倉都さん好きなんで、これも金融機関にお勤めの方には、推薦図書です。前に読んだ「国家と金融」が面白かったのでまた買ってみました。
金融力とは何か
「経済力」は一般的に用いられる用語であるが、金融力という言葉はあまり用いられない。経済と金融とは明らかに異なる分野(密接な関係にあるが)であって経済力という概念があるのなら金融力という捉え方もできるはずだ。たとえば、日本には経済力はあるが金融力は乏しい、ということができそうだ。一方、現代の米国は、経済力も金融力も世界一だといえば、誰もが納得するだろう。
 金融力とは、保有資産の金額で決まるものではない。国債の発行高や株式の時価総額といった規模で測れるものでもない。もちろん基軸通貨であるかないかは大きな要因であるが、基軸通貨ではないユーロの金融力は徐々にではあるものの、着実に強化されているとみることができる。現代世界の金融力とは、金融政策への信頼性、民間金融機関の経営力の強さ、市場構造の効率性、金融理論の浸透度、新技術や新商品の開発力、会計や税制などのインフラの強さ、お金の運用力、金融情報提供・分析力など、さまざまに組み合わされる構成要素が、総合的な目で評価されるものだと考えることができる。
倉都先生、金融力の定量的な規定は難しいとお考えですか? 上記のものが一つの数値になって現れることを私はよく知っていますよ。
株式の流動性です。つまり、売買代金を見てください。国家の総和が金融力の定量化現象です。いかがですか?
英国の通貨単位であるポンドは、正式にはポンド・スターリング(Pound Sterling)と呼ばれ、スターリングとは純銀のことであって、ポンドの語源は古代ローマの重さの表示である。直訳すれば純銀の重さとなる。金融の世界はポンドを£という記号で表示することが多いが、それはラテン語でpoundを表す”libra”の頭文字であるLを象ったものである。これが英国通貨の単位になったのは古代ローマで1ポンドの重量の銀から240個の銀貨を作った故事に由来するといわれている。
銀貨の歴史は相当に古く、メソポタミアやエジプトの時代にまで遡る必要があるからだ。紀元前30世紀頃には銀の価値は、金より大きく上回っていたとされる。金が砂金などの状態で存在するのに対して、銀は鉱石の中から取り出す必要があり、精錬法がない時代には銀の価値が高かったのである。それが次第に逆転していくのは精錬法の発達に加えて銀鉱山の発見などによって産出量が増加したことが背景にある。銀を銀貨として利用頻度を高めたのはローマ帝国であり、そこでは金貨や銀貨、青銅貨が鋳造された。だが10世紀前後には商取引の活性化で少額貨幣への需要が高まり、銀貨の中でもとくにペニー銀貨と呼ばれるコインの流通が普及する。
銀はアジアから胡椒や絹、綿製品などを輸入する欧州諸国にとっては決定的に重要な存在になった。大規模な交易が始まった15世紀以降、欧州はその見返りに東方へ輸出するものがあまりなかったからである。こうして銀の採掘や精錬が急ピッチで進められる中で、銀の取り扱いに目をつけたのが、南ドイツのフッガー家であった。これはユダヤ系商人が国際金融の場で活躍することになる初期の例である。フッガー家は銀取引で莫大な利益を上げ、地方の諸侯だけでなくローマ帝国の皇帝やローマ教皇にも融資を行うといった金融業を開始する。当時、ローマ教皇は自身の資金調達のために免罪符を販売したことは有名だが、それはフッガー家からの借り入れの返済に充てられたという。またローマ皇帝の選挙の際に、選挙民を買収する資金としてフッガー家から借り入れをしたという記録もある。マルティン・ルターが行う宗教改革の裏側には、こうした銀を取り巻く金融ビジネスがあった。
だが世界の貿易決済の硬貨として君臨したその銀も、17世紀後半から徐々に通貨として金とのバランスが崩れ始める。当時の欧州諸国での通貨体制は、金と銀が並存する金銀複本位制となっており、政府はその比率をどう調整するかは常に頭の痛い問題であった。中世を通じては1:12で安定したといわれる金と銀の価値比率が、銀の大量産出による価格革命によって大きく揺らぎ始めたことへの対応は、かなり難しい課題であった。当時は銀貨が中心的な存在であったため、銀の価値が下落することが問題であった。英国は1ポンド金貨の価値を下げて銀貨を安定化させるために、あの万有引力の発見者であるニュートンの知恵を借りることとなった。ニュートンは類稀なる数学者として、また最後の魔術師(ケインズ)と呼ばれた錬金術師としても有名であるが、英国の造幣局長官としての顔をもっている
マジかよ・・・、ニュートンも株で損したみたいな逸話は知っていたが・・・
ニュートンは1717年にギニー金貨の交換比率を21枚の銀貨とすべしと切り下げを提案した。この平価は1931年に英国が金本位制を離脱するまで200年以上にわたって続くことになった。これを金と銀の比率に直すと1:15.21となる。

【金と金融の意義】
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