力をかりて北方では仏軍の南下を防ぎ、さらには西部のインディアンを平らげさせた。かれらインディアンはこのようにたがいに抗争して殺しあったため、17世紀後半に北米にいた180万のこの有色人種が、2世紀経ったいまでは煙のように消えてしまった。自滅したのです。これが英国の伝統的なやり方です。ひるがえって東アジアを見るに、シナをめぐって英国の既得利権・利益を、いまロシアとフランスが侵そうとしている。英国としてはぜひ東アジアにイロコワ族をみつけたい。-それが」
「日本でしょう」
「左様、日本です。英国は日本をイロコワ族として使おうと考えている。いまかれらは真剣に研究中です。ところでわれわれはながい国運という観点から見て、ここは一番、東洋のイロコワにならざるをえぬ時機がきています。相手のこんたんを知りぬいたうえでここは一番、イロコワにならざるをえない」
このとき小村は後の日英同盟の構想を暗に語っていたのだろう。
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